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第25剣『決戦、中盤戦』

この小説を書いていたら、小学生のころBB戦士のプラモデルを剣のかっこよさで選んできたことを思い出しました。

 三対三の戦い、戦闘用ゴーレム対人。


 普通に考えれば戦闘用ゴーレムの方が圧倒的に有利なのだが、対する人間が普通ではなかった。

 集団戦ではなく、個々に分かれての個人戦を選択した鎮也たち。




「ハァ!」


 真っ先にゴーレムの倒したのはレオフィーナ、光剣で真っ向から自身の三倍以上もあるゴーレムを両断した。

 左右に分かれたゴーレムは地響きを上げながら崩れ落ちる。彼女にとってもっとも苦労させられたことはゴーレムの核を壊さないように力加減をしたことであった。

 崩れた残骸から、無傷の丸い核が転がり落ちる。


「ノルマクリア」




 レオフィーナに続いてゴーレムを撃破したのは鎮也であった。


「『粉砕』」


 トロンバトルナードのスキル『粉砕』昨日今日と各方面で活躍したこのスキルがまた役に立ってくれた。突いた物を粉砕するこのスキルは任意で壊す、壊さないが選択できる。

 鎮也は核以外を粉砕指定したので、粉々になったボディから剥き出しになった核はトロンバトルナードの刃の腹を転がり鎮也の手に収まる。


「こっちもノルマ達成」




 最後に残ったのは咲耶。

 彼女は巨大な敵を一撃で倒す破壊力のある技は持っていなかった。でも、それを補うほどのスピードと技の切れを持っている。

 高速の踏み込みからの居合い斬り、まずは片足を切断して相手のバランスを崩すと、止まることなく舞いをするがのごとく右手、左手、最後はもう片足を斬り飛ばし、反撃の機会をまったく与えずゴーレムをダルマへと作り変えた。

 残ったボディの中心をくり抜き、ゴーレムの核を取り出した。


「やっぱり大型の相手は苦手。ごめん遅れた」


 遅れたと言ってもほんの数秒の差である。

 鎮也は集まった三つの核を魔法のカバンに入れて採取終了。


「な、何なんだ貴様らは、それは帝国の最新のゴーレムだぞ、帝国の正規軍が採用を検討している最強のゴーレムだぞ、それを、それをたったの一撃で」


 一撃で倒しのは鎮也とレオフィーナだけであるが、集中して観察しなければ早すぎた咲耶の連続攻撃は一撃に見えてしまうだろう。


「名乗ったろ冒険団(レギオン)七星剣(セブンセイバーズ)』だ」


 鎮也がハゲた指揮官へ一歩踏み出すと、指揮官が三歩後ろへ逃げ、二歩目を踏み出せば、一八〇度回転して脱兎のごとく逃げ出した。


 屋敷の入り口に体当たりをかまして、中へと転がり込んでいく。


「見事な逃げっぷりだな」


 指揮官逃亡により庭での戦闘は終了した。


「まだ少し隠れているけどね」

「そうだな」


 指揮官の命令を聞かずに逃げ出した者たち、やつらは結界に阻まれ敷地の外には出られず、庭のあちこちに息を殺して隠れている。


「トルナード頼んだ」

「ヤマトもお願いね」


 鎮也と咲耶は突撃剣トロンバトルナードと海軍刀ヤマトを剣獣の姿へと戻す。額に刀のような角を持つ馬と狼が星色の光とともに現れた。


「庭に残った奴らを頼む、その辺りに集めておいてくれ」


 庭に潜んでいるやつらの中に聖雷剣を持っている奴がいるかもしれないので、鎮也は見逃す気などさらさら無い。

 トロンバトルナードとヤマトは剣獣たちの中でも戦闘力に高い二頭である。逃げ出した傭兵崩れなどに負けはしない。


 まかせろと頷いた二頭はさっそく駆け出し、逃げた連中が身を隠している岩などのその鋭い角で突き粉砕していく、あの二頭に任せれば庭は問題ないだろう。


「こっからが本番だな」


 屋敷を見つめる鎮也。


 外に居たのは雑兵であり、こちらの力を図る捨て駒であったのだろう。戦闘が始まっても屋敷の中からは一人も援軍が送られてこなかった。鎮也たちが庭で倒したのは百五十人ほど、まだ半分近くが屋敷に残っている計算だ。


「咲耶頼む」

「まかせて鎮也くん、レオナ今回は譲ってもらうね」

「室内の対人戦です。少し悔しいですがサクヤが適任なのはわかっています」

「ありがとう」


 これはどちらが今日の相棒を決めるかの話し合い、森の時はそれぞれに長所が生かせる場所であったため言い争いになったが、室内など限定された空間内では咲夜の方が威力を発揮することをレオフィーナも理解している。


