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第27剣『延長戦と戦利品』

 レフティアの街を震撼させたドラゴンが敗れ去る。それもただの一撃で。


「ド、ドラゴンだぞ、それを人間が一撃で倒すなんて、非常識すぎる」


 今度こそ本当に腰を抜かしたウーゴットはその場から動けなくなる。


「大型で何百年も生きたドラゴンならともかく、こんなドラゴン擬き、昔は倒せる冒険者はたくさんいただろ」


 ドラゴン擬き、外見はドラゴンに酷似しているが、どちらかと言えばオオトカゲに近い魔物だ。翼があるだけで本物のドラゴンとの差は天と地ほどもある。


 鎮也は鑑定眼を発動させた。


「――――――――――――――――――――――

 聖雷剣シリーズ シリアル332

【名称】「ドラゴン・パルレ(灰色化)」

【和名】「竜交渉剣」

【製作者】星尾鎮也

【使い手】未登録

【分類】短剣    【レア度】☆☆☆☆★(5-1)

【長さ】30センチ  【重さ】0.4キロ

【聖剣核】ガーネット

【スキル】

※封印中『雷魔法(中)』……使い手が雷魔法を扱えるようにする(効果:中)

『テイム(ドラゴン)』…使い手にドラゴン限定のテイムスキルを授ける。

『調教』…………………テイムしたドラゴンを調教できる。

『貫通』…………………ダガー貫通力が上がる。

【補足】

 テイムダガーシリーズ。ドラゴンのテイムに特化した杭型ダガー。突き刺したドラゴンを使用者の実力にもよるがかなりの確立でテイムできる。またテイムしたドラゴンを調教可能。初期のテイムダガーではドラゴンの皮膚に刺さらなかった失敗を生かして貫通スキルを追加した。

 使い手は未登録であり、現在の所持者がふさわしくないためレア度がマイナス1、スキルの効果も軽減され灰色化している。

――――――――――――――――――――――」


竜交渉剣(ドラゴン・パルレ)を使ってテイムできたのがドラゴン擬きって、とことん使えこなしてないな、お前にその剣を持つ資格はない」


 この剣を使いこなせば、テイムの才能がある者なら古代竜ですら交渉(テイム)できるかもしれないのに、ウーゴットは普通のドラゴンすら交渉できなかったのだろう。


「返してもらうぞ」


 動けなくなっているウーゴットへ鎮也が歩みよると、ウーゴットの懐がかすかに光り、抜けていた腰を立たせ逃げ出した。今の今まで演技ではなく完全に腰を抜かしていたはず、それが信じられないほどの速さで回復したのだ。


「勝ち誇るにはまだ早いぜ!」


 ウーゴットは机のあった羽ペンを横に倒すと、床から鉄の棒が何本も飛び出し鎮也とウーゴットの間に鉄柵を作り上げた。


「俺にはまだ力は残っている。覚えていろ、この復讐は必ずしてやる!」


 鉄柵に続いて床もスライドして開く、二階への階段を隠していたのと似たような魔導装置なのだろう。どこかに続く下り階段が顔を見せた。

 逃げるための抜け道まで金をかけて作られている。

 これだけ組織をボロボロにされても立て直す自信があるのだろうか、復讐すると宣言してきた。その自信の根拠が何かは鎮也にはわからない。だが、そんなことは許しはしない。


「勘違いしてるぞ」

「勘違いだと?」

「そう、復讐しているのは私たちよ」


 もうウーゴットの後ろには誰もいないはずなのに、背後から女性の声が聞こえウーゴットの顔が恐怖にひきつる。


 逃げ道を塞ぐために、壁に刺さっていた桜咲耶が人の姿に戻りウーゴットの背後に回り込んでいた。ずるがしこさだけは人一倍のウーゴット、何か企んでいるのではと保険の意味をこめて鎮也がウーゴットの背後に咲耶を送っていたのだ。


