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第48剣『今度はマルチなゴーレム』

「……くん、鎮也くん」


 鎮也は咲耶に肩を揺らされ深い眠りから目を覚ました。


「さくや?」

「ごめんね、本当はもう少し寝かせてあげたかったんだけど、問題が出たの」

「問題?」


 熟睡していた鎮也の頭はまだ完全に覚醒していない、四日徹夜した上での寝起きで思考がまだ回復していなかった。

 そんな鎮也にレオフィーナが回復魔法をかけてくれた。徐々に視界が定まっていくと目の前に優しいシスターの顔があった。


「うっお!」


 驚いた鎮也が飛び起きる。

 そこでようやくトレイシアに膝枕をされていたことに気が付いた。薄い記憶をたどれば後頭部に柔らかいクッションが敷かれていた気がする。


「ここは?」

「洞窟跡の前から移動していませんよ」


 寝る前は何をしていたか、現在位置はトレイシアが寝起きに優しい声で教えてくれた。


「そうだった、依頼の途中だったよな」


 辺りを見回した鎮也が、行方不明になったギルドナイトを探すために触らずの山へとやってきた事を思い出した。

 目を覚めよと、親指で眉間の間を強く押して脳を活性化させようとした。


「マスター体の調子は?」


 回復魔法をかけてくれたレオフィーナが体調を訪ねてくる。


「寝れたおかげでだいぶよくなったよ、うん、膝も違和感無い」


 肩を回してから屈伸をしてみるが、寝る前まであった針が刺さるような痛みが無くなっていた。


「相変わらずの回復力ね、まだ四時間くらしか寝てないよ」

「俺もよく起きられたと思う」


 二日くらいは連続で寝られる自信があった。それがたった四時間で眠りからさめられたのは回復魔法とチートの体のおかげだろう。眠気はあるが体力は徹夜一日目くらいまでは回復していた。


 予想以上に小睡眠で回復できた、鎮也はこれならこれから徹夜での作業を増やせば作業の効率も上がると考えたのだが。


「回復が早いのがわかったからって、徹夜を増やそうなんて考えないの」

「え、う、そんなこと考えてないぞ」


 ばっちり咲耶さんに考えが読まれていた。


「鎮也くん、私に嘘は通じないの知ってるよね」

「はい、申し訳ありませんでした」


 当然知っている。隠し事はできても口から出した嘘は見破られてしまう。主権限で咲耶の嘘探知スキルを鎮也のみ除外することもできるが、鎮也はそれをよしとせず、咲耶にもレオフィーナにも一度も主権限を発動させたことはない。


