第十一話 学校での日常
ーそのいちー
ゆりえ「王様が競馬を開催しました。二人の騎士が自分の自慢の速い馬を連れてきます。しかし王様の気まぐれで、負けた方に褒美を渡すことに。このままではどちらもゴールの前で止まります。どうすればいいでしょうか?」
澄香「えー…」
桃「うーん…自分の馬に澄香ちゃんの足の臭いを嗅がせる…?」
澄香「だった桃の足でもいいでしょ!(臭いんだから)」
藍那「何言ってんの。こんなの簡単じゃん!」
桃「え?藍ちゃんわかった!?」
藍那「相手の馬を馬刺しにして食べちゃえば、不戦勝じゃん?」
澄香「いやいや…勝っちゃいけないんだから不戦敗だよ」
藍那「じゃあ、自分の馬を食べちゃおう!」
澄香「でもそれだと相手も自分の馬を食べるんじゃない?」
桃「馬刺しって美味しいよねー…いとこのお家で食べてほっぺた落ちちゃった」
ゆりえ「食べたことないなー熊本県が有名だよねー」
藍那「うまと言えばこの前、限定販売の『うまうまスティックお味噌味』食べたんだけどさー」
澄香「どうだった?あれ、あたしも気になってたんだよ」
藍那「美味しかったよ。田楽ぽい味!」
ゆりえ「お腹空いてきた…帰りにスコアバーガー寄ってかない?」
桃「いこいこー!」
いつの間にか話が変わるあるある。
ーそのにー
ある日の学校。澄香達は中学時代の話をしていた。
「そう言えばあんた達って、中学の時に知り合ったのよね?」
澄香が三人を見回す。
「そそ、あたしが藍と桃に、なんか地元の友達にちょっと似てるって言ったら、なんか友達になってた」
ゆりえが言いながらちょっと自慢そうに胸を張る。
「2年の時だったよね。澄香とクラス離れちゃってさ、あたしと桃が同じクラスで」
遠い昔のような眼差しで窓の外を見る藍那。その横顔には哀愁が漂っている。
「2年前の話なのに、なんでそんなおばあちゃんみたいな懐かしみ方してんの…」
「いやほら、あたしら中学ではちょっと有名だったじゃん?」
自慢げに言う藍那にゆりえも続いて、
「そうそう! ふじさんトリオ!」
と、これまた自慢げに言う。
「そして今、ふじさん(富士山)のてっぺんに頂くのが…」藍那は少しため、大きく息を吸い込み、そして力強く言う。「加美(神)澄香!」
ババーンと紹介するように両手で澄香を煽る。しかし澄香は冷たく言い放つ。
「やめて…おこがましいから」
えー…と残念そうに言う藍那。
「って言うか、何よそのふじさんトリオって」
澄香のその言葉に驚愕する三人。目を丸くして澄香を見て、そして三人顔を合わせる。
そして藍那が力説する。
「2年前、中学校舎の2階で話題を席巻したあのふじさんトリオをご存知ない!?」
「佐藤、伊藤、斉藤の『藤』が三つでふじさんトリオ!」
桃も必死で補足する。しかし澄香は冷徹に事実を告げた。
「あたし、1年からずっと3階だったから知らない」
心に冷たい風が吹き荒ぶ、ゆりえ、藍那、桃。そこには絶対に埋められない格差(階差)が存在していた。
「で?その時の2階で何があったの」
一応聞いてあげることにした天上人の澄香。ぱあっと顔を明るくしたゆりえが説明を始める。
「いやあ、あの日体育があってさ!足が蒸れるだろうと思って替えの靴下持ってってたの!そんで体育終わって、校舎入る前に履き替えたんだけどさ!」
「あたしとゆりちゃんがそこに履き替えた靴下置き忘れちゃって」
話の雲行きが怪しくなり、段々と澄香の表情も曇っていく。
「それを見つけた先生が、二人の靴下を鼻をつまみながら持ってきてさ!あたしまでとばっちりよ!」
藍那は両手を横に広げ、やれやれと言った感じに首を振る。
「先生が靴下を持って廊下を歩いてる時に、あたし達の靴下の臭いが他の教室にも漂って大騒ぎになったよねー」
両手をほっぺにつけモジモジしながら照れくさそうに、でもなぜか嬉しそうに言う桃。
「まあ、そのおかげでふじさんトリオはあの1年間、2階では知らない者がいなかったんだから怪我の巧妙だよね」
藍那のその言葉に、だねー、と同意し三人で笑っているのを見ながら澄香はつくづく思うのであった。
(あの時別のクラスで良かった…)