「次は譲ってもらいます」

「そこは後の交渉かな。それじゃいくよ鎮也くん」

「おう」


 鎮也が咲耶へと手をかざすと、彼女の着物が舞い上がり夜空にきらめく星のような銀色の光を放つ。


「七星剣第二星・神霊刀桜咲耶」


 光が収まると鎮也の手には大太刀が吸い寄せられるように収まり、漆の光沢を放つ咲夜の髪の色と同じ黒い鞘が鎮也のベルトに差し込まれた。


「――――――――――――――――――――――――――

 七星剣第二星

【名称】神霊刀桜咲耶

【製作者】星尾和磨&星尾鎮也

【使い手】星尾鎮也

【分類】大太刀   【レア度】☆☆☆☆☆☆☆(7)

【長さ】128センチ 【重さ】2.6キロ

【聖剣核】咲耶の心

【スキル】

『土魔法(特大)』…土属性の魔法を使い手が使用できるようになる(効果が特大)。

『神斬撃』………神のごとき斬撃を放つ。斬れぬモノなし。斬るものの選択可能。

『剣術』…………この太刀を握った使い手に達人以上の剣の腕を与える。

『嘘探知』………龍神の眼のごとく、感情を持つ相手の嘘を見抜く。

『破損修復』……例え刀身が折れたとしても時間をかければ再生できる。

『擬人化』………神霊刀桜咲耶が少女桜咲耶へと変身する。

【奥義】

『龍神化(封印中)』

【補足】

 曇り一つ無い鏡のような刀身を持つ大太刀。擬人化した姿は鎮也が伯父の部屋で読んだ和風バトル漫画『桜花の祀り』のヒロインであり、伯父和磨が鎮也のために持てる技術のすべてをつぎ込み制作したNPC、それが異世界に渡り生命を得た。

 登場作品では主人公を助けるために身をささげて龍神刀と同化した少女である。

―――――――――――――――――――――――――――」


 スキル『剣術』を持つ桜咲耶は限られた空間内、今回の場合は屋敷の中での戦闘などには無類の強さを発揮する。


「ここからが本番だ」


 中で待ち構えている連中は、外よりも確実に腕が立つはず。そして必ず聖雷剣を装備した幹部も登場するだろう。負ける気はしないが、油断はしないで挑もうと再確認をした鎮也とレオフィーナは屋敷の中へと踏み込んだ。


 すぐに迎撃要の出迎えがくると警戒したが、予想がはずれ一階ホールに敵の姿はなかった。

 いるのは分かっている。こちらを待ち構えるように、ひそめた息遣いがそこかしこから聞こえてくる。


「くせもんだ、であえ、であえ!」


 レオフィーナが突然、時代劇のラストで聞くお代官様のセリフを口にした。


「レオナさん、どうしたんですか?」

「お約束ですよマスター、屋敷へ切り込むときはこのセリフを使えば、ふすまが開いて斬られ役の人たちがゾロゾロと出てくるんですよ」


 うん、いろいろと間違っているレオフィーナ様。それは攻め込まれた悪代官のセリフであって、攻め込む側のセリフではない。時代劇を見たことの無いレオフィーナは盛大な勘違いをしていた。


 まさかこんな所でお約束好きのムシが動き出すとは、彼女なりに隠れている連中を炙り出そうとしてくれているのだろうが、こんなことで出てくるわけがない。

 鎮也はそう思っていたが。


「うそ~」


 ホールに広がるすべての扉が開き構成員たちが続々とホールへ流れ込んできた。

 外にいた雑兵と違い明らかに戦場慣れした雰囲気を持つ連中がレオフィーナの声一つでなだれ込んできた。敵側にしてもまさか攻め込んできた襲撃者がであえ、であえなどと言うとは思っていなかったであろう。

 それに昨日急きょ集められた連中だ、もしかしたら指揮官の声すら覚えてない奴らが多いのかもしれない。


「マスター先に行きます」


 あっけにとられた鎮也よりも一足早くレオフィーナが切り込む、相手が変わっても庭でやったこととやることは変わらない。ウーゴット配下を全て倒して組織を壊滅させる。

 戦場慣れした傭兵だろうが、レオフィーナにとっては大した差はない、防御不可能な光剣で斬り伏せていく。


「おっと」


 鎮也は飛来する矢を居合い抜きで斬り落とす。鞘から引き抜かれた桜咲耶はヤマトよりも長くて肉厚の刀身を持つ、居合いには不向きな形状をしているが、スキル『剣術』の恩恵で不向き程度なら問題なく使用できた。


 それに加えスキル『剣術』は剣を使うためのすべての要素が強化される。剣を振るう筋力も、踏み込むための脚力も、敵の技を見抜く動体視力と直観力もその他もろもろの強化される。


 ゴーレムの手足を斬った斬鉄も思うがまま。

 相手の剣だろうが鎧だろうが、刃が届けば切り裂ける。

 だがそれよりもすごいのは剣速だ、咲耶の流れる舞いの剣に鎮也のチートボディが合わされば、相手が剣を一度振る間に十数回は切り返せる。


「う……」

「あ……」


 悲鳴を上げる時間さえも与えず鎮也は敵を沈めていく。

 傭兵たちの後続がなくなり、今最後の一人をレオフィーナが倒した。


「次に行くぞ」

「了解」


 ホールの敵を倒し終わると、その勢いを殺すことなく奥へと続く廊下へ走り込んだ。


「右は私が」

「じゃ俺は左だな」


 走り込んだのは長い廊下、そこも止まることなく駆け抜けると物陰や隣接する部屋から奇襲を仕掛けられた、先ほどまでは前線で活躍する肉体派であったが、今度は速さを全面に襲ってきた。