「それで問題ってなんだ」


 一目見れば咲耶たちが洞窟を掘り返していたことは分かる。何か想定外の物を掘り起こしたのであろうか。


「洞窟の奥で、対魔法結界が作動してるの」

「もしかしてウーゴットの隠し資産を掘り当てた」


 対魔法結界はウーゴットの屋敷でも使用されていた、資産の隠し場所に侵入者防止のために仕掛けられていてもおかしくない。


「まだ確認してないけど、その可能性もあるかも、ただ」

「ああ、土の人形が使えないか」

「そうなの、どうしよっか」


 掘るだけなら簡単なのだが、鎮也は咲耶たちに案内で対魔法結界の場所に向かう。


「この岩の下か」


 対魔法結界の効果が及ばない場所は咲耶が片付けてくれていたので、結界の効果が及ぶ地点だけが岩が積み上げられた山になっている。


「トルナードで粉砕するわけにもいかないよな」

「それをやってよろしいなら、私がオジロで切り裂いています」

「だよな」


 下に何が埋まっているかわからないのに、破壊はそれを押しつぶしてしまいそうだから、あまりやりたくは無い、やるとしても最終手段だ。


「シズヤさんは瞬間移動を使えるのですよね」

「ああ、使えるぞ」


 聖剣鍛冶師を憧れていたトレイシアは、鎮也の登場する書物はかなりの数を読破しており、有名所のスキルはおおよそ把握していた。


「街に戻って掘削のできる魔道具を買ってくるのはどうでしょうか、魔道具なら対魔法結界の影響も受けませんし」

「ああ、もう会場には魔道具は無いと思うな」


 苦い思いをした咲耶が疲れた表情になる。トレイシアはオークション会場の魔道具が買い占められている事を知らなかった。


「魔道具なら私たちが買い占めた物が屋敷に残っているはずですね」

「オークション会の魔道具を買い占めたのですか!?」


 レフティアの歴史史上初の出来事であろう、トレイシアが驚くのも無理はない。


「おや、シアでも知らない事がありましたか」

「オークション会での出来事なんてどの書物にも載ってませんよ」


 物知りのトレイシアに情報で勝ったと胸をはるレオフィーナにそれは違うだろとツッコミは入れない。


「掘削系の魔道具なら何個かあったな、でも屋敷の修復に使えそうだからほとんどゴーレムの素材に使っちまった。ああ、ゴーレム自体を呼ばいいんだ」

「その手があたね」


 咲耶も手を叩いて鎮也のアイディアを褒める。


 鎮也の連続徹夜の切っ掛けになったゴーレム改修、まさかこんな所で役にたつとは、あのゴーレムは文字通り魔道具の固まり対魔法結界には影響されない。


「ちょっと取ってくるぞ」


 鎮也は透徹を使いアリアの待つ森の屋敷へ瞬間移動した。






 屋敷の庭に降り立った鎮也は瞬間移動した場所を間違えたのかと錯覚してしまった。


「間違ってないよな」


 数日ぶりに戻ってきた屋敷は、廃墟ではなく、ちゃんとした屋敷になっていたのだ、壁にあった穴は塞がり、背の高い雑草だらけだった庭もきれいに刈り取られている。


「シズヤ様、お帰りなさいませ」


 屋敷から出てきた出迎えのメイドのアリアを見て、鎮也はここが自分の屋敷で間違いないと確認できた。


「たった数日で見違えたな」

「お褒めの言葉ありがとうございます。あの子たちが頑張ってくれたので」


 あの子たちとは、鎮也の作ったマルチゴーレム二体のことだ、屋敷の修復を終えたので、今は外壁の修復を行っていた。


「自分で作っておいてなんだけど、優秀だな」


 創造主に褒められたことに気が付いた二機は鎮也に会釈する。


「リィリィ」

「ロォロォ」


 ファンタジー世界のゴーレムというより、SFアニメに出てきそうなホワイトカラーの流線型五等身のロボット、二体と呼ぶより二機と呼んだ方がしっくりくる。


「それでシズヤ様、本日お一人で戻られた要件は」


 優秀なメイドのアリアはいつもそばを離れない咲耶とレオフィーナがいない事から、鎮也が休みに帰ってきたわけでないことは理解してくれた。


「あいつらの力が必要になったんだ、どっちか連れて行っていいか」

「シズヤ様のお役に立てるならどうぞ、屋敷の防衛はお任せください」


 庭の隅に積み上げられているきれいに解体処理されている魔物の素材の山、きっとこの屋敷を襲撃してきた魔物の成れの果てだろう。防衛を任せろというのは誇張ではなく、実際に経験して大丈夫との確信を得ての発言だった。


「助かる」


 力が必要だと言われたゴーレムたちは鎮也の前に直立不動で整列する。

 何か両機とも自分を選んで欲しいとオーラを漂わせている気が鎮也にはした。


 白いボディに赤いラインの入った一号機リィリィ。元々は帝国製の警備用ゴーレムを鎮也が購入し屋敷の警備をさせていた。過去の時代にウーゴットに大破させられたのを修復した機体、元が警備用であったため戦闘能力が高めになっている。


 同じく白いボディに青いラインの入った二号機ロォロォ。一号機リィリィを改修して把握したゴーレム知識を元に鎮也が魔道具の山から作り出した機体、戦闘力はリィリィよりも劣るが全身に仕込んだ魔道具のおかげで、多彩な機能を備えているスペシャルな作業用。


