㉓ 約束の日
そんなこんなで時は過ぎて行き、とうとう12月21日になった。
その朝、チーム・サン・ジェルマンのメンバーは、全員、伯爵の呼びかけで集められ、亜空間レストランに揃っていた。
午前8時の事だった。
せっかくだからと、皆で朝食を取っていたところ、突然、彼等の目の前に、或る一人の人物が現れたのだ。
それは、壮年の男性で、銀髪に銀色の髭を蓄え、生成りのキトンの上にヒマティオンを身に纏った、見るからに古代ギリシアの神、と言う出で立ちの者だった。
杉浦鷹志などは、思わず「……ゼウスみたいだ」と呟いてしまったくらいである。
イエス・キリストとソクラテスは、黙って見つめていた。
「やあ、伯爵と……そのお仲間の皆さん、ごきげんよう。おや、ジャン・ヌダルク君に、イエス・キリスト君まで居るね。よくもまあ、これ程の才能の数々を、揃えたものだ」
よく響くバリトンボイスで、その男は言った。
「どちら様ですか?」
落ち着いた声でサン・ジェルマンが尋ねた。
「キミがよく知っていて、キミをよく知る者だよ」と彼が答える。
「まるで禅問答だな?」ソクラテスがすかさず、そんな感想を言った。
「あなたは神……ですか?」イエスが念のために、重ねて訊いた。
「かつてキミたちの先祖に、そう呼ばれた事も有るな」
「……回りくどい事を言わずに、さっさと"四次元人"だと、おっしゃったら如何ですか?余計な事を言うと、勘違いの元になりますよ?」と伯爵がクギを刺した。
「やだなあ……もう少し楽しませてくれてもイイのに。いつも、コチラからキミの事を、呼び出してばかりだから、たまにはコチラからキミの所に、出向いた次第なのだよ?」
「何しにいらしたのか、とっとと目的をおっしゃって下さい」
伯爵の言い方は敬語なのに、言葉が些か乱暴だった。
「今日は皆さんに、お礼を言いに来たのですよ。もちろん、コレは、仮の姿ですがね?だって、黒いモヤモヤした姿では、話がし難いでしょ?」
そのセリフを聞いた瞬間、座っていた他のメンバーが、全員その場で立ち上がった。
「おう、おう、皆さんお元気そうですねえ。そんなにイキリ立たなくても、大丈夫ですよ。何しろ私は、キミたちが退治し続けた、"ソレらとは違う"四次元人なのですから」
その神の姿をした者は、そう言って悠然と笑った。
「ソレは一体、どう言う……意味なのかしら?」
返答次第では、今すぐ跳びかかる構えのまま、雪子がそう言った。
オリハルコンの剣は、まだ鞘の中だった。