 右と左。さっきの簡単な打ち合わせ通りレオフィーナが右の鎮也が左の奇襲を返り討ち、上から降ってきた奇襲には二人同時に吹き飛ばした。

 あけられたドアは素早く確認、気配がないと次の部屋へ。

 ウーゴットはおそらく二階に奥にいると思われるが、もしかしたら聖雷剣を装備したやつらがいるかもしれないとすべての部屋を確認していく。


 こうして一階はほぼ鎮圧、屋敷の広さから突き当りの廊下を曲がれば最奥だろう。


 九十度の廊下を曲がってみれば、そこには庭から逃げたハゲの指揮官が六人ほどのローブ姿の男たちを従え待ち構えていた。ローブの男たちは皆、オルゴールのような小さな箱を抱えている。


「もうここまで侵入してくるとはな、だか丁度いいここで貴様らを殺してやる」


 先程は情けない姿で逃げ出したハゲ指揮官が奥の窓から差し込む太陽光をキラリと反射させ強気でいる。

 わずか数十分の間に何を画策したのか、何故強気に戻れたのだろうか、ローブの男たちは魔法使い系のようだが、この対魔法結界の中では役にたたないだろう。


「強気の原因は、あの小箱か」


 鎮也は鑑定眼を発動させる。


「――――――――――――――――――

【名称】魔毒吹きの小箱

【製作者】ケヌマ・カバ

【分類】暗器  【レア度】☆☆(2)

【大きさ】60センチ 【重さ】0.6キロ

【魔導核】魔核C級

【スキル】

『毒噴射』……致死性の高い魔毒を噴き出す。

【補足】

 贈り物の小箱などに偽装して暗殺対象に送られる暗器。知らずに開けてしまえば高確率で毒を浴びてしまうだろう。

―――――――――――――――――――」


「レオナ毒だ!」


 本来なら暗殺用に道具を堂々と目の前で使おうとしている。

 だが数をそろえればそれなりの威力は発揮するであろう。


「よく気付いたがもう遅い!」


 ローブの男たちが一斉に小箱を開け魔毒の煙が噴射される、同時に指揮官が奥の窓を叩き割り、風が鎮也たちめがけて吹き込んできた。


 計六箱から噴き出された魔毒の煙は風下になった廊下一杯にいろがり、鎮也たちは逃げ道もなく飲み込まれる。


「や、やったぞ、このオレがあの化け物どもを退治したんだ!!」


 大きな口をあけて馬鹿笑いをした指揮官。


「何がそんなにおかしい?」


 殺したはずの鎮也の声が聞こえて固まる指揮官。そして煙の中より六本の投擲剣が煙を切り裂き飛来して、小箱を全て破壊した後、ローブの男たちも打倒していく。


「ハ?」


 笑いが止まる。


 続いて煙の中から角を持つ白いウサギが飛び出してきて、指揮官に体当たりをする。

 小動物とは思えない、重量感のある鈍いを音をさせ指揮官を割れた窓の外へと吹き飛ばした。


「よくやった透徹、それにしても少し驚いたな」

「風の通りまでも計算した罠、思ったよりも優秀な指揮官だったのですかね」

「はじめて足を止められたな」


 鎮也とレオフィーナは何事もなかったように魔毒の煙の中から無事に脱出する。


 毒に侵された様子は一切ない。

 種明かしをすれば、六黒のスキル『魔法破壊』を利用して魔毒その物を破壊した鎮也に、オジロのスキル『破邪』で魔毒を浄化できるレオフィーナには全く無害な罠であったのだ。


 六本に分離してローブの男たちを倒した六黒は一本に戻り鎮也の手に帰ってくる。兎の剣獣の姿をした透徹はそのまま鎮也の足元へ駆け寄ってきて、ほめてほめてと鼻をヒクヒクさせた。


「ナイスタックルだったぞ」


 鎮也のほめ言葉にうれしさをバク宙で表現した。


「マスター、ここが屋敷の端のようです」

「そうか一階の制圧も完了だな」


 残すは二階のみ。


「ですが二階に上がる階段がどこにも見当たりません」


 取りこぼしが無いようすべての部屋を確認してきたが、入り口からここまでそれらしき階段は見かけなかった、これだけ大きな屋敷だ、階段もそれなりのサイズのはずだ。

 考えられる答えは一つだけ。


「隠してあるんだろ、無駄に金を持っているそうだからな」


 聖雷剣を売りとばした金を。


「この屋敷の存在自体が不快です」


 盗まれた宝で立てられた豪邸、盗まれた側からしたらたまったもんじゃない。


「透徹、頼んだ」


 鎮也は足元にいる白兎に二階へ向かう階段探しをお願いした。五匹の剣獣のなかで一番小さい体の透徹が大きく頷くと長い耳をピンと伸ばし鎮也たちを先導して歩きだした。

次回はいよいよ決戦決着の予定です。

文字数が多くなったら分割するかもしれません。

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