異世界編5
ゴブリンが現れるが、無視。
――この先に、何かいる。
走っていると、集はふとイデア切れの反動が無くなったのを感じた。
体の奥から力が沸く。
全身がむずむずする。
「《小凍》」
何も起こらない。
マナが少ないのもイデア切れの影響かとうすうす期待していたが、魔法に関しては本当に才能がなかったらしい。
木が無くなり、視界が拓ける。
そこには、灰色の竜がいた。
灰色の竜―ワイバーンは、餌―集を睥睨する。
ワイバーンは獲物を捕らえる為、上体を起こす。
そして脚に力をこめ、――脚が切り刻まれる。
訳も分からないまま尾が輪切りにされる。
痛みを感じる暇もなく、翼が引きちぎられる。
ワイバーンがそれを認識するよりも早く、長い首が輪切りにされ、頭が黒い刀に串刺しにされた。
白銀の炎を纏ったまま、集はぽりぽりと頬を掻いた。
∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈
「………はあ?!」
「ど、どうされました姫様?!」
スティアは今自分が何を見たのか分からなかった。
途中までは、ちゃんと集の姿をとらえていた。
上空から集の姿を見つけ、《千里眼》の視点を接近させ、ちゃんと集の走る速度に合わせて視点は動いていた。
しかし、木が生えていない場所に出て、集の奥にワイバーンの姿が見えると、集の姿が忽然と消えた。
全く分からなかった。
スティアは集が死ぬとおおいに焦っていたが、あれよあれよと言う間にワイバーンは無惨な死体に成り果てた。
集が突然姿を現す。
何故ワイバーンが死んだのかスティアには分からない。
集が何かをしたのかさえ分からない。
白銀の何かが渦巻いているように見えたが、気のせいだろう。
欠伸をし、集はスティア達の方ではなく、更に奥へ進んでいく。
どうやら戻って来るつもりはないらしい。
スティアは《千里眼》を解除した。
何が起こったのかを推測する。
スティアの認識では、集は魔法と魔力は使えない。
つまり、ワイバーンには手も足もでない。
答えは1つ。
何者かが集を救ったのだ。
そうに違いない。
「戻って来る気はなさそうです」
「はははは!怖じ気づきやがったあいつ!はははは!」
「しょうがないじゃない。無神君マナ量100しかないんだし」
「無神君は安全なんですか?!」
「はい………えっと………たまたま通りがかった冒険者に保護されました」
「ほっ……そうですか」
「姫様!!ワイバーンが出ました!」
ドガァァァンッ!
「不味いわ!もうマナが足りません!」
「ガアァァォァ!!」
ワイバーンの咆哮に、殆どの生徒が立ち竦み、股間を湿らせている者もいるが、白亜は勇敢に立ち向かった。
「私がやるわ!どうせ魔王はこいつよりも強いんでしょ!」
「では我々はサポートにまわります」
「すごいわ……夕立さん……」
白亜が剣を構えると、《ドラゴンスレイヤー》は巨大化し、両手持ちの大剣になった。
「《上位加護》」
「ありがとう。魔法師さん」
ワイバーンが迫る。
「《身体超化》」
第4階梯―上級魔法に、第3階梯―中級魔法、更に《ドラゴンスレイヤー》による身体強化をうけ、白亜は風のように駆け出した。
しかし、横から何かに吹き飛ばされる。
ワイバーンは尾を戻しざまに他の騎士達も吹き飛ばそうとするが、騎士達はそれを避けた。
「こっちだ!《雷鞭》」
魔法師の1人が電気でびりびりいっている鞭でワイバーンを叩く。
「グアァァァ!!」
「《癒しの緑光》」
他の人達がワイバーンを引き付けている間、魔法師の1人が白亜に回復魔法をかける。
激闘の音が聞こえる。
見ると、確かにあの凶悪な竜が傷ついている。
倒すことは、出来る!
