47.ズッ友
スマホというものの存在について教えてくれる麗亜と朱子。そして、三人はスマホで写真を取る。「うちらズッ友ってことで」
「ねえ、ブロードさ、LINEでつながろう。なかったらインスタのアカウントでもいいよ」
朱子が言った。
「それは何?」
「知らないの?」
「ああ」
「じゃあスマホの電話番号は?」
麗亜がたずねた。
「スマホって何?」
こう言ったところ、二人は驚愕の表情を返してきた。ダンジョンで巨大なレッドドラゴンに遭遇した
冒険者も、ここまでの表情はできないであろう驚愕っぷりだった。
「何で知らないの? バード国にはないの?」と朱子。
「友だちと連絡取る時どうするの?」と麗亜。
「連絡を取るための道具?」
「あのね、スマホっていうのは――」
朱子と麗亜は、ねばり強くスマホなるものについて解説してくれた。
一言で言うと、今日フィリックスが持ってきてくれたパソコンの小型版。調べ物もできるし、時計としても使える。
そして通話ができる。
この通話は、魔術における水晶玉での遠隔通話に等しい。この魔術を使えるのは満月級でも一握りだが、この世界ではスマホの契約者なら誰でもできる。その契約相手は、精霊でも天使でも悪魔でもなく、通信会社というところらしい。通信会社に金銭を定額支払うことによって契約完了となる。なお、通信会社は血液や供物のようなものは要求してこないようだ。
思えば、この広大で人口の密接した世界で、連絡を取る手段が発達しないわけがない。
「そんなものまであるとは、大した世界だ」
ブロードはめまいがしてきた。魔術的な要素は影をひそめているが、魔術なしでここまで多様なことができる世界なのだ。その文明の発展ぶりに打ちのめされるばかりだ。アラバード国は、この世界と戦になったら太刀打ちできるのだろうか?
「こんなこともできるよ」
朱子はニヤッと笑った。そして、ブロードの肩に腕を回してきた。スマホを目の前に掲げて。
レモンを濃縮したような甘い香りが鼻腔になだれ込んでくる。ずいぶん強い香水だ。いきなり何をするのかと思って身構えていると、朱子のスマホの画面に自分と朱子の姿が映ったのが目に入った。
「驚いた。カメラみたいだ」
「カメラは流石に知ってたか。そうカメラだよ」
「学んだ、昨日」
「ブロードおもしれー!」
冗談と思ったのか朱子はケラケラ笑った。
「ブロードくん、私とも撮って!」
麗亜も身を寄せてきた。麗亜は、額の上のほうで指を二本立てた。朱子もそうした。なので、ブロードもそうした。三人で撮影した。そのあと、女性二人は眠って丸くなるギリアンの姿も撮っていった。
夕暮れが迫り、二人は帰宅することになった。玄関で二人をおくった。
「今日はたくさん教えてもらった。ありがとう、朱子、麗亜」
「なになに。私たちも楽しかったよ。近いうち、また会おうぜ。今度はミリアも一緒で」と朱子。
「君たちみたいな友達が僕にはいなかった。ずっと孤独だった。感謝する」
「いいってことよ。うちらズッ友ってことで」
「ズッ友?」
「永遠に友達ってこと!」
朱子は言った。
去り際、麗亜がさりげなくたずねてきた。
「ねえ、ブロードくん」
「何だ」
「ミリアのこと、どう思ってるの? 好き? 恋人にしたい?」。
「分からない、ミリアのことは」
ブロードは言った。
麗亜はうなずき、何も言わずに去っていった。
麗亜はブロードに問いかけた。「ミリアのこと、どう思っているの?」。ブロードは深く考えいる。




