④ 真田雪村
「雪村君!?」
コレは伯爵の声。
「いつの間に!?」
コレは京子の声だった。
「実は先程、何やら巨大なチカラをキャッチしまして……コレはテレビ塔の危機だと、急いで跳んで来たのですよ。でもまさか、そのチカラの発信元が、イエス・キリスト先生とはね?」
今夜もグレーのパーカーを着た彼は、半ば苦笑しながらそう言った。
「……と、まあ、こんな具合に、彼の行動は予測不能で、その正体も掴めないのですよ」
イエスは、落ち着いて話を続ける。
流石は、世界で一二を争う大教組だ。この程度の事では、ピクリとも動じない。
「アカシックレコードによると、彼の精神には、古代エジプトで太陽神だった、アモン・ラーが宿り、その肉体の性質は、フェニックスに準ずるとされていますね?」
「……そうですね。そう言う事になっています」
何食わぬ顔で答える雪村。
「そんなバケモノは、この三次元世界に、他に存在しないのです」
些か大袈裟とも言える表現をするイエス。
「バケモノだなんて、心外だなあ。ソレを言うなら、先生こそ、数々の奇跡を成し遂げた怪人じゃないですか?」
雪村も負けじと、彼に言い返す。
「私のやって来た事など、大した事は無い。タネも仕掛けも有る、ただの手品ですよ。キミのように、まるまる惑星一つを、別の星系まで一瞬で移動させるなんて荒業、とてもマネできません」
イエスはそう言って、首を横に振った。
「その件に関しては、もうそろそろ許して貰えませんか?目の前で困っている者が居て、自分には、その悩みを解決するチカラが有った。だから、つい……。アレは若気の至りというモノで……反省してますし、二度とやりませんから」
雪村は困った顔になった。
「過去・現在・未来を通じて、超能力者界隈で、ソレはすっかり有名な話です……まったく、キミのように、チカラをセーブする事無く、無闇に使う者が現れるから、アカシックレコードが、三次元世界に対して、閉じられてしまうのですよ」
「大変申し訳無い事です。今後は先生を見習って、チカラは小出しに使用しますよ。約束しますから」
京子は、こんなに叱られている雪村を初めて見た。
それ程に、イエス・キリストの存在は、格上という事なのだろう。
「まあ、まあ、先生、その辺で……」
思わず伯爵が助け船を出した。
「それにしても、先生が死罪にされた経緯は、ソクラテス先生の場合と、とても良く似ていますね?」
「この三次元のニンゲン世界では、真実を語ると、時の為政者にとって不都合になり、罪に問われるのでしょう……実に嘆かわしい事です」




