表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凍結世界の無能力魔術師  作者: 馬村ありん
第一章 剣と魔法のせかいで
8/15

08.クラスルーム

戦地の功績を認められ、褒美を賜ることになったブロードをめぐり、クラスメイトたちは大盛り上がり。話の中心人物マイラにしかし、いやみなジリアードが冷水を浴びせる。「ブロードは〈異世界遊行〉を乗り切れるのか?」

 その日クラスルームではブロードの話で持ちきりだった。

 義勇軍に参加した生徒たちは、ブロードの活躍を誇張(こちょう)して伝え、想像力旺盛(おうせい)な生徒たちは、王がブロードに(たまわ)る褒美についてさまざまな意見を述べた。


「彼はいずれ至高の冠位、太陽級を抱くことになるとボクは思うよ」

 輪の中心人物のアルマ・プラムが言った。座席の位置の都合上、その輪の中にはバーリントンも巻き込まれてしまっていた。まいったな。ぽりぽりと頭の後ろをかく。

「太陽級の冠位を持っているのは、現世ではランドリアル学長しかいない。でもランドリアル学長すらブロードは凌駕(りょうが)するだろうね」

 ロスアルドが言った。戦場での額の傷は()えているが、回復魔術がうまく働かなかったらしくうっすらと(あと)が残っていた。

「その通りだ。論を()たない」「毎朝太陽が現れるのと同じぐらい当然のことさ」

 同意の声が相次いだ。


「そうだろうか?」

 それだけに異論の声は周囲の耳目を集めた。

「ブロードのすごさは認めよう。だがしかし、太陽級を目指すからには〈異世界遊行(いせかいゆうこう)〉を果たさねばならない。彼はそれを果たせるだろうか?」

 発言の主、ジリアードは皮肉げに眉をひそめた。

「異世界遊行・・・」

 その言葉を口にしたとき、アルマの唇はにわかに震えていた。

 異世界遊行は、魔術師の到達点とも言える難業であり、冠位・太陽級を得るための最終試験である。王国の領内には異世界へとつながる扉がある。その中をくぐり、王国に「何かよきもの」を持ち帰るという試練だ。回復魔法も異世界より伝えられたと言われている。異世界の扉についてバーリントンは権威と言っていいくらい熟知していた。


「アラバード国二千年の歴史の中で、これまで二千人の太陽級志望者が挑戦した。だがそのうちで何人が生還したと思う?」

 ジリアードは言葉を切り、辺りを見渡した。

「たった百と五人だ」

「ふん、そんなことは常識だ。偉ぶっていうようなことでもない」

 ロスアルドは言った。腕を組み、ジリアードを見すえる。

「ロスアルド君、考えてみたまえ。ブロードといえどだよ、異世界という場所に耐えられるのだろうか? 異世界の扉は訪れる者によって別々の世界へと導く。そうだろう、バーリントン君」

 そう言いながら、ジリアードは長い前髪をかきあげた。

「その通りだ。これまで帰ってきた百五人は別々の世界を報告している」

「ありがとう、扉の守り手の一族よ。つまりだ、ブロードも送られる世界によっては戻ってこれない可能性も大いにあるわけだ。巨人族(ジャイアンツ)鳥人族(バードメン)の世界のように友好的な種族がいるばかりとは限らない。そうだろ?」


「ブロードなら砂漠の世界だって生きのびる。彼は、魔術で飲み水を作れるし、手からパンだって生みだせるんだ。実習で実際に見たもん!」

 アルマが言った。彼女が踏まえているのは、古代魔術師のビリエルが訪れた砂漠以外は一切何もない世界のことだ。あるのは途方もない砂漠だけで、百日探索して何も持たず帰ってきたと文献にある。

女妖術師(リリス)だけの世界ならどうだ? さしものブロードも(とりこ)になってしまうのではないかね?」

「……まあ、女妖術師の世界はむしろ行ってみたいかも」

 誰かがつぶやき、また別の誰かがうなずいた。そこは女しかいない世界で、男は尊ばれ誰からも愛されるのだという。この世界を訪れた魔術師ヴィラズはもう一度そこに舞い戻ることを夢見て再度扉をくぐり、以来消息を絶ったと伝えられている。

「サイテー! ブロードはヴィラズとは違うんだもん!」

 アルマが美眉(びまゆ)をひそめた。

「他にもゴブリンやオークどもが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する世界、アラバードが姿を消したという未知の世界もある。そんなところに放り込まれたら、ブロードといえど分からないぜ」

 ジリアードは意地悪く口の端を歪めた。


「誰のことを話しているんだ?」

 音もなく教室に姿をあらわしたのは話題の中心人物、ブロード・レッドマイヤに他ならなかった。


クラスメイトの騒ぎをよそに、クールな様子で教室にはいってきたのは、話題の張本人ブロード。はたして彼の反応は?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