その時、白亜の頭に新しい魔法が浮かび上がった。
「《浮遊飛行》!」
宙に浮くのではなく、自由に飛ぶ。
そのままワイバーンの真上に行く。
気付かれてはいけない。
騎士達が果敢に斬りかかり、後ろから魔法師達が魔法を撃っている。
ワイバーンは白亜に気付いていない。
白亜がタイミングを伺っていると、騎士達がぱっと離れ、魔法が止んだ。
――今だ!
「はあぁぁぁ!!」
白亜は落下と共に《ドラゴンスレイヤー》を叩きつけ、ワイバーンの首を切り落とした。
「うおぉぉぉ!!すげぇぇぇ!!」
「かっけー!!」
「すごいわ!!夕立さん!!」
魔法師達、スティア、騎士達、生徒達、皆が歓喜した。
∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈∈
集は遠くに悲鳴を聞いた。
イデアを解放し、駆けつける。
剣を持った女性が血だまりに倒れている。
死んでいる。
他に3人剣を持った男性が死んでいる。
「助けてくれ!なんでもやるから!」
最後の生き残り、40代程の男性が助けを求めてきた。
「何があった?」
「ハイオーガだ!」
「ハイオーガ?」
「ほら!また来た!」
木々を薙ぎ倒し、ハイオーガが現れる。
醜いが、狂獣程ではない。
「ガ―――」
ハイオーガの首が落ちる。
「大丈夫?」
「え、な、何が……?」
「何でもくれるんだよね?」
「あ、あんたが何か――」
「くれるんだよね?」
「あ、ああ」
「じゃあお金頂戴」
「い、いくらでも持っていってくれ」
「今あるお金全部」
「分かった」
「ん。ありがとう」
「その服、貴族の方か?」
「違うよ。あと、街まで連れてって」
「分かった」
帰り方も分からないし、折角だから冒険してみることにした。
男性についていき、街に出た。
文明レベルは低い。
中世ヨーロッパと同じ程度だろうか。
「街には着いたけど、どうする?」
「取り敢えず職業が欲しい」
「何したのか分からんかったけど、兄ちゃんがハイオーガ倒したんだろ?なら冒険者をお薦めする」
「冒険者?」
「ああ、あそこの冒険者ギルドで登録出来るぞ」
「ありがとう。じゃあもういいよ」
「分かった。助けてくれてありがとうな」
集は言われた通り、冒険者ギルドと書いてある建物に行く。
中に入ると、筋肉隆々の男達がいた。
女性も少数だがいる。
皆入ってきた集を蔑んだ目で見る。
「貴族の坊っちゃまかあ?」
「貴族ではないです」
「嘘つくなよ。ばればれなんだよ」
「いや、本当に貴族では――」
「お前みたいななよなよな奴は騎士学校行ってろっつうの」
「騎士学校?」
「そうだそうだ!騎士学校を卒業してもないやつが、冒険者ギルドなんて来るんじゃねえよ」
「ありがとう。やめておくよ」
「ああ?!」
「冒険者に登録したいんですけど」
「え?は、はい」
「聞いてんのか?!」
がしっと肩を掴まれる。
「聞いているよ。少し待ってね。これに記入すればいいんですか?」
「は、はい」
若い受付嬢はぎこちなく答える。
「無視すんなよこらぁ」
「無視してないよ。少し待ってね」
一切男に視線を向けず、すらすらと紙に書いていく。
「どうせ貴族のお遊びなんだろ?なあ」
「違うよ。名前はカタカナか」
「そんな綺麗な身成して、俺らに見せつけてんだろ?」
制服は綺麗な身成らしい。
「違うよ。住所とかいらないんだ。まあラッキーかな」
「こっち向けよ!」
「嫌だよ。出来ました」
「は、はい」
受付嬢は紙を読んでいき、判子を押した。
「これで登録完了ですか?」
「はい。えっと、依頼内容はあそこの掲示板に貼ってあるので、選んだものをここへ持ってきてください。それと、依頼が達成出来なかった場合は、違約金を払って頂きます。あと、魔石は大きさによって違う値段で買い取ります。」
「魔石って何ですか?」
