異世界編6
数日間魔法の練習をし、全員が中級魔法は使えるようになった。
一部の生徒は上級魔法も使える。
最初は典都以外の皆が集の心配をしていたが、スティアが、保護されたと繰り返したことにより、落ち着きを取り戻した。
「では、ダンジョンに行ってみますか?」
「行ってみます!」
皆熱心だ。
このままいけば、いずれ魔王を倒せるかもしれない。
スティアは拳を握りしめた。
向かったのは、教会の近くのダンジョンだ。
王女であるスティアも一緒に入る。
騎士達は猛烈に反対したが、スティアが強引に押しきった。
勇者達の訓練なので、騎士達の同行も拒否。
その代わり、第3階層までと言う約束を結ばされた。
難易度は高くないので、万が一の事もないだろう。
第1階層はゴブリンとオークしか出てこなかったので、遠距離魔法だけで余裕で殲滅した。
第2階層は、キメラアントの群れとハイオークに囲まれて少し危なかった。
ここで活躍したのは御鏡 麗子と夕立 白亜だ。
2人とも既に上級魔法まで使えるようになっていた。
「《火蛇の炎剣》」
第4階梯―上級魔法《火蛇の炎剣》。
白亜の左手に、炎の剣が顕現する。
右手には常備サイズの《ドラゴンスレイヤー》。
疾風のように駆け抜け、2つの剣を振るう。
《ドラゴンスレイヤー》はキメラアントを粉砕し、その粉砕されたキメラアントは後ろを巻き込んで吹き飛ぶ。
《火蛇の炎剣》は刀身が伸び、蛇の形になる。
蛇は自我があるかのようにキメラアントやオーク達を焼き尽くしていく。
「《光の聖翼》」
麗子は光属性の第4階梯―上級魔法を唱えた。
美しい光の翼が生える。
特に効果はない。
上級魔法のくせに、ただ美しいだけの魔法。
なぜ麗子がこんな魔法を選んだかと言うと、こちらを見ている存在にアピールする為である。
その存在、青い蝶の姿をした精霊は、ふらふらと麗子の手のひらに舞い降りた。
手のひらが青く照らされる。
麗子は頷く。
蝶が舞い上がり、麗子が手を裏返すと、蝶はその手の甲に舞い降りた。
手の甲に、青く美しい幾何学模様が浮かび上がる。
「名前を教えてもらってください」
スティアが言う。
麗子の脳内に、ある単語が浮かび上がる。
「パール……あなたの名前はパール」
幾何学模様が消えた。
契約は完了した。
マナが少しずつ吸いとられているのが分かる。
魔法がなんでも使える気がする。
至福の万能感が麗子を満たす。
とある魔法の情報が流れ込む。
属性は光――第5階梯―王級魔法――
「《白天使》!」
白く輝く人型の何かが顕現する。
《光の聖翼》と同じような美しい翼を生やしている。
目も鼻も口も耳もない。
頭の上には光の輪が浮かんでおり、まるで天使だ。
右手には光の槍を持っている。
天使は空中を縦横無尽に飛び回り、キメラアントやオークを串刺しにしていく。
2人の活躍で、周りのモンスターは1匹残らず殲滅出来た。
次の階層は、ビックアイがうようよいる、最も恐ろしい階層だ。
ビックアイは魔法耐性が高いので、1人を犠牲にして《業》を何度も受けさせながら、剣で倒してもらった。
お詫びにスティアが抱擁をしたら、鼻血を出して倒れた。
ゴーレムは非常に硬いが、白亜の《ドラゴンスレイヤー》で容易に撃破出来た。
ゴーレムを倒したあと、角の生えた兎が3匹と、真っ黒で血管が浮き出て脈動している兎が1匹現れた。
「《種族名鑑定》」
それぞれのモンスターの上に文字が見える。
「ホーンラビットと、……跳血ブラッディラビット?跳血って何?」
「ああ、それぞれの種族の最上位種には、漢字で二つ名がつくんです。あ、ドラゴン種は例外です」
「じゃあ、ブラッディラビットってめっちゃ強いってこと?」
「ラビット種自体があまり強くないですし、ラビット種はあの2種しかいませんから、あまり強くないですよ」
「1種類しかいないモンスターは?」
「二つ名はつきませんよ」
「そうなんだー」
「何呑気に駄弁ってんだよ!来てる来てる!」
「ポーション頂戴、さっきキメラアントにやられて怪我しちゃった」
「私、光魔法使えるから治すわよ」
「ありがとう」
「だから何呑気に……くそっ《火炎爪》」
「《眷獣召喚》キメラアント!」
「《眷獣召喚》オーク!」
「《爆発球》!」
なんやかんやで4匹とも倒した。
あまり強くはなかった。
「《眷獣召喚》て、どんなモンスターを呼べるの?」
