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第49剣『ドラゴン』

 体長はおおよそ二〇メートル、小国なら落とせるほどの力を持つはずのドラゴンがどうしてこんな所で死んでいるのだ。

 こいつはギガントオーグルなど比べものにならない正真正銘の化け物である。


「全体を掘り返してみようロロォ、頼んだ」

「ロォロォ」


 作業特化のマルチなゴーレムがドラゴンの周囲の岩をスポンジのようにヒョイヒョイと持ち上げてどかしていく。


「死後、半日程度ですね、推定年齢三百年前後、成竜の中では中堅といったところですか」


 体が掘り出された所でドラゴンの生体には一番詳しいレオフィーナが検死をおこなった。助手にはマルチなシスターのトレイシアが付いている。


「中堅ですか?」


 さすがのトレイシアもドラゴンに関しては詳しく知らないようだ、まあドラゴンと人間とでは寿命が違いすぎるのでこの世界の技術では調べるのも難しいであろう。


「ドラゴンは千年を超えれば老竜になります。ですから三百年は新人を卒業した辺り、つまりは中堅ですね」

「ドラゴンの世界にも新人とかあるのですね、それにしてもドラゴンの生体なんて誰も手が出せない分野をよくご存知ですね」

「私もマスターの従者になる前はドラゴンでしたから」


 レオフィーナのモデルとなった登場漫画のヒロインの話しである。

 漫画の設定がそのまま彼女の過去設定となっているので、漫画『セイバースターズ』のストーリーがレオフィーナの過去ともいえる。つまりかつての彼女は竜王の娘であり、竜族の姫でもあったのだ。


「そうだったんですか!?」

「ちなみに咲耶は元蛇型のドラゴンです」

「東方の国に住まうという伝説のドラゴンのことですか?」

「蛇じゃなくて龍です」


 蛇ではないと咲耶が強く否定した。


「似たような物です」

「まったく似てないよ」

「おいおい、その話題になると喧嘩になるからするなっていっただろ」


 普段は姉妹のように仲の良い咲耶とレオフィーナだが、龍と(ドラゴン)の話しになると衝突する場合がある。二人とも、それぞれが最強の種族だという誇りがあるらしく、きっかけはどうあれ最後は龍と竜はどちらが強いかで揉めだしてしまうのだ。


 それでも鎮也がたしなめれば止まってくれるのでそれほど強くは注意しない。互いの誇りまでは否定するつもりはないから。


「咲耶、こっちを手伝ってくれ」


 鎮也はレオフィーナの検死とは別に対魔法結界の魔道具を探し出した。


 ウーゴットの屋敷では調べるのをうっかり忘れていたが、これからの冒険を考えると、対魔法結界の対策を立てても損なことはないだろう。魔道具が見つかれば対抗策も考えつくかもしれない。

