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第62剣『叩き落とす』

「…………やっぱりお任せしていいかな」


 冒険団のプライドだけでギガントオーグルは倒せる相手ではない。


「まかされた」


 立ち上がったギガントオーグルは自分を突き飛ばした相手を探している。


「シア、幼竜の顔だけ柵から出して」

「はい」


 鎮也に指示通り、幼竜が首を伸ばして柵から顔を出すとギガントオーグルと目が合った。本能で格の違いを理解したのだろう、恐怖に全身を染め上げ全速力で逃げっていった。


「よし、これで後は悪魔の像だけだな」

「……簡単に片づけてくれるわね」


 昨晩、自分たちが苦戦したBランク魔物を簡単に退ける鎮也たちにもう文句もつけられないルーシア。


 楽勝ムードになりつつあった砦に、滞空していた悪魔像たちからまたも赤いレーザー光線が放たれた。先程打ち込まれた時もこちらが押し返しのムードになった時であった。悪魔像は砦を守備する側にとって、高揚した場面を見極め冷や水をかぶせてくる。


 しかし一度受けた奇襲である。代わり映えしないのであれば咲耶たちにとっては慌てるほどの攻撃ではなかった。

 鎮也たち目掛け迫る赤いレーザー光線は咲耶が三振りの六黒を展開させるだけで、防いで見せた。威力が強いことはわかっているので、高速で回転させ威力に対抗した。


「奇襲がこわいのは予期できない初見だけだよ」

「レーザー光線って、登場する作品のジャンルが違うだろ」

「流石はマスター、お約束のセリフを忘れませんね」


 レオフィーナの予想通り鎮也はジャンル違いと口にした。先程戦いの優劣をひっくり返されるほどの一撃だったのに二度目にはもうお約束のネタにしか効果はなかった。


 今度はキャノンバスターが打ち込まれるが、それもレオフィーナが光剣で斬り落とす。どんなに強力でも発射場所が分かりまっすぐに飛んでくる弾では鎮也たちは脅威に感じない。


「じゃ分担だ、片腕は幼竜が倒すとして、他の二体は地上に落とそう。それは二人に任せる」


 相手はAランクの魔物である。だが鎮也は簡単に任せると言い。


「まかせて」

「了解です」


 従者たちは簡単に了承した。


「俺は空に上がって幼竜のサポートをする」

「あんたたちは空も飛べるの!?」


 もう簡単すぎるありえない作戦会議にルーシアはツッコミを入れてきた。


「まあ、飛べるね、方法はいくつかあります」


 魔法には空を飛べるようにするモノがいくつかあるが、今は魔法を封じられている状況、ルーシアには他の方法など噂にも聞いたことがなかった。いったい鎮也はどんな方法で空を飛ぼうというのか。


「トルナード!」


 鎮也が愛馬の名を呼び柵から飛び降りた。


 門に開けられた穴を守っていた白銀のブレードユニコーンは穴の警戒をヤマトに任せ、主の元へと走りだしその体を輝かせると、一振りの大剣へと姿を変えた。


 突撃剣トロンバトルナード。この大剣の奥義スキル『飛翔』を発動、サーフボードのように空の海に乗り飛翔する。柵から飛び降りた鎮也を大剣の腹で受け止め、悪魔像たちのいる空へと飛びあがった。


 空中は自分たちの領域だと勘違いしている悪魔像たちに突撃をする。


 安全地帯を脅かされた悪魔像たちは、片腕以外の二体が鎮也へと襲いかかる。

 迫りくる二振りの大剣を木の葉のようにひらりひらりと交わしながら鎮也は鑑定眼を発動させた。


「―――――――――――――――――――――――――――

 聖雷剣シリーズ シリアル47

【名称】「キャノンバスター(灰色化)」

【和名】「大剣巨砲」

【製作者】星尾鎮也

【使い手】未登録

【分類】特殊大剣 【レア度】☆☆☆★(4-1)

【長さ】240センチ 【重さ】300キロ

【聖剣核】トパーズ

【スキル】

※封印中『雷魔法(中)』……使い手が雷魔法を扱えるようにする(効果:中)

