㉑ バラク・オバマ
それは11月6日の事だった。
アメリカ合衆国大統領選挙が行われ、民主党現職のバラク・オバマが大差で勝ち、再選を果たした。副大統領も引き続き、ジョー・バイデンに決まった。
オバマは、自らの地元である、イリノイ州シカゴのマコーミック・プレイスで、勝利宣言の演説を行った。それは「アメリカ合衆国にとって、最良の時は、これから訪れる」という、前向きなメッセージを込めた言葉で、党派の対立を乗り越えた、国の結束を強く訴える内容だった。
そのレイクサイド・センターの、18000人を収容できる室内ホールでの演説は、公式には、無事に行われた事になっている。しかしウラでは、ちょっとしたトラブルが起こっていたのである……。
「先ずは、アノ人と、アノ人と、アノ人……それに、アノ人もです」
そんな風に、目の前の大群衆の中から、悪意丸出しの四次元人を、指摘する人物が居た。
それは、真田雪村の妻の弓子である。今や彼女は、元々持っていたチカラを磨いて、遠方の悪意も、サーチ可能になっていたのだ。
この群衆心理のドサクサに紛れて、バラク・オバマを、亡き者にしようとする動きが在る。その事実に、イエス・キリストが、数日前、亜空間レストランに居ながらにして、気がついたのだ。
実は、その現場に、非戦闘メンバーである、ソクラテスも参加していた。彼は、21世紀のアメリカという名の大国の、大統領に就任者する者の演説に、興味が有ったのだった。
雪子やジャンヌやカグヤが、隠密行動で、次々に黒いモヤモヤを滅却して行く中、ソクラテスは、聴衆の中の、とある人物に目を止めた。
「お主は、プラトンではないか?」
プラトンと呼ばれた、壮年の白人男性は振り返って、ソクラテスを見た。
「ああっ!?アナタ様は、ソクラテス先生!」
驚きの気持ちがこもった、その声の主は、しかし、金髪に赤ら顔の、見るからに筋金入りのアメリカ人だった。
「何故、こんな所に?……いや、どうして、姿の違う私の正体を、見抜けたのですか?」
「何度もアカシックレコードにアクセスすると、魂の形が見えるようになるのだよ。だから、見かけ上の肉体の形の変化など、意味を成さないのだ」
「……流石は先生。恐れ入りました」
「それで……キミはココで、何をしているのかね?」
「私は現在、三次元での物理的活動を全うし……つまり亡くなって、四次元の世界に所属しています。今日は後学のため、バラク・オバマの演説を拝聴しに参ったのです」
「そのために、他人のカラダを、一時的にせよ、無断で拝借したのだな?」
ソクラテスは、苦々しい顔をした。