 それにその結界がある場所にはウーゴットの隠し資産があるかもしれないし、その中には鎮也の聖雷剣が含まれている可能性もある。


「ロロォ、こっちの岩をどかしてくれ」

「ロォロォ」


 鎮也はドラゴンの死骸よりさらに奥を調べるのだが何も出てこない。

 さらにさらに奥を調べても何も出てこない。


「あれ、おっかしいな」

「どうしたの鎮也くん」


 鎮也が作業の手を止めた、洞窟の跡はあるが、人が手を加えた跡が見つからなくなったのだ。

 それに対魔法結界内にいる時の重圧が薄くなったような気がした。


「なんか対魔法結界の効果が弱くなった気がするんだけど、試してみてくれるか」

「うん」


 咲耶がもう一度土の人形を作るために魔法を唱えるとすんまり作れた。


「使えるね、普通に」


 土人形を作れた咲耶自身が困惑してしまった。


「咲耶、感覚的に何かわからないか?」

「少し対魔法の影響を受けてるみたいだけど、そうとう弱いみたい」


 魔法がつかえたことからも弱まっていることは確かだ。

 この場所はドラゴンの死骸よりもさらに奥に進んだ場所、つまり結界の中心を通り過ぎてしまったことになる。


「気が付かないうちに結界の魔道具をほりだしちゃったのかな」


 咲耶はロロォが掘り起こした岩などが積まれている場所へ土の人形を向かわせてみるが、何も起こらずに到着できた。


「まだ、掘り起こしたわけでもない、となると」


 鎮也と咲耶、二人の視線がドラゴンへ向けられた。


 今度はドラゴンの元へ土の人形を向かわせてみると、近づくにつれ、人形の体が崩れ始めて到着する前にただの土くれへと戻された。


「ドラゴンが結界の中心なのか」


 鎮也たちはドラゴンの死骸へと引き返した。


「レオナ、わかったことはあるか、どうやらこの辺りが対魔法結界の中心みたいなんだが」

「そうなのですか、でも、それなら納得できることも」

「何かわかったのか?」

「マスター、これを見てください」


 レオフィーナが見て欲しいといったものそれはドラゴンの体についた傷であった。

 傷は大きく分けて二種類あり、一つは大剣のような大きく鋭い刃で斬られたもの、もう一つは銃で撃ち抜かれた銃創のような焦げた穴。


「致命傷は大きな刃によるモノだと思いますが、この小さな傷は不可解です」


 腕にあった銃創の一つを示してから、腕の反対側を確認すると貫通していた。


「どう不可解なんだ」

「ドラゴンは絶えず自身の体を魔力でコーティングして守っています。それがドラゴンが最強であるゆえんの一つで、このような小さな攻撃で体に傷が付くはずありません、ましてや貫通などおかしすぎます」

「死後に着けられたわけじゃないよな」

「死後でも従来ならこんな傷は付かないと思います、ドラゴンは死んでも数年は魔力を纏っていると書物で読んだことがあります」


 トレイシアは不慣れな役割であってもこれまでの吸収した知識を使い助手をまともに務めていた。


「シアの言う通りです。しかしこのドラゴンは一切の魔力を纏っていません、それも不可解です。ですが対魔法と何らかの関係があるのなら」


 死後まだ一日も経っていないドラゴンに魔力が無い、鎮也は鑑定眼を発動させ、くまなく調べていくと、ドラゴンの首筋に反応があった。


 鑑定眼は生き物には反応しなり、反応したということは人工的な何かがそこにはあることを示す。

 鎮也はドラゴンをよじ登って首筋を確認すると角の影に一つの魔道具が突き刺さっていた。


「――――――――――――――――――――――」

【名称】魔法封じの杭

【製作者】ウーゴット

【分類】魔道具 【レア度】☆☆☆☆(4)

【長さ】35センチ 【重さ】1.2キロ

【魔道核】聖雷剣トロワラムザーⅣ

【スキル】

『吸着』…………刺した物体から抜けなくする。

『魔力封印』……刺した相手の魔力を封印する。

『※◎▼◇』……未収得

【補足】

 ウーゴットが三つの属性魔法を使用できるようにする聖雷剣トロワランムザーⅣの性質に目を付け、刺した相手の魔力を封印する魔道具に組み込み完成させた強力な魔封じアイテム。性能は強力だが完全制御できていないため、周囲の魔法も勝手に打ち消してしまう。

―――――――――――――――――――――――」


「なんだよこれ」


 鎮也が魔法封じの杭を掴み、引き抜いた。

 この杭が原因でドラゴンの体から魔力が失われていたのだ、引き抜いたと同時にドラゴンの体から魔力が感じられるよになった。


「鎮也くん、それって」

「ウーゴットが作った魔道具だ、本当にあの野郎は居なくなっても俺を腹立たせるな」


 長方形の黒い箱に一か所だけ飛び出した刃、デザインセンスの欠片もない不快な魔道具だ、しかも欠陥品。狙った用途以外にも誤作動を起こしている。


「対魔法結界じゃなくて、これが勝手にその役割になってただけだ」


 鎮也が魔法封じの杭を地面に置き、透徹を使って黒い箱の部分を叩き割った。

 中には灰色に変色した一振りの短い剣が収まっていた。


「ホントに腹立たしいね」

「やっぱり燃やしておくべきでした」


 鎮也の怒りの原因を知った咲耶もレオフィーナも怒りをあらわにする。

 灰色の剣を拾い上げた鎮也が鑑定眼を発動させる。


「―――――――――――――――――――――――――――

 聖雷剣シリーズ シリアル314

【名称】「トロワラムザーⅣ(灰色化)」

【和名】「魔杖剣・四型」

【製作者】星尾鎮也

【使い手】未登録

【分類】杖剣   【レア度】☆☆☆★(4-1)

