㉔ 彼らの言い分
「アナタたちには、感謝しています。これまでに、我々の中の不満分子たちを、粗方片付けてくれましたからね?」
その神は、ニコニコ笑いながらそう言った。
「不満分子ですって?」
オウム返しに尋ねる雪子。
「そうです。本来は、零次元、一次元、二次元、三次元、四次元、五次元と、それぞれの世界は、独立して存在しています。そして、お互いに、干渉しあったりしないのが普通なのです」
「……そうでしたね」これは伯爵の相槌。
「ところが何時の頃からか、四次元世界に来た者の中から、三次元世界にちょっかいを出して、楽しむヤカラが現れるようになりました。そして中には、悪意を持って、三次元世界のモノを、自分の支配下に置こうとする者まで現れました」
「悪魔と呼ばれる者たちの事ですね?」これはイエス・キリストの言葉だった。
「何故、せっかく、簡単にアカシックレコードに、アクセスできる存在になったのに……宇宙の真理に近づけたのに、わざわざ不自由な物理的肉体で行動する、三次元世界に戻って来るのかな?」これはソクラテスからの疑問だった。
「ソクラテス君。それではヒトは何故、苦しい思いをして、高い山に登ったり、危険な事は承知で、深い海の底に潜ったりするのかな?わざわざそんな、酔狂な事をしなくても、平地で毎日楽しく暮らせば、良いではないのかな?」その神は、疑問に対して疑問で返して来た。
「それは……」ソクラテスは答えられない。
「……つまり、そう言う事だよ。好き好んで、四次元から三次元世界にやって来る者たちの心理は、そういうモノなのだよ。生命の本質は精神体……つまり魂の方だと言うのに、宇宙からの知識の受信機に過ぎない、物理的なボディで得る体験に、この上ない喜びを感じる。そう言う一部の者たちは確かに居るのだ」
「四次元世界での生活が、つまらないと感じるような……?」
コレは伯爵だった。
「……そうだな。過去・現在・未来の区別が意味を為さない。個人と他人との区別も曖昧に成り勝ちな世界だ。毎日の刺激が足りないと、感じる者も出て来る事は否めない」
「その中でも、悪意を持って、三次元世界に介入する者たちには、我々も些か手を焼いていたのだ。それを取り締まるために、我々までコチラの世界に来てしまっては、本末転倒だからな?」
「……確かに」そう言ったのは鷹志だった。
「だからキミたちには感謝している。今後も、多少の時間軸への介入には、目を瞑るから、せいぜい頑張ってくれたまえ。今日はそれだけを伝えに来た。来年からは、名実ともに新しい時代の幕開けだ。キミたちの健闘を祈っているよ」
その神は、それだけ言うと、その場から消えてしまったのである。




