04.赤色の魔術師
バーリントンは同級生のアルマ・プラムと戦地にて再会する。アルマの目は希望に輝いている。あの赤色の魔術師ブロード・レッドマイアが来るぞ! そして、神聖獣の背に乗ったブロードが姿を現した。
いや、嘘だ。帰りたい。家に帰りたい。
そう叫びたかった。
だが、アラバード国立魔術学院の生徒としての誇りがそう言わせなかった。僕は誇り高い魔術師であるべきなのだ。
「そうかい」
アンディゴはいった。
「まだ傷ついたやつはいる。奴らが総攻撃を仕掛けてくる前に体勢を整えなくちゃいかん。すまないが、もうちょっと付き合ってくれ。いまのところ生徒で使えるやつはお前しかいない」
「分かりました。案内してください」
「お安いごようだ」
戦線は平常心を取り戻しつつあった。くずれた瓦礫のもとで兵士や魔術師の卵たちは立ち上がり、めいめい傷を癒やしながら、使える武器をかき集めた。バーリントンの治癒した兵士がアンディゴに生存者数を報告している。また別の兵士は、弓に弦を張り直していた。
「バーリントン、君も生きていたか!」
集まった群衆の中から声をかけてきたのは、同級生のアルマだった。アルマは顔を輝かせ、肩まで伸びた髪をゆらしながら、バーリントンへと駆けよってくる。
「前線は被害甚大だっただろう。もう死んでしまったかと思っていたよ」
「幸運なことに生徒で死んだやつはまだ確認していない。これも国祖アラバードのお導きだろうね」
バーリントンは言った。
「やれやれ、君の国祖への愛は、この地獄を前にしても揺らぐことがないな」
アルマは苦笑まじりに言った。
「女の細腕で困ってはいないかな? なにか力仕事があったら言ってくれよ」
「大きなお世話だよ。少なくとも君よりは腕力に自信があるんだからね。君こそボクを頼るんだよ」
そういってアルマは胸をそびやかした。
アルマ・プラムは、義勇兵の中でも唯一の女性であり、女性の魔術学生がほとんど研究職コースを志望する傾向にあるなか、珍しい軍職希望者だった。
「それより、ニュースだ。ボク達の勝利は確実だぞ」
両手に力を込めながらアルマが言った。
「どうしたんだ、勢い込んで。なにかあったのか?」
「ブロードが来る。こっちに向かってきている、あの赤色の魔術師が!」
「ブロードが? 本当か?」
「ああ。これでボク達無事に帰ることができるよ」
話を聞いていた生徒たちの間で、歓声が上がった。
「あっ!」
誰かが西の空を指さした。
ごおっ。翼を叩かせるその風切音が大地へと響きわたった。
バーリントンが目を向けると、炎が空に輝いていた。いや、あれは炎ではない、正確には巨大鳥だ。
身に炎をまといし神聖鳥ファイアバード。
ブロードの契約獣だ。
ファイアバードが、こちらに近づいてくるにつれて、その威容が明らかになった。コンドルのように鋭いくちばし、その羽根を広げた長さは二十メートルはありそうだ。尾羽は長く、虹色に輝いていた。
その背に乗る男が見えた。
まず目を引くのはその身にまとった赤色のマント。すらりとした背丈。そして、大空にきらめく腰まで伸びた長い髪。間違いなく赤色の魔術師ブロード・レッドマイアだ。
「彼がなぜ……義勇兵には志願していなかったはずだが。そうか、王様直々の出動命令ということか」
バーリントンはつぶやいた。
「来たぞ、彼だ!」「学院に勝利を!」
生徒たちは声をあげた。
難敵である蛮族の群れを前に、ブロードはいかにしてたたかうのか。苛烈なる戦いがはじまる。




