表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/117

「少しずつ、自分を好きになる」

週明け、月曜日。


いつも通りの朝が、何事もなかったかのように始まる。


デスクに向かう白石を、少し離れた場所から見ていたのは橘真由と金田遥だった。


「あの表情……乗り越えたみたいね」

真由が小さく呟く。


「綾子は強い子だから。頑張ったね」

遥も静かに頷いた。


その視線に気づいた白石が、ふっと笑って二人の方へ歩いてくる。


「今日、ランチどうかな?」


三人ともお弁当を持っていたが、顔を見合わせてすぐに決まった。

「夜に回せばいいでしょ」

そんな軽いやり取りで、約束は成立する。


昼休憩。

オフィスと同じビルに入っているカフェで注文を済ませ、三人は席に着いた。


ひと息ついてから、白石が口を開く。


「二人とも、心配かけてごめんね。私……もう大丈夫だよ」


その言葉に、真由と遥の表情がふっと緩む。


「綾子は頑張り屋さんだから、もっと頼っていいのよ」

真由が優しく言うと、遥も隣で頷いた。


何があったのか——二人はあえて聞かない。

綾子が話したくなったときに、話してくれればいいと分かっているから。


けれど。


「……実はね」


白石の方から、ぽつりと話し始めた。


展示会でのこと。

自分の気持ち。

不安と、嫉妬と、過去の記憶。

新田ともう一度歩み始めること。


全部をざっと話し終えると——


「そっか」

「うん」


二人は静かに受け止めて、そしてふっと笑った。


「良かったね」


その一言が、胸に沁みる。


少しだけ間を置いて、白石が続ける。


「それでね……私、もっと自分に自信を持てるようになりたくて」


真由と遥が顔を上げる。


「メイクとか、ファッションとか……教えてほしいの」


一瞬の沈黙のあと——


「いいじゃない、それ!」

真由が身を乗り出す。


「楽しそう。じゃあ水曜日、仕事終わり行く?」

「うん、行きたい!」


トントン拍子に話が進んでいく。


ひとしきり盛り上がったあと、遥がふと口を開いた。


「私もね、昔は自分に自信なかったよ」


意外な言葉に、白石が目を向ける。


「今もあるわけじゃないけど。子どもの頃からあんまり表情豊かじゃなくて、とっつきにくいって言われて……最後は“ブス”ってレッテル貼られた」


淡々とした口調。

でも、その奥にあったものは、きっと軽くない。


「子どもってさ、自分と違うものとか、周りと同じじゃないものをすぐ比べるもんね。」

真由が頷く。

「分かるわ」


「それで、そのまま大人になって……今の彼に出会ったの」

遥は少しだけ柔らかく笑う。


「メイクもファッションも、ちょっと頑張ってみようかなって思えたのは、その人のおかげ」


白石が、じっと聞いている。


「仕事中メイクしないのは、本当の自分を見てくれる人がいるって思えたから。それ以外は、無理しなくていいかなって」


「前は“数字にメイクはいらない”って言ってたのにね」

真由が茶化すように笑う。


「今も基本はそう思ってるよ」

遥も少しだけ笑った。


そして、白石の方を見る。


「綾子。一緒に綺麗になろう」


「うん!」


少しだけ弾む声。


「あ、でも……デパコスとかは無理で。ドラッグストアで売ってるやつで頑張りたいの」


その一言に、真由が即答する。


「だーいじょうぶよ!私だってドラスト派でこれだけ盛ってるんだから!」


遥がメガネをくいっと上げる。


「私もドラスト派」


三人で、ふっと笑う。


ランチタイムは、穏やかな空気のまま終わった。


また楽しみと思える日が増えた。


本当にこの2人と同期で良かった。


そう思いながら3人並んで店を出ていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