「鎮也くんの剣、返してもらうね」


 鋭い手刀を振り下ろし、竜交渉剣を離させ取り返す。


「ウガ!」


 手加減無しの手刀だ、骨に異常が出たのだろう。


「それとこっちのも返してね」


 咲耶はさらにウーゴットの懐に手を入れるともう一本の短剣を取り上げた。

 ウーゴットの回復力の秘密にして普通の人間に百二十年の時を生き長らえさせた秘密。


「そ、それは、返せ」

「何が返せだ、そいつはもともと俺たちの剣だ」


 鎮也は鉄柵を切り裂いき、レオフィーナを人へと戻し三人で取り囲む。

 腕を抱えながらヘラヘラとした笑みを浮かべ鎮也を見返してくる。


「なんだ、もう抵抗もできない男を三人でいたぶろうってか、お前もオレと同じ屑になったんだな」

「マスター、この男燃やしますか」


 対魔法結界内のはずなのにレオフィーナの腕には怒りの赤い炎が立ちのぼる。


「その必要はないよレオナ」

「どうしてですか、まさか見逃すのですか?」


 レオフィーナが信じられないと鎮也へ振り返り抗議してくるが、鎮也にはこれからウーゴットに起こる現象が予想できたためわざわざ手を汚す必要がないと判断したのだ。


「レオナが手を煩わせる必要がないだけだ。ウーゴット聞かせろ、百二十年前に屋敷を襲ったのはお前だな」

「そうだ、聖剣に興味をもった盗賊たちに片っ端から声をかけてな」

「残りの聖雷剣はどうした」

「俺が盗めたのは百本くらいだ、盗んだ後に奪い合いがあってな、どこにどれだけ流れたのか襲撃したオレたちすら、わからなかったぜ」


 当時でどこに流れたかもわからない、それが百二十年もたっているのだ探すのはさらに難しくなっているのは間違いない。鎮也の考えを読んだのだろうウーゴットがざまあみろとバカにしたような顔をする。

 その顔がさらにレオフィーナの怒りを強くした。


「貴様ッ!!」

「押さえろ、レオナ」

「しかしマスター」

「そうだ、後二本だけなら場所を知ってるぜ、お前の屋敷いたバカなメイドが氷漬けになってよ、取り出そうとしても取り出せないから魔道具に作り変えてオレが有りがたく有効活用させてもらったぜ」


 ウーゴットは過去の時代、鎮也が屋敷で働いてくれている使用人たちを大事にしていたことを知っていた。


「だからどうした、これから助け出すから関係ないね」

「なんだと」


 さらに挑発しようとしたようだが、アリアのことはすでに知っている。助け出す算段も付けている。

 他にも聞きたい事はあったがどうやら限界のようだ。


「もう終わりの時間だ」

「時間だと、う、がっぁぁぁぁ~~~」


 突如苦しみだすウーゴット。

 予想通りの現象が起きた。ウーゴットが急速に老い出したのだ。髪は完全な白へとそまり抜け落ち、顔の皺はどんどんと深くなっていく。


「これは?」

「咲耶、それ見せて」


 鎮也は咲耶が最後にウーゴットから奪った短剣を受け取り鑑定眼を発動させた。


「――――――――――――――――――――――――

 聖雷剣シリーズ シリアル145

【名称】「ソウリントウ(灰色化)」

【和名】「魂輪刀」

【製作者】星尾鎮也

【使い手】未登録

【分類】短刀    【レア度】☆☆☆☆☆★(6-1)

【長さ】24センチ  【重さ】0.2キロ

【聖剣核】コハク

【スキル】

※封印中『雷魔法(中)』……使い手が雷魔法を扱えるようにする(効果:中)

『身体若返り』…………使い手を若返らせる。

『肉体活性化』…………使い手の衰えた肉体を活性化させる。

『全・身体強化(小)』……使い手の身体能力を強化する(効果:小)

『回復斬(中)』……………剣を刺した相手を回復させる。

【補足】

 スキルの複合で擬似的不老を手に入れることができる。不死ではない。不老に特化したため戦闘能力はレア度6にしては弱い。もともと聖剣鍛冶師鎮也が病弱の友のために制作した剣であったが、友はこの剣の能力は使用せず絆の証として所持し与えられた生をまっとうした。友の死後、製作者である鎮也へと返還されている。

