⑳ ハロウィン
それは10月28日の夜の事だった。
本当のハロウィンは3日後だったが、それに一番近い日曜日だった事もあって、渋谷の交差点は、仮装した馬鹿どもで溢れ返って居た。
DJポリスの登場は、まだ来年の事で、すっかりそこは、無法地帯となりつつあった。この日本にも、ハロウィンが漸く定着したかと思えば、この体たらく。一体どこで道を間違えたのか。
あの1980年代のバブル期にも、同じような事を思った。
12月24日の夜に、日本中のホテルが、カップルで溢れ返る。
一体彼等は、クリスマスイブを、何だと思っているのだろう?
最早、普段節制した生活を続けているせいで、何か理由をつけてハメを外すチャンスを、待ち構えて居る国民性としか、思えなかった。サン・ジェルマン伯爵は、日本という国も、日本人も好きだが、こういう時に、ふと、悩んでしまうのであった。
さて、話を現在の状況に戻そう。
先述のように、多くの若者が、交差点の真ん中で、バカ騒ぎをしている。
中には酒に酔っていたり、もっと良くない違法なモノを、摂取している者も居るようだ。
こういう、精神的に開放され過ぎている時は、特に要注意なのだ。何故ならソレが、ヤツラに憑依され易い状態だからである。群衆を注意深く観察していると、一人、また一人と、ヤツラにカラダを奪われて行く様子が、よく分かった。
「じゃあ、そろそろ行きましょうか?」
伯爵のその一言を待っていた、雪子、カグヤ、ジャンヌ、そしてイエス・キリストは、それまで待機していた109ビルの屋上から、一斉に渋谷交差点に向けてダイブした。
因みに、ジャンヌと伯爵は、腰に装着した反重力装置を使っていたが、他の三名は、自力の能力で空中を飛んでいた。闇に紛れての素早い行動だから、誰にもバレてはいない。
5人は地上に着くと、四次元人に乗り移られた者たちが、どさくさに紛れて、他の人々を襲うのを、紙一重で防いでいったのである。
雪子とカグヤは、武器を使用しなかった。相手のカラダに触れて、電撃ショックを与え、中から出て来た黒いモヤモヤを、一瞬で焼却する。
イエスは触れる事すらしなかった。彼が「ひれ伏しなさい」と呟くだけで相手は地面に突っ伏し、中から出て来たモヤモヤは、息を吹きかけただけで、燃え尽きてしまった。
伯爵とジャンヌは、剣を使って峰打ちを食らわせ、中から出て来た奴らは、レーザー銃で燃やした。どのメンバーの仕事も、鮮やかな早業だった。
雪子はセーラー服、カグヤは巫女の衣装、ジャンヌは中世の騎士の姿、イエスは普段着、伯爵も、いつもの中世の貴族の格好だったから、ハロウィンの群衆に紛れる事は、容易であったのである。




