⑭ ミサイル
それは4月13日の事だった。
日本の近くに在る某国から、日本海に向けて、長距離弾道ミサイルが発射された。その国の公式発表によると、宇宙に向けて、人工衛星"光明星3号"を乗せて発射した事になっている。
しかし、故意なのか過失なのか、そのミサイルの進路は、名護屋市に向かっていた……だがこの危機を見逃さず、それに立ちはだかる者が在った。
「まったく、油断も隙も無いわね。由理子の居る国はヤラせないわよ?」
金色の鎧を身に纏った、その黒い大柄な猫は、空中に浮かんだまま、オリハルコンの剣を構えた。
そして彼女は、まるで闘牛士のように、正面からやって来るミサイルをひらりと躱しつつ、真横に回って、瞬時に、その弾頭を切り落としたのだ。コントロールを失ったミサイルは、そのまま日本海へと落下して行った。
「……これでよし、と」
呟きながら剣を鞘に納めた彼女は、黒猫神のバステトであった。
「たまに様子を見に来てみれば、コレだもの。危ない危ない。某国の指導者は、またぞろ四次元宇宙からの侵略者に、憑依でもされて居るのかしら?それとも、ヤバイのは、影武者の方かな?」
ブツブツ言いながら、彼女は自分の時空旅行機に戻った。
「せっかくだから、久しぶりに、亜空間レストランに行ってみましょう」
彼女はそう言うと、早速名護屋テレビ塔に、乗機の進路を向けたのだった。
彼女はいつものように、地下駐車場にアダムスキー型の円盤を泊めて、エレベーターで上階のレストランを目指した。扉が開くと、早速懐かしい顔を見つけた。
「あら、バステト。久しぶり!元気だった?でもどうしたの、突然?」
正面のバーカウンターから出て来て、先に声を掛けて来たのは、由理子だった。今日も赤い髪に、メイド服の姿だ。その隣には、バーテンダー姿の杉浦鷹志も居て、ニコニコ笑いながら会釈している。
「うん、ほら、あなた達の時間軸で、最近2012年になったでしょ?だからちょっと早めに、様子でも見ようかなって……そしたら何と、ビンゴだったんだけどね」
「何か有ったんですか?」鷹志が心配そうに尋ねる。
「うん、ついさっき、ミサイルを一つ、日本海に叩き落として来たのよ」
「ええっ?」
「大した事無かったわ。ただの大陸間弾道ミサイルの、試作品よ。見たところ、人工衛星も核弾頭も、積んで無かったのよ。でも今後は油断禁物ね」
「怖いなあ。気を付けなくっちゃ。伯爵にも言っておきますね?」
「うん、そうしておいて」
そして彼女は、アメリカンを一杯飲むと、また直ぐに、別のSOSを聞きつけて、帰って行った。
その夜、亜空間レストランで、緊急の会議が持たれたのは、もちろんの事である。




