⑦ 共通理解
「まあ、雪村君の場合は、言葉にしなくとも、考えるだけで、超自然的な現象を起こせる訳ですから、むしろ私より、一枚上手というか、タチが悪いですけどね?」
最後にイエスはそう言って、話を締めくくった。
雪村はもう、とっくの昔に、反論を放棄していた。
本人が言うように、言葉を使ったら、イエス・キリストに勝てる者など、この三次元世界には居ないのだ。多分、あのソクラテスでさえ……。
そんな事を考えている雪村を他所にして、サン・ジェルマンが話し始めた。
「さて、皆さん。本日の本題のマヤ文明の暦の件ですが……」
皆が伯爵に注目する。
「今年の12月21日辺りでこの世界が終わると、一説には言われております。今まさに、イエス先生がおっしゃったように、世界の終わりを信じる、若しくは待望するような人々が増えれば、良くない事が起きる確率も高まるというものでしょう」
「破滅のイメージを打ち消すような出来事が、人々の目の前で起きればいいのよねえ?」
そう言ったのは、雪子だった。
「その通りです。ただし、我々の活動は、おおっぴらには出来ません」
「見られた後で、記憶を消すとか?……ああ、それだと、プラスのイメージも消えちゃうのか?」
「幸福なイメージを残し、目の前で起こった出来事の記憶だけを消す……コレは中々至難のワザです。しかし、ソクラテス先生と、イエス先生が揃った今ならば、実現できそうな気がします」
「……まあ、私の得意な分野ですね。」
イエスは即答した。
「それにコレは、昔、シュタイナー先生から教わったのですが……我々の真の敵"黒い顔の主"は、"傲慢の霊"ルシファーと"物質主義の霊"アフマリンで成り立っているらしいのです」
「何だかますます、厨二病っぽくなって来たわね?」
雪子が、不謹慎な事を言った。
ソレには構わず、伯爵は続ける。
「ルシファーは、"努力すれば人間の限界を超え、霊的能力を得られる"と、ニンゲンをそそのかす者。アフマリンは逆に、"精神と五感の領域だけを信じ、霊的な面を拒む"ようにニンゲンに仕向ける者……そう言っていました」
「……つまり、程々に霊的な世界とコンタクトを取る事は、良い事なのだろう?」
ソクラテスが確認するように、そう言ってサン・ジェルマンを見た。
「……はい。正に肝心なのは、その点なのです」
伯爵は頷いて見せた。




