第三話 裸足、お祭り、足の臭い
今日は近所の神社で夏祭りが催されている。
そこで澄香はクラスメイト三人とお祭りを回る約束をしていた。
「これでよし」
澄香は青色の浴衣を着るとリビングへと向かう。
お茶を淹れていたレイヤーボブの母、加美美香が浴衣を着た澄香に気付き声をかける。
「あら浴衣。お祭りに行くの?」
「うん、クラスの子達と約束してね」
浴衣の袖を持って腕を広げて見せる澄香。
それを聞いて黙っていなかったのは母のお茶を待っていた文香だった。
「え!? お姉ちゃんお祭り行くの!? やめてよ!」
「なんでよ!」
連れて行けと言われるでもなく、やめてよと言われて思わず強く言い返す澄香。
そんな澄香に文香が言い返して来る。
「お姉ちゃんの裸足見られるの恥ずかしい!」
そう、浴衣という事はつまり裸足で下駄を履き外へ出ると言うことである。文香の中では澄香の足からは常に芳しい臭いが放たれていると言う認識なのだ。
しかしそこは常識のある澄香。事前にシャワーを浴び全身からは石鹸の香りが漂っている。
「ちゃんとシャワー浴びたから大丈夫よ!」
しかしそんな健気な澄香にまさかの伏兵が現れる。
「お姉ちゃんの足、ちょっと臭いもんねぇ」
お茶の入った湯呑みを文香に渡しながらの母からの思わぬ追い討ち。しかしそれは同時に文香への援護射撃となりそしてとどめを刺される。
「ちょっとじゃないよ! めちゃ臭だよ!」
「言いたい放題ね…」
母と文香に死んだ目で視線を送る澄香。
そして気付く。仲良く並んでお茶を飲む母と文香の裸足。文香はもちろんのこと、母の裸足もムレムレで芳しい芳香を放っていたのだ。
澄香はポツリと呟く。
「母よ…あなたもか…」
お祭りの神社ではクラスメイト三人が来るのを待っていた。
ショートカットの藍色の浴衣を着た佐藤藍那、前髪ぱっつんのマッシュボブ桃色の膝までの丈の浴衣を着た伊藤桃、この二人は澄香の小学一年生の頃からの幼馴染だ。
そしてもう一人はクラスメイトで、藍那と桃の中学からの友人である三つ編みおさげにメガネをかけて光らせる深緑色の浴衣を着た斉藤ゆりえ。
「澄香おっそい!」
少し苛つきながら下駄の足を鳴らす藍那を桃が宥めるように言う。
「まあまあ。女の子には準備が必要だから」
「ちょ…それじゃあたしは女の子じゃないみたい…」そんな藍那の言葉に被せるように、「あ、来たよー!」と、澄香の姿を見つけた桃が言う。
「おい!」
短く鋭くつっこむ藍那だったがすでに視線は三人に向かって来る澄香へと向けられていた。
「ごめーん! お待たせー!」
ポテポテと走って来る澄香。そして三人の視線は澄香の足元に釘付けになり、三人が三人同じ事を頭に思い浮かべるのであった。
(浴衣に…ローファー!?)
そう、澄香は文香に学生ローファーを履かされ家から送り出されたのだ。
「ほら! 早く行こう! 人混みに紛れちゃえばバレない!」
半ばヤケクソ気味にお祭り会場へと早歩きしていく澄香。
困惑する藍那と桃だったが、ゆりえはその浴衣ローファーの澄香を見て、「ほほう」とメガネを光らせていた。
四人は当たらないくじを引き、金魚掬いをし、わたあめを食べ、そして足元がローファーなことも忘れ目一杯お祭りを楽しみ帰りの時間となる。
「楽しかったねー」
澄香がとどめのたこ焼きを食べ終わると、前をトテトテと歩いていた桃が、「あたっ!」と声を上げてすっ転ぶ。
それを見ていた藍那が、「何してんの」と言いながら近付くと藍那も「石っ!?」と叫びすっ転ぶ。
そしてたこ焼きの舟をゴミ箱に捨てた澄香が転んだ二人に近付くと、「缶!?」と大声で叫び尻もちをつきすっ転んだ。
「いたた…二人とも大丈夫…?」
澄香が腰の辺りを摩りながら両脇に倒れた藍那と桃を見る。そしてそのまま自分の足元へと視線を滑らせると履いていたはずのローファーが脱げ、ムレムレの裸足が転んだ藍那と桃の目の前にこんばんはしていた。
「くっさ!」
「澄香ちゃんの足くさーい!」
ローファーに裸足を封印したが故の悲劇に、藍那と桃は鼻を押さえ悶絶しながら逃げ出し、澄香は尻もちをついたまま恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にする。
しかしそんな澄香のムレムレ真っ赤な足裏を見てゆりえだけは「これは…」と、メガネを光らせていた。
そして帰り際、桃が頬を赤くしてこそっと呟いた。
「澄香ちゃん、パンツ履いてなかった」
その言葉を聞き藍那とゆりえも顔を赤くして、「マジで!?」と藍那が、「ふおお!」とゆりえが言いながら高速で澄香の方へと振り向いた。
澄香は耳まで真っ赤にして浴衣の上か股を押さえるのだった。