 今回やってほしいことは洞窟の岩の除去、機能面から選ぶと。


「ロロォ、一緒にきてくれ」

「ロォロォ!」


 二号機が選ばれたことに歓喜し、選ばれなかった一号機が落ち込んだ。


「リィリィ~」

「そう落ち込むな、次の機会にお前を呼んでやるから」

「リィリィ!」


 鎮也に励まされ、気持ちを持ち直したリリィは外壁の修復へと戻っていった、戦闘用だとしてもまったく修復用の魔道具を備えていないわけでない、効率は落ちるがリリィ一機だけでも修復作業は継続できる。


「じゃ悪いけどすぐに戻るわ」

「お気をつけて、それとシズヤ様」

「なんだ?」

「トレイシアさんと言う、新しいお仲間の方を近日中に紹介していただけると嬉しいです」

「もう、知ってたのね」


 馬車作りの時、レオフィーナが一度この屋敷に戻ってきている。話を聞いたとしたらその時しかないが、あの時はまだ正式な仲間になっていなかったはずなのだが。

 レオフィーナの根回しの良さは鎮也のためなのか、お約束を叶えるためなのか、そのどちらなのか鎮也は聞かない方が精神的にいいと判断した。


「今回の仕事が終わったら紹介するよ」

「よろしくお願いします」


 鎮也はロロォを連れ、アリアに見送れて森の屋敷をあとにした。






「これがゴーレムなのですか?」


 戻ってきた鎮也の制作したゴーレムを見たトレイシアの第一声がそれであった。


「私は帝国製をはじめ近隣諸国が発行しているゴーレムの図鑑やカタログは殆ど目を通したつもりでしたが、これは見たことがありません」


 だろうな、外見は日本のアニメ文化がベースになっているのだから。


「マスターの故郷では、こっちのデザインが多かったんですよ」


 間違ってはいないが、間違ってる。


「そうなんですか、機能よりもデザインを優先しているのでしょうか、足は短くした方が安定しそうですが、人型により近づけるのは私にはわからない高度な理論が存在しているのでしょうか?」


 SF的デザインにトレイシアが思考をはじめてしまった。

 トレイシアにまじまじと観察されたロォロォは勝手にポーズをとり始めた。動作がどこか男臭く感じられる。反対に屋敷に残してきたリィリィは女性のような仕草をしていた。


 知能回路に性別が入力されていたのであろうか。


「鎮也くん、そろそろ作業を再開しない」

「そうだな」


 鎮也たちはあらためて対魔法結界が張られている場所へと移動した。


「ロロォ、この岩を丁寧にどかして、下に何が埋まっているかわからないから慎重にな」

「ロォロォ」


 任せろとばかりにロロォは、岩に手をかけると、腕の外部パーツが開きアンテナのような細い棒が出てくる。

 そこから電波のような物が放出されると岩はスポンジのような軽さになり、砂利一粒落とすことなく岩は持ち上げた。


「鎮也くん、これって重力を操ってない」

「正確には磁力だな、振れたものを磁力体にして反発を利用して持ち上げてる。とても便利な道具だぞ」

「あのアンテナは、使用目的が分からなくて、店に捨て値で売られていたやつですね」


 購入したレオフィーナも魔道具がどんなものであったか把握していなかった。

 鎮也の鑑定眼が無ければ制作者以外誰も使い方がわからなかったかもしれない。


「今は機能説明より、岩の下だろ」


 とんでもない技術をさらりと流す鎮也は、ロロォに慎重に岩をどかさせる。


 対魔法結界の装置でも出てくるかと思っていたが、その下には鎮也たちの想像を超えるモノが埋まっていた。


「マスターこれは!?」


 普段冷静で強い感情をなかなか表に出さないレオフィーナが驚きの声をあげる。


「おいおい、嘘だろ」


 鎮也も寝不足で自分の目が錯覚を起こしたのではないかと疑ってしまった。


「なんでコイツがこんな街に近い山の中にいるんだよ」


 鎮也たちが掘り出したモノ、それはこの世界で最強の種族であるドラゴンの死骸であった。それもウーゴットの屋敷いたドラゴンもどきではなく、立派に成長した成竜である。

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