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凍結世界の無能力魔術師  作者: 馬村ありん
プロローグ
4/5

04.赤色の魔術師

バーリントンは同級生のアルマ・プラムと戦地にて再会する。アルマの目は希望に輝いている。あの赤色の魔術師ブロード・レッドマイアが来るぞ! そして、神聖獣の背に乗ったブロードが姿を現した。

 いや、嘘だ。帰りたい。家に帰りたい。

 そう叫びたかった。

 だが、アラバード国立魔術学院の生徒としての誇り(プライド)がそう言わせなかった。僕は誇り高い魔術師であるべきなのだ。

「そうかい」

 アンディゴはいった。

「まだ傷ついたやつはいる。奴らが総攻撃を仕掛けてくる前に体勢を整えなくちゃいかん。すまないが、もうちょっと付き合ってくれ。いまのところ生徒で使えるやつはお前しかいない」

「分かりました。案内してください」

「お安いごようだ」

 戦線は平常心を取り戻しつつあった。くずれた瓦礫のもとで兵士や魔術師の卵たちは立ち上がり、めいめい傷を癒やしながら、使える武器をかき集めた。バーリントンの治癒した兵士がアンディゴに生存者数を報告している。また別の兵士は、弓に弦を張り直していた。


「バーリントン、君も生きていたか!」

 集まった群衆の中から声をかけてきたのは、同級生のアルマだった。アルマは顔を輝かせ、肩まで伸びた髪をゆらしながら、バーリントンへと駆けよってくる。

「前線は被害甚大(ひがいじんだい)だっただろう。もう死んでしまったかと思っていたよ」

「幸運なことに生徒で死んだやつはまだ確認していない。これも国祖アラバードのお導きだろうね」

 バーリントンは言った。

「やれやれ、君の国祖への愛は、この地獄を前にしても揺らぐことがないな」

 アルマは苦笑まじりに言った。

「女の細腕で困ってはいないかな? なにか力仕事があったら言ってくれよ」

「大きなお世話だよ。少なくとも君よりは腕力に自信があるんだからね。君こそボクを頼るんだよ」

 そういってアルマは胸をそびやかした。

 アルマ・プラムは、義勇兵の中でも唯一の女性であり、女性の魔術学生がほとんど研究職コースを志望する傾向にあるなか、珍しい軍職希望者だった。


「それより、ニュースだ。ボク達の勝利は確実だぞ」

 両手に力を込めながらアルマが言った。

「どうしたんだ、勢い込んで。なにかあったのか?」

「ブロードが来る。こっちに向かってきている、あの赤色(せきしょく)の魔術師が!」

「ブロードが? 本当か?」

「ああ。これでボク達無事に帰ることができるよ」

 話を聞いていた生徒たちの間で、歓声が上がった。


「あっ!」

 誰かが西の空を指さした。

 ごおっ。翼を叩かせるその風切音が大地へと響きわたった。

 バーリントンが目を向けると、炎が空に輝いていた。いや、あれは炎ではない、正確には巨大鳥だ。

 身に炎をまといし神聖鳥(しんせいじゅう)ファイアバード。

 ブロードの契約獣(けいやくじゅう)だ。


 ファイアバードが、こちらに近づいてくるにつれて、その威容(いよう)が明らかになった。コンドルのように鋭いくちばし、その羽根を広げた長さは二十メートルはありそうだ。尾羽は長く、虹色に輝いていた。

 その背に乗る男が見えた。

 まず目を引くのはその身にまとった赤色のマント。すらりとした背丈。そして、大空にきらめく腰まで伸びた長い髪。間違いなく赤色の魔術師ブロード・レッドマイアだ。

「彼がなぜ……義勇兵には志願していなかったはずだが。そうか、王様直々の出動命令ということか」

 バーリントンはつぶやいた。

「来たぞ、彼だ!」「学院に勝利を!」

 生徒たちは声をあげた。

難敵である蛮族の群れを前に、ブロードはいかにしてたたかうのか。苛烈なる戦いがはじまる。

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