【長さ】33センチ 【重さ】0.4キロ

【聖剣核】クリソベリルキャッツアイ

【スキル】

※封印中『雷魔法(中)』…………使い手が雷魔法を扱えるようにする(効果:中)

『水魔法(中)』…………使い手が水魔法を扱えるようにする(効果:中)

『土魔法(中)』…………使い手が土魔法を扱えるようにする(効果:中)


【補足】

 トロワラムザーⅣ型。杖剣とは魔法使いの杖と剣を一つに融合したものであり、剣でありながら杖としても使える剣の総称。トロワラムザーシリーズは魔法の才能が無い者にも三つの魔法属性を使え手に与える。

 使い手は未登録であり、現在の所持者がふさわしくないためレア度がマイナス1、スキルの効果も軽減され灰色化している。

―――――――――――――――――――――――――――」


 間違いなく鎮也が作った聖雷剣。


 アリアの時もそうだったが、ウーゴットは聖雷剣を核に使って私欲を肥やす魔道具作りに最悪的センスを持っていたようだ。


「こんな魔道具を埋め込まれていたから、ドラゴンは魔力の守りを失っていたのか」

「もしかしたらウーゴットはこのドラゴンを操ろうとしていたのかな」

「かもな、でも失敗したんだ」


 鎮也は魔法のカバンから聖雷剣シリアル332竜交渉剣(ドラゴン・パルレ)を取り出した。ウーゴットはこれでドラゴンもどきを操っていたが、使いこなせばこの成竜だってテイムできただろう。


「しかし、ウーゴットはどうやって魔道具を取り付けられたのでしょうが、屋敷にいた戦力程度ではこのドラゴンを捕らえることは不可能です」

「同感」


 いったいどんな裏技を使ったのか、聖雷剣を持っていたとしてもウーゴットの配下は誰一人使えこなせてはいなかった、普通にドラゴンに近づけば返り討ちにあって終わる。

 不思議なことが多すぎる。


「シズヤさん、ドラゴンの口に何か挟まってます」

「ん?」


 トレイシアが発見した物は牙の間から僅かに見える黒い石のようなモノであった。


「何だこれ」


 鎮也が鑑定眼でその黒い石を見たが、その結果は鎮也をも驚かせるほどの物だった。


「――――――――――――――――――――――

【名称】パラスライト鉱石

【分類】鉱物  【レア度】☆☆☆3

【補足】この世界の鉱物ではない。

―――――――――――――――――――――――」


 データ量が少ないのは、これが完成した道具ではなく破片だから素材の結果しか出ない、それは分かるが、補足のこの世界の鉱物ではないとはいったい。


「マスター、取り出しますか」

「それしかないだろ」


 咲耶とレオフィーナが上下に分かれて、強引にドラゴンの口をこじ開けた。


「これは、腕ですか」


 開いた口の中を鎮也とトレイシアが覗き込む、鎮也はこの程度なれているが、トレイシアも鋭い牙が並んでいる口の中に平気な顔で頭を突っ込んだ。


 そこにあったのは黒い石でできた腕であった、石像の欠片のようだ。折れた断面が牙の隙間から外に出ていたのだ。


 鎮也が石像の腕を牙の隙間から引き抜こうとするがピッタリとはまっていてなかなかとれない、力を入れたら壊れそうなので加減が難しい。


「シズヤさん、私が反対を持ちます」

「頼む」


 二人が何とか石像の腕を取り出そうとしていると、わずかにだが、ドラゴンの舌がピクリと動いた。鎮也たちが石像の腕を引っ張ったから動いたのかと思ったが、作業を止めても、ピクリ、ピクリと舌が動いたのだ。

 そして、四人の誰もが気が付かないうちに、ドラゴンの瞳が開いていた。

久しぶりの鑑定眼

久しぶりの新聖剣の登場でした。

次で50話になります。頑張るぞ~!

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