「え?魔石ですか?魔石はモンスターの心臓近くにある、マナを溜め込んだ石です」
「色は?」
「赤です」
「分かった。他には?」
「えっと、これがギルドカードです。現在はランクFなので茶色ですが、ランクが上がると色が変わっていくので――」
「それをどうすればいいの?」
「依頼を受けるときにこちらに渡してください。依頼達成したらお返しします。依頼を受けるときには、変わりにその依頼カードを渡しますので、達成したら返してください」
「分かった 」
「えっと、登録料、1万メユです」
「これで足りる?」
「はい。その半分で足ります」
「はいよっと」
「えっと、以上です」
「待っててやったぜ坊っちゃまよう!」
「そう、ありがとう」
向き直る。
「で、何か用?」
「表でろや!」
「表?ついていけばいいのかな?」
「そうだ!先輩が直々に教えてやるよ!」
「おお!あれは、中堅パーティー、ガリガルナの副リーダー、ダンだ!」
「あの子、可哀想じゃない?」
男―ダンは集を連れて外へ出る。
ギルドの裏の開けた場所で、ダンと集は対峙する。
「ここら辺でモンスターがよく出るところってどこ?」
「あ?んなんダンジョンに決まってんだろ」
「それはどこ?」
「ちけーのはあそこの教会の近くのダンジョンだ。じゃなくて!これからお前に――」
「ああ、ありがとう。じゃあ行ってくるよ」
集は笑顔で歩いていく。
「ははぁ、お前、逃げるんだな?」
貴族はプライドが高いので、大抵これで逃げられない。
「逃げる?何から?」
「俺からだよ」
ダンはニヤァっと笑う。
「?……よく分からないけど、じゃあね」
あいにく集には通じなかった。
ダンはその後もしつこく集に絡むが、集が教会近くのダンジョンに剣1本で行くことを説明すると、嘲るような笑みと共に、絡むことを止めた。
ダンジョンの入り口には大きな男が2人立っていた。
入るときに何か言われるかと思ったが、特に何も言われずに集は中に入れた。
こつんこつんと集の足音が響く。
少し歩くと、壁自体が光っているようになってきた。
地面はあまりごつごつしていない岩のようだ。
ゴブリンが1匹現れた。
【八岐大蛇】で喰った。
「あーしまった。魔石取らなきゃいけなかった」
喰ってしまったものは仕方がない。
先へ進む。
一応、魔力を解放しておく。
イデアはイデア切れのトラウマから使うのが躊躇われた。
そう言えば、スティアは魔力を勇者のオーラと呼び、勇者が使うものと言っていた。
ならば、人には見せない方がいいだろう。
勇者だと騒ぎ立てられるのが、集は嫌いだ。
イデアのような未知の力も目立つから見せない方がいいだろう。
広くなってきた。
少し進むと、草が生えた空間に出た。
広い。
天井からの光が強く、明るい。
なにやら豚のようなモンスターがいたので、『飛斬』で半ばまで切り裂いた。
貫通させて真っ二つにすることは出来なかったが、殺すだけならこれで事足りる。
剣で心臓の辺りをいじくり、魔石を探す。
結構グロテスクなので、集は顔をしかめながら作業を続ける。
見つけた。
魔石を取りだし、辺りの草で血を拭く。
ピンポン玉と同じ位の赤い玉だ。
ブレザーのポケットに入れる。
人間っぽい足音が聞こえてきたので、魔力を解除する。
「あら?先客?」
現れたのは少女だった。
長い茶髪をポニーテールにしている。
目がきつめの美少女だ。
年は集と同じ程度だろう。
「そんな服でダンジョンに来たの?汚れるわよ?」
「あー、ミスった」
少女は安そうな長袖の服で、その上からビキニアーマーを着けている。
「後ろ、オークよ」
振り向くと、先程の豚のようなモンスターがいた。
今度は棍棒を持っている。
オークと言うらしい。
「いかないの?」
「怖いから、助けてくれない?」
「はい?」
オークが迫ってくる。
緑色の巨体が揺れる。
「ブフゥ」
集に棍棒を降り下ろす。
