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第83剣『二次試験の選択』

「これで試験は終了か?」


 レオフィーナは間の抜けた顔をしている試験官に訪ねた。


「それとも、会場の外にいる魔物も追加する」


 咲耶も続いて質問をする。彼女はまだ外に魔物がいることを察知していた。


「サクヤまだいるのですか」

「うん、伝わってくる足音から推測すると全部で三体かな、同じティラノレパードだと思うけど」


 咲耶の推測に戦いの疲れで座り込んでいた受験者たちが武器を手に一斉に立ち上がる。咲耶は土魔法を極めている。会場の外ぐらいまでなら振動を感知するくらい簡単だ。


「安心してくださいレオフィーナさん、今度は僕があなたを守ります」


 オルフェノなどは、レオフィーナを守るために彼女を背中で庇いながら長剣を構えた。先程の骸骨戦士に捕まった失態を挽回したいのかもしれない。


「……みなさん、まだやる気があるのデスね」

「ソウですか、でも残念ながら一次試験はこれで終了、ソウ終了」


 白い闘獣士のソウはレオフィーナと咲耶に視線を送る。


「残りを出しても無駄ソウなので」


 後三体ティラノレパードを追加したところで魔法陣はもう破壊しているし、咲耶とレオフィーナが瞬殺するかまえを取っている。試験官の二人はどうあがいても受験者をこれ以上減らせないと判断したようだ。


「今、両足で立っているみなさんは一次試験通過デス」


 兄弟試験官はパチパチパチと拍手を送ってきた。

 こうして過去に例がないほど一次試験は早期に終了した。


「ようやくですか」

「けっこう時間がかかちゃったね」


 あれでかよ、と言葉に出さなかったが試験官と他の受験生の心が一つになった瞬間かもしれない。


「二次試験は実戦と先日説明を受けたのですが、この後にギルド本部で説明を聞けるのか?」


 一次がクリアできたのなら、早く二次も終わらせたいとレオフィーナはさっそく二次試験についての質問をする。


「せっかちデスね」

「ソウれは、これから説明する。ソウ二次試験の説明を」


 試験官兄弟は懐から合わせて五枚の依頼書を取りだし受験生たちに見せた。


「この五枚の依頼書は全部Aランクの難易度デス。この中から各自好きな依頼を一つ選ぶデス、達成できれば二次試験も合格となり、晴れてランクAに昇進できますデス」


 二次試験は意外とシンプルなルールだった。


 要はAランクの依頼を達成できると証明すればいいだけ。

 受験者たちは一斉に提示された依頼書を読む。


 依頼書一番。

 東の山より移動してきたオーグルの群れの討伐。推定三百匹、最大個体はBランク数体が確認されている。報酬金貨80枚。


 依頼書二番

 剣技大会用の魔物捕縛。捕縛対象は討伐Bランクの多頭犬オルトハウンド。無傷が望ましい、傷を負わせても一回の治療で直る程度。報酬は一頭につき金貨50枚。捕縛頭数上限無し。


 依頼書三番

 Aランク相当の魔物の魔核入手。膨大な魔力を内包したAランクの魔核をできるだけ早く入手すること先着一人または一集団まで。報酬金貨500枚。


 依頼書四番

 三十カラット以上のダイヤモンドの入手。宝石の王と呼ばれるダイヤモンドの巨大な石を探し出す。報酬金貨400枚。価格は大きさにより上下する。


 依頼書五番

 コロシアムにて闘獣士ソウ&デスのお手伝い。剣技大会を盛り上げるための前座が大会前日まで執り行わる。それのお手伝い。報酬銀貨700枚。


「サクヤどうします」

「報酬はできるだけ多くほしいよね」


 主である鎮也は金欠状態なのだ、ここは少しでも稼いでおきたいのが二人の共通認識。


「分かれて受けようか」

「無難ですね」


 二人は別々の依頼を受けることにした。依頼はそれほど時間のかかるものは選べない、何を基準に選ぶか悩みだすと。


「おっと、まだ選ぶのは早いデス、まだ説明は全部終わっていないデス」


 二人の試験官に待ったをかけられた。


「ソウで~す。二次試験の依頼を受ける上での条件が二つあります。ソウ条件が二つ」


 兄弟がそれぞれ人差し指を一本ずつ立てる。


「一つは達成期限デス、期限は四日以内、依頼の中には剣技大会に関わるモノもあります。デスので剣技大会の前日までに達成報告をギルド本部の受付にしてくださいデス」


 期限付き、そうなると達成に難しい依頼も出てきた。


「二つ目は達成後の状態、ソウ状態、これは試験、Aランクの依頼を無事に達成できるかを見る試験。依頼の達成報告はかならず冒険団全員ですること、一人でも歩けないほどの重症を負っていると失格です。ソウ失格」


 捨て身で達成してもダメ。この二次試験で普通にAランクの依頼をこなせる力が有ることを証明しろと言う事だろう。


 二つの条件を頭に入れてレオフィーナは改めて依頼書を吟味する。


「まず、五番は論外」

「なぜデスか!!」

「ソウです、私たちの一番のおすすめ、ソウおすすめ!」


 レオフィーナは二人の言葉を右から左に聞き流す。


 依頼書をよく読んでみれば報酬が一つだけ銀貨と記載されているのだ。銀貨は十枚で金貨一枚、つまり四日も拘束された上に金貨七十枚と五つの中で一番安い、それになりよりソウ&デスの手伝いなど怪しすぎてやりたくない。


