⑫ バステト
二人が窓から船外に目をやると、やがてイタチ族の海賊船が、這々の体で逃げて行くのが見えた。
すると自動的に、ミケーネの船の動力が戻った。
やはり外部から、何かしらの電磁波的な干渉が有ったらしい。
どうやらもう少し、推進システムのセキュリティガードを、高める必要があるようだ。
「それにしても……」
ミケーネはつい、疑問を口にする。
「毎回、キミはよく、僕が何処に居ても、ピンチに駆けつけられるよねえ?SOSも出してないのに……」
「アタシを誰だと思っているのよ?愛する人を守るためなら、その船に、発信機の一つや二つ、着けておくわよ」
「ああ、そう……なんだね?」
「それに例え間に合わなくて、アナタが殺されてバラバラ死体にされても、その欠片の全てを見つけて、殺しに関わったヤツラを、同じ目にあわせてやれる自信が有るわ」
「ええ〜っと、ソレは一体、どういう……?」
「やあねえ、冗談よ。愛に溢れたじょ・お・だ・ん!」
「……いや、独特のセンスのジョークだな」
「お二人、仲良しね?何だか微笑ましいわ」
そんな二人の遣り取りを見ながら、由理子がそう言った。
「……そうよ、由理子。だからウチのヒトを、独占しないでね?」
「もちろんよ、バステト。私はみんなの由理子なのよ。そして、一番大切なのは、鷹志なんだから……いつも研究ばっかりで、ちっとも構ってくれないけど」
由理子がそう言うと、バステトと二人で、まるでお笑いコンビのオードリーのように、「エヘヘへ」と笑い合った。
「……さて、そろそろ私、行くわね。またどこかで、SOSが出てるみたいだから」
「あれからずっと、正義の味方活動を、続けているのね?」
「そうなの。私、ヒマなのよ。このヒトが全然構ってくれないから」
バステトはそう言うと、右手の人差し指の爪を出して、ミケーネの白い頭をつついた。
「えへへへ」ミケーネは、笑って誤魔化した。
「でも、貴女の時空の2012年に、色々と気になる事が起きそうだから、また時々顔を出すわね?」
そして最後に「じゃあ、また、ね?」と言って、バステトはその場から、来た時と同じように、一瞬で消えてしまった。
由理子はまた、ミケーネと二人きりになった。
「じゃ、じゃあ、僕たちも、今度こそ帰ろうか?」
「そうよねえ」
変な空気になりつつ、二人はテレビ塔の亜空間レストランへの、帰路に就いたのだった。