「倒したモンスターの中から、『眷獣にしてください』ていう思念が伝わってくるのがいるの。それで、『良いよ!』って思ったら、そのモンスターが光になって消えるの。そしたら呼べるよ」
ぞろぞろと歩く。
「自我とかあるの?」
「あるわよ。ただ、私に絶対服従してるみたいね。消えろって言ったら消えるし」
「食糧とかいらないし便利よねー」
「うんうん」
「傷付いて、消すじゃん?そしたら次に召喚したらどうなるの?」
「分かんない」
「そのままですよ」
「じゃあ死んだらどうなるの?」
「え、どうなんだろ?」
「消すときと同じように光になって消えて、次からは召喚出来なくなります」
「あ、なんか扉あるよ」
「入ろうぜ!ボスとかいそう」
「はい。いますよ」
「何がいるの?」
「分かりません」
ぎぎーっと扉を開ける。
中には、ゴリラがいた。
「………ゴリラ?」
「ゴリラではありませんよ。バーサーコングと言うモンスターです」
バーサーコングが弾丸のように跳んできた。
「《氷壁》」
進行方向上の男子が目の前に氷の壁を造るが、それをぶち破って跳んできた。
隣の男子が押し倒し、バーサーコングは上を通過した。
「思ったけど、動物とモンスターの違いってなんなの?」
「魔石があるかどうかです。あと、動物は《種族名鑑定》が効きません」
「そうなんだー」
「今そんな話してる場合じゃねー!!」
バーサーコングは、壁に激突して動きを止めている。
そこに皆で遠距離魔法を撃ちまくる。
バーサーコングは上に大きく跳んで避ける。
「《白天使》」
麗子の具現化した天使に叩き落とされた。
そこに再び皆に遠距離が撃ち込まれる。
煙が晴れると、バーサーコングだった丸焦げの何かがあった。
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ギルドに加入して数日後、集は森で迷っていた。
依頼を受けて来たが、クリスタルドラゴンの発見と言う依頼は達成出来そうにない。
この森で目撃情報があり、依頼は出たが、誰も受けてくれなかったらしい。
そこで、何も知らない新人の集にまわってきて、何も知らない集はOKした。
同じところをぐるぐるまわっている気がする。
ゴブリンが出たので、『飛斬』で斬った。
そこに、悲鳴が聞こえてくる。
悲鳴はどんどん近づいてくる。
集の横を若い男が通過した。
「あの」
肩をがっちり掴み、問い掛ける。
「何があったんですか?」
「クリス、タル、ドラゴン、だよ、はあ、はあ」
そう言って男は走って逃げていく。
集は男の来た方向に向かう。
しばらく歩くと、湖に出た。
そこにきらきらと太陽の光を反射する白い島があった。
島が動き、向きを変える。
集の前に、白いドラゴンの顔が現れた。
これがクリスタルドラゴンなのだろう。
クリスタルドラゴンが口を開き、そこから白い炎が集に迫る。
咄嗟にイデアで防ぐ。
イデア切れの時のトラウマがあるにも関わらず、咄嗟に出るのはイデアならしい。
イデアが白い炎を防ぎ続ける。
すると、白い炎が白銀に染まった。
――まずい
集の何かが警鐘を鳴らす。
クリスタルドラゴンの銀色の瞳が蒼く光だす。
――まずいまずいまずいまずい
イデアを解放し逆方向へ逃げるが、白い何かにぶつかった。
上を見なくても分かる。
クリスタルドラゴンだ。
イデア切れのトラウマを吹っ切ってイデアを覚醒させ、止まった世界でクリスタルドラゴンから逃げるが、イデアの覚醒はあまり長くは出来ない。
後ろを見ながら逃げるので、木が邪魔な地上よりも、何もない空を逃走に選ぶ。
クリスタルドラゴンはいつまでも追いかけてくる。
数分逃げ、そろそろイデアの残りがやばいので、解放状態に戻す。
すると突然視界が真っ暗になった。
手を下につくと、ぬめっとしたなにかがまとわりつく。
どうやらクリスタルドラゴンの口の中らしい。
徐々に口の中が明るく照らされる。
喉の奥の方から、白い炎が迫ってくる。
集は急いで【八岐大蛇】で舌諸とも、下顎に大きな穴を開けて脱出した。
刹那、クリスタルドラゴンの口から白い炎の奔流が放たれた。
危なかった。
集が開けた下顎の穴は、イデアらしき白銀の炎が集まり、再生していく。
クリスタルドラゴンの眼は、蒼ではなく緋色に光っている。
集は森の中に、洞窟の入り口を見つけたので、そこに逃げ込んだ。
その洞窟は、ダンジョンだった。
壁が薄く光っている。
入り口に人がいないのは何故だろうか?