集は横に少し飛んでぎりぎりで躱した。
びゅんっと風切り音をたてて棍棒が降り下ろされる。
当たったら頭は潰れるだろう。
オークは躱された棍棒を横凪ぎに振るう。
集はそれを上体をそらして躱した。
「今襲われてるんだけど、助けてくれない?」
「めっちゃ余裕そうなんだけど、まあいいわ、《炎剣》」
後ろから少女が炎の剣でオークを斬った。
じゅわっと肉の焦げる音。
別に食欲はそそらない。
「ありがとう」
「もっと驚かないの?中級魔法よ?」
「いや、えっと、驚いてるよ?」
「そうは見えないんだけど……」
言いながら少女は鉄の剣をオークに刺し、器用に剣を動かして魔石を取り出した。
「おお!凄い!」
「そっちに驚くの?みんな出来ると思うけど……」
奥から2体オークが出てきた。
「助けて~」
「はいはい分かったわよ。《火炎矢》《火炎矢》」
火の矢が2本ともオークの眉間に突き刺さる。
「ふふん」
「マナ足りるの?」
「これでも驚かないの?中級魔法を2種類も使ったのよ?」
「お、驚いてるよ?」
少女は少し残念そうだ。
「あなた、騎士学校の生徒?」
「いや、違うよ」
「あー、落ちたのね、試験に」
「まあ、そんなとこ」
「どこかの貴族?」
「違うよ」
「そう。ここから先、一緒にいく?」
「………どうしようかな」
「一緒に行きましょうよ」
「じゃあそうする」
2人並んで歩き出す。
「そう言えば、君の名前は?」
「シュウ。そっちは?」
「アイリよ」
草が無くなり、少し狭くなった。
ゴブリンが出たが、アイリが《火炎球》で片付けた。
「そう言えば、シュウは魔法使える?」
「………つ、使えるよ」
「へえ、それで試験に落ちたって相当なものね」
「あはは」
「属性は?」
「氷。アイリは?」
「見たでしょ?炎よ」
「炎属性の人って多いの?」
「多いわよ、無属性の次くらいかしら。炎魔法はいいわよ~、種類多いし、攻撃力高いし」
「ふーん。《炎剣》って持つとき熱くないの?」
「持つところがマナ化されてるからね。それに炎魔法を使ってる時は、炎への耐性もつくし」
「へえ、他の属性の魔法でも耐性つくの?」
「自分が使ってる魔法への耐性はつくわよ」
「へえ」
急な下り坂だ。
2人で降りる。
オークが3体出てきたが、アイリが全て片付ける。
「シュウも戦ってくれない?マナが勿体ないんだけど」
「ごめん。今マナ空っぽなんだ」
「使えないわね」
「ごめん」
「マナがあったらどのくらいの魔法が使えるの?」
「《小凍》が使えるよ」
「………………え?他には?」
「無いけど」
「ほっとんど意味ないじゃない!よく魔法が使えるなんて言ったわね」
「使えるからね」
「はぁ………剣はどのくらい使えるの?」
「ゴブリンと互角くらいかな」
「よわ!さっきのオークの時とかめっちゃ危なかったじゃん」
「だから助けてって言ったんだよ」
「どうしてそんなに平然としていられるの?そんなに弱いのに、怖くないの?」
「えっと………アイリがいるから、安心出来る」
「………褒めても何も出ないわよ」
先程と同じような広い空間に出た。
土で出来たロボットのようなものがどしんどしんと機械的に動いてくる。
「ゴーレムは逃げるしかないわね」
「分かった」
ゴーレムは動きが鈍いので、距離をあけて素通りした。
そこに、オークの上異種、ハイオークが立ちはだかる。
「《火炎矢》」
眉間に突き刺さり、崩れ落ちる。
「強いね、それ」
「中級魔法だもの」
「そう言えば、どうやって上に戻るの?」
「転移陣を使うに決まってるじゃない」
「あ」
大きな蟻がいた。
集の膝くらいまである。
「《火炎球》」
蟻は機敏に避けた。
「すばしっこいわね……シュウ、他のキメラアントがいっぱい出てくる前に進むわよ」
「分かった」
アイリが《炎剣》を構えながら進むと、蟻―キメラアントは近寄ってこなかった。