『砲撃』………………石の砲弾を発射する。

『弾丸製造(土)』……土を入れると弾丸を作り出す。

【補足】

 石火矢を無理やり剣の形にしたような大剣、一応刃は付いているが重すぎるため普通の人間には扱える代物ではなくなってしまった。使い手の一部でも土に触れていれば即時に弾丸は装填されるが、大地から離れてしまうと装填スピードはかなり遅くなる。

 使い手は未登録であり、現在の所持者がふさわしくないためレア度がマイナス1、スキルの効果も軽減され灰色化している。

―――――――――――――――――――――――――――」

「―――――――――――――――――――――――――――

 聖雷剣シリーズ シリアル186

【名称】「ロイヤルバスター(灰色化)」

【和名】「大聖騎士」

【製作者】星尾鎮也

【使い手】未登録

【分類】大剣(巨人用)【レア度】☆☆☆★(4-1)

【長さ】320センチ 【重さ】7.5キロ

【聖剣核】ミルキークォーツ

【スキル】

※封印中『雷魔法(中)』……使い手が雷魔法を扱えるようにする(効果:中)

『真っ向』…………真正面に放つ攻撃の威力が上がる。

『手加減』…………全力で攻撃しても相手を殺さない。

【補足】

 鎮也が巨人族にも使い手が現れるのではないかと予想し製作した巨人族専用の超大剣。またロイヤル名が付く聖雷剣の多くが騎士をイメージして作られており、まっすぐな騎士道を貫く者が扱えばその真価を発揮できる。

 使い手は未登録であり、現在の所持者がふさわしくないためレア度がマイナス1、スキルの効果も軽減され灰色化している。

―――――――――――――――――――――――――――」


 悪魔が使うのも空中で使うのも、願った使い手とも使用方法ともまったく逆の扱い。


「ハ~」


 いまだに斬撃は続いているが、鎮也は盛大なため息をついてしまった。


「もういいよお前らは、落ちろ」


 鎮也の背後から六振りの六黒が悪魔像を挟撃する。地上から咲耶が投擲したのだ。

 地上へと落とすために翼を狙う。


 悪魔像たちは翼を守るために六黒を振り切ろと急上昇するが、その悪魔像の頭上から一羽の鷲が舞い降りる。額に剣の角を持つ鎮也の愛鷹オジロ。


 オジロは剣獣状態のまま、広げた翼の先から光刃を生み出し二体の翼持つ悪魔像の翼を斬り裂いた。咲耶が六黒を投擲するよりも早くにレオフィーナがオジロを剣獣に戻して空高く飛ばしていたのだ。