 現在は使い手が未登録であり、所持者がふさわしくないためレア度がマイナス1、スキルの効果も軽減され灰色化している。

――――――――――――――――――――――――――」


「使い手でもないのに、無理やり不老になっていた反動だ」


 ウーゴットはこの魂輪刀(そうりんとう)を使用していたにも関わらず、少しずつ老けていた、そうとう剣に嫌われていたのだろう。


「か、かえせ」


 ミイラのようになった腕を鎮也に伸ばすが、届くことはなく、最後は灰色の砂となって崩れ、レオフィーナが燃やすまでもなく灰となった。

 まったく後味の悪い最後だ。


「悪党が分不相応な力に手を出した結果です、マスターが気にする必要はありませんよ」

「ありがとうレオナ、人を助けるために作った剣で人がこうなるなんてな、作った時は予想もして無かったよ」

「だからこそ、継承させる相手は慎重に選ばないとね」


 剣は剣、意思はあっても殆どの剣は使い手を自分では選べない、その輝きを無くすことのない使い手を選んであげないといけない。


「ああ、それがあいつとの約束でもあるしな」


 鎮也は灰色へと変色してしまった魂輪刀を丁寧に魔法のカバンへとしまった。


「すぐに磨き直して、お前にふさわしい使い手を見つけてやるよ」

「それでマスター、外のトルナードたちと合流しますか?」

「いや、この先も調べてみよう、もしかしたら他の聖雷剣が隠してあるかもしれないし」


 ウーゴットが逃げ込もうとした隠し階段を指す。一階を走り回った時にはこの階段を見つけることは出来なかった、この先は一体どこへつながっているのであろうか。






 六黒をヤマトを外に置いてきた咲耶が素手になってしまったので念のためにと装備させ、階段を下ってみれば、魔導具で封印された鉄の扉を発見する。

 降りた段数から一階よりもさらに下、地下に造られた隠し部屋だとわかる。


「宝物庫って雰囲気だな」

「隠し階段の先にあったんだしその可能性は高いわね」

「よし透徹、頼んだ」


 魔法のカバンが一杯になってきたので、兎の姿のまま鎮也の肩に乗っていた透徹が飛び降り角を放電させて軽く一突き、たったそれだけで封印も施錠も破ってしまう意外にチートな透徹の『解錠』スキル。


「では、お宝とご対面」

「マスターこのような雰囲気の時には背後の石像が動き出して、襲ってくるのがお約束ですね」

「まあいくつかそれっぽい話は心当たりがあるけど」


 ここは狭い隠し階段、背後に石像が置けるほどのスペースは無いし、第一石像自体がない。


「でしたら大岩が転がってくるとか」

「レオナが粉砕してくれていいよ」


 この階段で転がせる程度の岩ならオジロで粉微塵にできる。


「マスターつまりません」


 階段を下りるだけで楽しみを見つけられるのは逆にすごいことだ。


「中で何かしらの仕掛けがあったらレオナに任せるからそれで我慢してくれ」

「中でのお約束、吊り天井とか水攻めですかね」


 水は水路が見当たらないので無理そうだが、吊り天井くらいなら、あのスライドする仕組みを応用すればできそうである。


「レオナ、ここまで一緒にたどり着いた仲間こそが本当の宝だって、お約束もあったよね」

「咲耶、それは古すぎます」

「古すぎって」


 きれいな黒髪を前に垂らしてガクリと落ち込む咲耶さん。古いと言われたことがショックであったようだ。珍しく咲耶がお約束話に参加したのに、レオフィーナによってばっさりと斬られてしまった。お約束には煩い竜の姫。


「鎮也くん」

「頑張ったぞ咲耶、でもお約束の話では無理をするな」

「そうする」

「さて今度こと雑談は終わりにして入るぞ」


 二人がウーゴットの最後でナイーブになりかけた鎮也を気遣い、明るい雰囲気を作ろうとしていることに感謝して、気持ちを切り替える。


 鉄の扉を開けば、中はやはり宝物庫になっていた。

 積み上げられた金塊と大箱に詰め込まれた宝石、魔核の数々。


「これはまた」

「すごい数ね」


 鎮也も咲耶もあまりの輝きに度肝を抜かれてしまった。こんな財宝見たことがない。


「二人とも何を驚いているのです、これはマスターの剣を売り払って稼いだ金ですよ、これでも少なすぎるくらいです」


 レア度4の剣ならば金貨で百五十枚から二百枚くらいで取引されるが、それ以上、レア度5を超える剣は能力次第では天井知らずで値がつくことがある。たしかにレオフィーナの言う通り、ウーゴットが所持していたという百本近くの聖雷剣が売られたなら、こんなものでは済まない。


「ウーゴットは他にもきっと金を隠しているはずです」

「カイザン辺りなら知ってそうね、それでもう確保する準備も整えていると思うわ」


 咲耶は昨日計画の擦り合わせの時、カイザンが慌てて隠した地図のことを思い出した。あの時は気にもしなかったが、もしかしたらウーゴットの隠し倉庫の場所が記されていたのかもしれない。