その後はゴブリンやオークがたくさん出てきたが、特に強いモンスターは出てこなかった。
また急な下り坂。
「次の階層はビックアイが出てくるから、マナ切れのシュウが先に行って」
「ん?分かった」
降りてすぐ、大きな1つ目の黒い球体が浮いていた。
ビックアイは、2人を見つけると、小さな白い光の輪を飛ばしてきた。
「シュウが受けて」
「分かった」
集が受けると、その輪は広がり集を囲んでくるくる回りだした。
そして縮んでいき、集の中に入るように消えた。
「なんか嫌なんだけど、これは何?」
「それは《業》よ。最初にマナを1000削られて、その後5分間マナの消費が2倍になるの」
「へえ、何回も受けたら?」
「まず毎回1000削られて、5分以内に受けたらその時点からリセットで5分間になるわ。4倍とかにはならないわ」
「へえ」
集は歩いてビックアイに近づき、切った。
何回も《業》を受けたが、もともとマナが無いので気にしない。
断面に魔石があったので、つまんですぽっと取る。
その後何匹もビックアイが出てきたが、痛くも痒くもなかった。
「攻撃魔法は撃ってこないから、もともと魔法を使わない人には全く怖くないモンスターね。私は心底恐ろしいけど」
「もうポケットに魔石入らないから、帰りたいんだけど」
「私もそろそろ帰ろうかしら。丁度この階層にボス部屋があるから、行きましょう」
「なんで?」
「は?転移陣使うでしょ?」
「あ、そう言うことね」
ビックアイを倒しながら進んでいくと、扉があった。
「ボスは倒される度にランダムで召喚されるから何かは分からないけど、今までそんな強いモンスターはいなかったから、大丈夫よ」
アイリが開けて2人はボス部屋に入った。
中は大きな半球状の空洞だった。
その中心に大きな黒い鬼のようなモンスターが立っている。
「オーガジェネラル………な、んで……」
「ん?強いの?」
「強いなんてもんじゃ―――」
「グアァァァァァ!!!」
「――あ」
アイリは腰が抜けたようだ。
歯がかちかちなっている。
ぺたんと座りこんだ地面に、液体が広がっていく。
オーガジェネラルの後方には青い魔方陣がある。
「あそこにあるのが転移陣だよね?」
「……………」
アイリは答えられる状態ではないらしい。
しょうがないので、集はアイリをおぶった。
正面に直径1メートル程の真っ黒な拳が迫っていたので、左前に低く飛んで避けた。
位置関係的にオーガジェネラルよりも転移陣に近付いた。
鼓膜が破けそうなくらい凄まじい衝突音と暴風が飛んでくる。
暴風に飛ばされて少し転移陣に近付けた。
上からまた拳が迫る。
後ろに飛んで避けた。
また暴風に飛ばされて転移陣に近付いた。
石つぶてが飛んできて痛い。
もう大丈夫だろう。
アイリを思いっきり投げた。
アイリは目を見開いている。
転移陣の上でアイリは光になって消えた。
「ふう」
集は汗をぬぐった。
石つぶてとか痛かったので、少しうざい。
また集の視界が殆ど黒一色に埋め尽くされた。
オーガジェネラルが拳を振り抜いた時には、そこに集はいない。
オーガジェネラルの四肢がみじん切りに切り刻まれた。
胴体がどしんと仰向けに落ちる。
その額にはイデアを纏った集が乗っている。
左目からは緋色の尾を引いている。
「イデアって使ってる時よりも解放する時の方が消費が激しいんだよね。あんまり早く決着がつくと、イデアが勿体ないんだけど」
オーガジェネラルは、口が【八岐大蛇】で喰われているので、すーすーと言うだけで声は漏れない。
「ああ、今は時間感覚を戻してるから、消費は最小限だよ」
どうせ通じないのに、意味のないお喋りをする集。
「服買おっかな」
額から降りて、転移陣に向かう。
首の横を通るとき、適当に《スカルイクス》を一閃してとどめをさしてあげる。
転移陣に乗り、集はその場から消えた。




