⑤ 彼の心情
「それでも先生は、ニンゲンの世界を守ろうと、尽力を続けた……」
と、サン・ジェルマンは語る。
「仕方の無い事です。私自身、この世に、物理的な肉体を持ったニンゲンとして、産まれて来ましたから……ソコに何か意味が有ると、信じたいのです。何しろ、信じる者は救われると、私自身が、皆に説いていますからね?」
と、笑顔のイエス・キリストは答えた。
「多くの一人一人のニンゲンは、善人なのに、権力者になると、皆どうしてあんなに、腐ってしまうのかしら?」
京子がふと、呟いた。
その場に居た皆が、黙り込んでしまった。
「まあ、とにかく、今夜はもう、遅い時間ですから、お互いの顔見せだけで……いずれ近いうちに、また、会合の機会を設けましょう」
最後にサン・ジェルマンがそう言って、その場はお開きとなった。
雪村は「それでは先生、いずれ、また」と言って、瞬時にその場から消え失せた。イエスは地下のゲストルームに戻り、後には、伯爵と京子だけが残った。
「いよいよ、始まるのね?」
「ええ、モンダイの日付は12月21日ですが、それまでも毎日、油断しないようにしましょう」
そして1月15日の午前10時。
久しぶりに、チーム・サン・ジェルマンは、名護屋テレビ塔の、亜空間レストランに集合した。
その内訳は、サン・ジャルマン伯爵、その内縁の妻の村田京子。伯爵の助手の杉浦鷹志、その妻の由理子。その姉の真田香子、その兄の真田雪村。その妻の弓子、雪村の時空を超えた姉の雪子。カグヤとパートナーの成雪。ジャンヌ・ダルクと、パートナーでアンドロイドのソラユキ、そしてソクラテスとイエス・キリストである。メジェドは今回も欠席のようだ。
会合を始める前に、サン・ジェルマンからメンバーに、依頼が有った。それは、会話にヘブライ語を使用する、という事だった。その方が、ゲスト二人にとって、都合が良いからである。ヘブライ語が使えない者は、腕輪の同時通訳機能を利用してもらった。
「皆さん、お久しぶりです。今日は、ようこそお集まり頂きました。ご紹介しましょう、こちらにいらっしゃるのが、ソクラテス先生と、イエス・キリスト先生です。お二人のもと居た時代には、約400年程の開きが有りますが、どちらの先生も、至高の思想家です」
「……言っておくが、ワシは妙な手品は披露できんぞ」
ソクラテスはそう言った。
「ワシが得意なのは、問答だけ……例えばこんな感じだ……"神々が眼に見えないという理由で、信じない者は、自分の心も、眼に見えないものである、という事実を忘れている"」