「四番はダイヤを見つけても報酬に換えるより」

「鎮也くんに渡した方が有効活用しそうだよね」


 咲耶もレオフィーナと同じ考えだった、三十カラット以上ダイヤモンドなど二人でも見たことがないし、鎮也ならとんでもない剣が作れそうだ。それに四日の期限内に探せというのも無理がある。


 実は帝都で活動をしていなかったレオフィーナたちは知らなかったが、このダイヤモンドを探す依頼は十年前からギルド依頼ボードに張り出されており誰も達成できていない、達成不可能な依頼とささやかれているモノであった。五枚の中で一つだけ色褪せ変色している。


「四番もなしだな」


 次の三番目はすぐに達成できてしまう。レフティアの依頼の際に遭遇したAランクのドラゴンを倒しているレオフィーナたちはすでにAランクの魔核を所持しているのだが、これをこんな所で使うのはもったいないし、トレイシアの想い入れもあるだろう。


 そうなると残るは。


「一番と二番か」

「どっちにする」


 分かれると決めているのでレオフィーナが選ばなかった方を咲耶が請け負うことになる。だが残りの二つを選ぶうえでまだ一つの問題があった。


「すまないサクヤ」

「わかってるよ、私が二番の捕獲に行くね」

「助かる」


 問題とは、レオフィーナは手加減が苦手なので『無傷が望ましい』は彼女にとって難易度が高すぎるのだ。なので手加減のできる咲耶が捕縛に回った。


「決まりだね」

「選んだ依頼は受付に報告すればいいのか」


 他の受験者たちが悩んでいるさなか、レオフィーナたちは簡単に消去法で依頼を選んだ。


「ソウです。受けてからの依頼変更はできませんので注意してください、ソウ注意」


 もう変更するつもりもない二人は悩みはしない。


「では受付に向かいましょう」

「あ、あの!」


 レオフィーナたちが会場を去ろうとすると、オルフェノに呼び止められた。


「なにか?」

「あ、あの、できたら、い、一緒に依頼を受けませんか!!」


 会場中にオルフェノの声が響き渡る。真っ赤な顔で頭を下げるオルフェノ、会場中の視線が集まりレオフィーナはまるで公開告白をされているような居心地が悪さに襲われる。


 この状況でレオフィーナが一番気にしたのは鎮也の反応であった。客席にいる鎮也へ視線を送ると彼も驚いた表情をしていたので、とりあえず問題ないと視線で合図を送っておく。


 鎮也も合図を理解して頷いてくれたので一安心。


 その後に鎮也の口が『お・や・く・そ・く』と動いた。


 いつもからかっている仕返しをされてしまった。


「なるほどマスターはいつもこんな気分を味わっていたのですか、これは少し自重した方がいいかもしれませんね」

「鎮也くんだけじゃなくて私にも自重してね」


 鎮也の次にレオフィーナのお約束の被害にあっているのは咲耶である。


「あ、あのレオフィーナさん、返事をもらえないでしょうか!」


 まっすぐな視線で見つめてくる。まさに物語りの主人公を務める駆け出し勇者のような印象を受けた。


「私をお約束に当てはめるなら、ラブコメ勇者の強い先輩ポジションと言ったところでしょうか」

「はい?」


 女性ながらに強すぎて、誰も女性扱いしてくれない中、主人公の勇者候補だけが女性扱いしてくれて、ときめくパターン。魔法学園物なら最強で孤独の女生徒会長かもしれない。


「ですが私はマスターにちゃんと女性扱いをされていますので、すみませんが依頼は一人で受けさせてもらいます」

「そんな女の子を一人で危険な依頼に向かわせるなんて僕にはできません」


 レオフィーナを女の子扱いしてきた。

 うん、典型的な勇者くんである。できるならこれ以上関わりたくないと言うのがレオフィーナの本音であった。


「先程は失態を晒してしまいましたが、今回のことで学習しました。どんな時でも手を緩めてはいけないと、一次試験は手の打ちを隠すために予備の剣を使いましたが、二次試験は僕の最強装備である聖剣を使います。あの剣なら必ずあなたを守れます」

「聖剣、ですか」


 再度断ろうとしたレオフィーナが言葉を止めた。


「はい、ボルケノ聖王国に伝わる聖なる剣の一振りです。言伝えでは星の力を宿しているとか、僕にはまだ完全に使いこなせていませんが、この剣は持ち主を選び、僕にしか装備できない剣なんです」


 星の力に所有者を選ぶ聖剣。

 気になる記号が連続して出てきた。


「レオナ」

「ここで一緒に依頼を受ければ彼の誤解が冗長しそうではありますが」


 鎮也の聖雷剣の可能性がある以上無視できなくなった。


「試験官、別の冒険団と組むのはありなのか?」

「別に問題ないデス、ただ報酬の分け方各自で交渉してくださいデス」


 報酬の分け前でもめれば時間がかかり、制限時間内にクリアするのがさらに難しくなりそうだ。

だが、ここは仕方がないだろう。


「レオフィーナさん、一緒に来てくれるんですか」

「あなたの聖剣がどうのような物か興味が出ました。今回の依頼だけご一緒させてもらいます」


 レオフィーナはオルフェノたちと一緒に二次試験を受けることになった。


 嬉しそうにはしゃぐオルフェノが猛烈にご機嫌斜めになったモーリンから飛び蹴りを食らったのはこのすぐ後の事である。

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