狭い入り口なので、クリスタルドラゴンは諦めてどこかへ飛んでいった。
折角なので、ダンジョンに潜ってみることにした。
てくてくとしばらく進むと、オーガが出てきた。
教会近くのダンジョンの第5階層辺りに出てきたモンスターだ。
何か吼えようとしていたが、その前に【八岐大蛇】で喰った。
勿体ないので、イデアは出していない。
もうしばらく進むと、オーガが8匹出てきた。
【八岐大蛇】で喰った。
流石【八岐大蛇】、中距離だと無敵だ。
少し進むと、地面に大きな穴が空いていた。
かなり深いので、途中で真っ暗になって底まで見えない。
覗き込んでいると、後ろからオーガ……ではない、大きな鬼が現れた。
アイリとダンジョンに入ったときに見た、オーガジェネラルよりも明らかに強い。
丁度良いので、何か吼え出した所を、イデアで後ろにまわって《天叢雲》で脚を切り落とし、魔力とイデアを込めた蹴りで吹き飛ばして穴に落とした。
「GAAAAAAAAaaaaaaaaaaa!!!!!!!!!」
声は大分響いて、消えていった。
相当深い。
穴に飛び込む。
イデアで飛ぶことも出来るので、ゆっくりと宙を降りていく。
下がよく見えないので、魔力の光で淡く青色に照らす。
しばらくして、地に足が着いた。
そこには、ワイバーンが20匹程と、赤い竜が3匹、その奥にクリスタルドラゴンと同格であろう青い竜がいた。
更にその奥には、黄金の剣が地面に突き刺さっている。
青い竜―サファイアドラゴンがゆっくりと目を開き、集を見据える。
そして興味無さそうに再び目を閉じる。
ワイバーンが集を取り囲み、我先にと涎を撒き散らしながら集に群がる。
集の左目が蒼く輝き、ワイバーンの全ての頭部が消滅した。
白銀の炎を纏い、背中から半透明の8匹の蛇を生やしながら、集は薄く笑う。
赤い竜―レッドドラゴンは戦慄した。
否、しようとしたが、その瞬間には頭と首が分かたれていた。
白銀の軌跡を残し、集はサファイアドラゴンの前に姿を現す。
サファイアドラゴンは、青い光のベールを纏い、先程とはうって変わって集を翼を広げて威嚇している。
集の左目は緋色に輝いている。
恐らく今の集とサファイアドラゴンは、同じ時間感覚だろう。
そろそろイデアが切れるが、解除すれば途端に喰われる。
集がサファイアドラゴンへ駆けるが、そこに蒼炎の奔流が迫る。
先程のクリスタルドラゴンとの一戦から、これをイデアで防ぐのはリスクが高い。
だが、このままでは避けるのも無理だ。
仕方がない。
―――イデア―――覚醒
世界が止まる。
イデアが尽きるまでにサファイアドラゴンを倒さなければ、集が死ぬ。
覚醒すれば、イデアが一瞬で尽きることは分かっている。
だがその一瞬で決着を着ける。
集は、灰色の世界を走る。
ナメクジの如く鈍く動いているサファイアドラゴンが【八岐大蛇】の射程圏内に入ると、集はその首のつけ根を【八岐大蛇】で喰った。
同時にイデアが尽きた。
サファイアドラゴンの体が、首から上と首から下で時間差をおいて地に落ちる。
これで、しばらくイデアと魔力は使えない。
集は、残った黄金に輝く剣に近付く。
落ちてきた時から、凄い存在感だった。
――ドクン
集の中の何かが過剰に反応する。
ゆっくりと近付き、その黄金の柄を握る。
『所有者申請――申請者――サファイアドラゴン――拒否中――所有者申請――拒否中――新規所有者申請――申請者――人間――個体名――無神 集――承認――接続――接続――接続完了』
《スカルイクス》や《天叢雲》と同じように、頭の中に機械音声が流れる。
『分類――聖剣――名称――ルシルセイバー』
ポーン
『スカルイクス・天叢雲・ルシルセイバーの同時所有を確認――融合開始――融合中――』
突然、《ルシルセイバー》に黄金の光が渦巻きだし、更にそこに《スカルイクス》と《天叢雲》が顕現する。
そして、光の渦は直視出来ないほど輝きを増す。
空間が震え出す。
光の渦は、太い太い光の柱になり、集の網膜が焼き切れる。
『――修復開始――』
焼き切れた網膜は再生した。
空間が軋むような音が鳴り響く。
世界が悲鳴をあげている。
『――融合完了――』
光の柱は小さくなり、光の渦になる。
純白の光の渦の中に、時々黄金の光や、漆黒の闇、更に緋色の光が混ざっている。
『分類――聖剣――名称――エクスカリバー』
聖剣 《エクスカリバー》は、地面から抜けて宙を浮いて移動し、集の前で止まった。
そして告げる。
『全属性マナ委譲――マナ量――30那由多――魔法破壊――off』




