③ イエス・キリスト
その後イエスは、サン・ジャルマン伯爵によって、無事に2011年の12月1日まで運ばれ、名護屋テレビ塔の地下にある、ゲストルームに案内された。
以来彼は、伯爵から、この未来の世界についての様々な物事をレクチャーされ、現在に至るのである。だから、エレベーターの操作など、造作も無い事だった。
※ 以降の会話は、全てヘブライ語でなされています。しかしながら、作者の執筆の都合上、日本語表記になっている事をお許し下さい。
「イエス先生。こちらは私の内縁の妻、村田京子です。京子さん、ご存知かと思いますが、こちらはイエス・キリスト先生です」
「……はあ、はじめまして」
京子は、その場で立ち上がり、イエスに、おずおずと頭を下げて挨拶した。
何しろ相手は、世界の3分の1を牛耳るという、一大宗教の教祖だ。
緊張するのも、無理も無い話なのである。
因みに残りの3分の2は、仏教徒とイスラム教徒だと言われている。
(所説有り)
「おお、京子さんですか。恐らく貴女は日本人ですね?伯爵も、女性の趣味が良いと見える。まあ、お座りになって……ところでキミは、日ユ同祖論はご存じかな?」
自分も、同じテーブルの座席に陣取りながら、そんな風に、気さくに彼女に話しかけるイエス。そのタイミングで、伯爵も席に着いた。
「ええ、まあ、聞いた事ぐらいは……」
相変わらずドギマギする京子。
「アレは案外、正しいのかもしれませんよ?その証拠に、青森県のヘブライ地方には、私の墓も在りますから……確か亡くなったのは、106歳だったかな?」
イエスは、そんな都市伝説めいた情報を、ニコニコ笑いながら彼女に告げた。
「そうなん……ですね?」
京子は話について行けない。
「それに江戸時代の、天草四郎君も、よくがんばってくれましたね。そうだ、その件にも、キミたちのチームが関わっているのでしょう?」
「はあ、よくご存じなんですね?」
「歴史上の大抵の事は知っていまいすよ。特に、自分に関わることはね?」
彼は京子にそう言って、片目を瞑って見せた。
「ただし、今後私が関わる人々の中で、たった一人、どうしても、その正体と思考が掴めない人物が居るのです」
イエスは、急に真面目な顔になって、そう言った。
「ソレは……ひょっとして、ボクの事でしょうか?」
突然、イエス・キリストの背後で、そんな声が聞こえた。
そこに立っていたのは……あの真田雪村だったのだ!