「それじゃこの金塊も、このまま置いて行ったら」

「間違いなくカイザンか街の重鎮たちに回収されるでしょう、金には名前は書いていませんから惚けられたら終わりですマスター」


 レオフィーナの舌がよくまわる。組織が壊滅した後の資金の山分けはよくある話であり、街の重役たちならその程度やって当然、これもある意味お約束なのかもしれない。


「でもレオナ、三人でこの量の金塊を持ちだすのは無理だよ、鎮也くんの魔法のカバンだって限界があるし」


 魔法のカバンの収納できる枠数は取り戻した聖雷剣でほとんど埋まっている。


「これからのことを考えると、荷物の持ち運び手段も考えないといけないな」


 もし剣を八本以上同時に回収できてしまったら、手で持ち運ばなければならなくなる。運べればいいが、そうでない場合は手詰まりだ。


「まあ、今回は何とかなりそうだから、対策は後日考えよう」

「何とかなるの?」


 咲耶が不思議そうに訪ねてくる。

 積み上げられた金塊はたとえ三十人いたとしても一度には持てない量だ。


「ゲーム時代は無理だったけど、これは現実だ、発想次第ではいろいろな抜け道を使えるだろ」


 鎮也は魔法のカバンから愛用ハンマーの雷蛇鎚ミュルニョルを取りだした。


「少し作業スペースが欲しいから、二人は一旦部屋から出ててくれるか」

「ああ確かに」

「マスターならではの抜け道ですね」


 ハンマーを見た二人は鎮也が何をしようとしているかを理解してくれた。

 二人が部屋の外へ退避したことを確認すると鎮也はミュルニョルの力を解放、スキル『雷電鍛冶』を発動させる。


 ハンマーからほとばしる雷光が置かれていた金塊や宝石に降り注ぐと、磁力を持ったかのように床から反発して浮かび上がって行く。


「そらよ」


 鎮也はさらに強い雷光を放ちながらハンマーを振り下ろすと、金塊は形を保てなくなりドロドロに溶けて一塊りのスライムのようになっていく、黄金のスライムだ。


「そんでもって」


 今度はドロドロにとけたスライムの中に宝石の入った箱ごと投げ入れる。

 スライムは波打ち箱を体内へと飲み込んだ。


「しあげだ」


 箱を飲み込んだ黄金のスライムに向けてもう一度ハンマーを振り下ろせば、柔らかかったスライムが球体へと変化して数秒で固まるとゆっくりと床に降り立った。


「これで完成、完璧だな」


 雷蛇鎚ミュルニョルを腰のベルトに差し込み、確認のために鑑定眼を発動させる。


「―――――――――――――――――

【名称】金の塊(宝石入り)

【製作者】星尾鎮也

【分類】財宝  【レア度】☆☆☆(3)

【直径】200センチ 【重さ】6トン

【核】なし

【スキル】なし

【補足】

 その内胞する金の価格だけでレア度3の評価が付いた金の塊。中には無数の宝石や魔核を取り込んでいる。

――――――――――――――――――」


 鎮也の考えた抜け道、金は形ではなく重さで価値が付くのだから溶かしてくっつけても問題ない、ついでに宝石を詰め込んでも、鎮也ならまた溶かして取り出せる。


「ホントに鎮也くんにしか無理だわ、これは」

「流石はマスターです」


 金の塊は問題なく魔法のカバンへと収まった。


「カバンが満杯になったな」


 魔法のカバンの中身。


「――――――――――――――――

・フレア・エレメントⅡ(灰色化)

・ダブルザッパー(灰色化)

・スネークウェイト(灰色化)

・スケルトダイン(灰色化)

・ソウリントウ(灰色化)

・ドラゴン・パルレ(灰色化)

・金の塊

・帝国製ゴーレム核m8……3個

―――――――――――――――――」


 これでこの屋敷でやることは全てなくなった。


「外のヤマトたちと合流して、このままアリアの解放に向かおう」


 戦闘をしたばかりだが、咲耶もレオフィーナも反対はしなかった。

 カイザンと約束した水源の変りもちゃんと入手できたしアリアの解放はもうすぐ叶う。

次回はメイドのアリアさん解放

奪還した聖剣512/7

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