⑪ 亜空間海賊
それは、白猫王子ミケーネが、時空旅行機で、亜空間に入った直後の事だった。彼の船が、突然、機関停止したのだ。
「ねえ、ちょっとヤメてよ。また故障なの?」
由理子が不安そうに言う。
「オカシイなあ。出かける前に、ちゃんと自分で、運航前点検して来たのに……」
不審そうなミケーネ。
「こんな、昨日でも明日でもない、ましてや、何処の並行宇宙にも属さない空間に、取り残されるのは、不味いわよねえ?」
「ちょっと、僕、再点検してみるよ」
などと二人が会話していると、窓の外の頭上に、巨大な戦艦の影が現れた。
次に気がつくと、いつの間にか、ミケーネと由理子の背後に、イタチ族の海賊が表れ、それぞれの背中に、光線銃を突きつけて居たのである。
「目標の船内の座標を、あっと言う間に解読し、瞬間移動して来たのか?大した技術力だな……」
感心するミケーネ。
「我々は亜空間海賊だ。目的は……分かるな?」
ミケーネの背後に居る、イタチがそう言った。
「ああ、船内の各種デバイスや、データメモリー、それにバッテリーなんかが、欲しいんだろう?」
「物分かりが良くて助かる。直ぐに準備しろ!」
「いや、ソレは構わないけど……キミたち、僕が誰だか分かっているのかな?」
「知った事か!こんなチンケな船、その辺にゴロゴロ転がっているだろう?」
「あ〜、酷い事を言う奴だなあ……さてはお前、新参者の海賊だな?もうどうなっても、知らないからな!」
「……誰の船が、チンケなポンコツですって?」
その時、そのイタチの耳元で、そんな事を囁く声がした。彼のノド元には、何時の間にか、斬れ味の良さそうな短刀が突きつけられていた。
彼は慌てて両手を挙げ、隣の部下にも、目で訴え、同様にさせた。
「よしよし、イイ子ね?ご褒美に片耳だけ切り捨てて、許してあげようかしら?」
そんな物騒な事を言いながら、妖艶に笑っているのは、黒猫神のバステト嬢だった。
「あら、バステトじゃない!」
「由理子、お久しぶり。ゴメンね、またミケーネが迷惑かけて」
「し、知らなかったんだ。コレが、アンタの旦那の船だったなんて……許してくれ!それに、ポンコツだなんて言ってないし……」
慌てて謝るイタチ。
「まったく、コレだから、イナカ海賊は困るのよねえ……どうする、由理子?」
「そうね。謝っているし、もう二度と同じ事をしないと誓うなら……」
「貴女、相変わらず優しいわねえ。まあ、イイわ。アンタたち、彼女に感謝しなさい!さあ、とっとと自分の船に戻りな!」
バステトはそう言うと、イタチたちをまとめて前に突き飛ばした。彼らは来た時と同様に、自分の船に転送されて行った。