 重力に逆らえなくなった悪魔像たちは大地へと引きずり降ろされていった。


「残るはお前だけだな、片腕」


 鎮也はトロンバトルナードの上で透徹をベルトから引き抜き片腕の悪魔像へ突きつけた。

 お膳立てが整い砦から翼を広げ舞い上がってきたトレイシアを乗せた幼竜が、鎮也の隣で片腕の悪魔像を睨み付ける。






 一方、地上の叩き落とされたもう翼の無い二体の悪魔像の前に咲耶とレオフィーナがやってきた。


「サクヤ、大聖騎士(ロイヤルバスター)の方は私がもらっていいですか」

「まかせるよ」

「ありがとう」


 レオフィーナの腕に空から悪魔像を落としたオジロが舞い戻る。


「いきますよオジロ」


 オジロを剣に戻したレオフィーナは予備動作もせずに大聖騎士を持つ悪魔像へ斬りかかった。


 光剣を大聖騎士で受け止める悪魔像、だがレオフィーナはそのまま強引にオジロを振り抜き悪魔像を吹き飛ばし、自分もすかさず追いかける。


 飛ばされた悪魔像は体制を立て直し、追いかけるレオフィーナに向かって大聖騎士のスキル『真っ向』を発動させた。真正面の攻撃に対して攻撃力を増加させるスキル。


「できそこないの石像風情が!」


 上段真っ向斬り。

 ギロチンのようにレオフィーナへ振り下ろされる巨大な刃、スキルの効果で音の速さを超え、風切り音もしない斬撃。


 その強力な斬撃をレオフィーナは避けようともせず、手の甲で横から大聖騎士の腹を叩き斬撃の軌道をずらした。

 まるで剣の方がレオフィーナを避けて地面を叩く。


 お前などにスキルは使えこなせないと、その聖雷剣は似合わないと突き付けるために、レオフィーナは『真っ向』スキルに対して真正面から挑んだのだ。


 悪魔像はレオフィーナに身長の倍以上ある。彼女はその悪魔像の頭の高さまで飛び上がると、横一閃にオジロを振り抜き首を斬り飛ばした。


 石像であるため血の一滴も流れることはない。

 逆に石像だから首を飛ばされても死ぬことはなかった。


 着地したレオフィーナにめがけてレーザー光線を放とうと、ヘソを赤く光らせてくるが、やらせるわけがないヘソにオジロの光剣を突き刺しレーザー光線の発射を止める。


 するとエネルギーが逆流したのか、悪魔像の体が膨張し、爆発した。


 爆風に乗り大聖騎士がレオフィーナの元へ飛んできたのをキャッチする。


「ロイヤルバスター、嫌な思いをさせてしまいましたね。次はきっとあなたに相応しい使い手を探して見せます」


 取り戻した大聖騎士に光剣の騎士とも呼ばれる少女が労いの言葉をかけた。






 そしてもう一つの翼の無くした悪魔像の方でも戦いが繰り広げられていた。


 大地に足を付けたため連射が可能になった大剣巨砲(キャノンバスター)、三百キロもある重たい刀身を悪魔像は苦も無く振り回し、手当たり次第に打ちまくる。


 飛来する砲弾を咲耶は纏う着物をひるがえしながら六黒を展開してすべてを斬り落としていく、周囲の木々はなぎ倒され、地面に無数にクレーターが出来上が、咲耶はダメージを受けてはいない。


 彼女の周りを飛び回る鉄壁の六枚の羽根を悪魔像の攻撃は突破することができなかった。だが、隙を見つけ六黒の一振りを放つが悪魔像も大剣巨砲を盾に弾いてみせる。


 咲耶の攻撃もまた防がれていた。


 全力で六黒を投擲すれば大剣巨砲も貫けるが、それは鎮也の剣を傷を付ける行為、咲耶にはそれができなかった。


「なんか、今までに遭遇した敵の中で一番聖雷剣を使いこなしているように見えるのが、とっても癪ね」


 咲耶は五振りの六黒に砲弾からの守りを任せ、一振りを握りしめ居合の構えを取った。


「対魔法結界の中でも、絶対に魔法が使えないわけじゃ無い」


 ウーゴットの屋敷でも証明されている。

 大量の魔力を込めれば少しは魔法を発動させることはできた。

 咲耶は決着を付けるために接近戦に持ち込むことにした。


 悪魔像も砲撃だけでは咲耶を倒せないと悟り、砲撃と一緒にヘソから赤いレーザー光線を放ってくる。


 だが、この瞬間こそ咲耶は待っていたのだ。

 接近戦へと持ち込むチャンスとして。


 相手が最大の攻撃をした時こそ、最大の隙が生まれる時。


 咲耶は地を這うような前傾姿勢で踏み込み、砲弾とレーザー光線の下を潜りぬけ悪魔像の懐へと潜り込んだ。大地を強く踏み込み、咲耶は六黒から伸びた黒い刃で居合いを放ち悪魔像に斬撃を浴びせる。


 この黒い刃は六黒のスキル『影魔法』で作りだした影の刃、十メートルの刃を作るイメージで出してみたら対魔法結界に妨害され普通の刀サイズの刃となった。


「だいたい予想通りの長さだね」


 ウーゴットの屋敷での経験から作り出した刃は咲耶ももっとも得意とする長さ。

 咲耶は一撃を入れてもまだ動く悪魔像へ連続の斬撃を打ち込み、バラバラにしていく、その時、ヘソから繋がる腹部に核のようなモノを発見、直感で急所だと判断した咲耶は、再び居合いの構えを取り確実に中心を両断した。


 咲耶の直感は正しく、あれが悪魔像の心臓部であった。


 両断された心臓部は内包していたエネルギーが暴走し膨張する。

 後方へと飛びのき爆発の被害から逃れた咲耶は、レオフィーナも決着が付いていることを確認して大剣巨砲を確保すると、空を見上げる。


 空中では幼い竜と片腕の悪魔像が壮絶なドックファイトを繰り広げていた。

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