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凍結世界の無能力魔術師  作者: 馬村ありん
第三章 無能力魔術師
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38/78

37.撮影

撮影を行うミリアとブロード。ミリアはブロードの美しさに気後れすら感じてしまう。

「じゃあ、撮っちゃおうか」

 フィリックスは、ブロードの着替えと一緒に持ってきた一眼レフカメラを手に持ち、何やら設定をいじり始めた。

「あー、F値はコレ。シャッタースピードはコレ」

「なんだ、それは?」

 ブロードはたずねた。

「これのこと? カメラよ」

 ミリアは言った。

「カメラ?」


「じゃあ早速撮影するよ。ミリアもブロードもそこに立ってくれ。そう、その小高くなってるところだ。並んで。もっとよりそって」

 ブロードほどの美形の男がとなりに並ぶと、ミリアは自分のファッションに隙がないか気になってしまう。フリルのついた白のブラウスに、ジーンズ地のスカート、膝までのブーツ。ネイルは橙色(だいだいいろ)のを塗ってきた。サフィーはかわいいと言ってくれたけれど。


「ブロード、こっちを見て。そうそう、僕が指差してる所に視線をくれ。よーしじゃあ撮るぞ」

 パシャ。パシャ。パシャ。

 ブロードは無駄な動きをしないタイプだったので、写真に収めるのは楽だったようだ。それにしても、天性のモデルだと思った。そのルックス。背の高さ。ポーズの取り方も(どう)に入っていた。

 ミリアも、何度か写真撮影におうじたことはあるが、ここまで堂々とはできなかった。


 いま撮影しているのは、サフィーの会社のイメージ広告に使う写真で、草むらでポーズを取ったり、デッキチェアの上でノートパソコンを触るようなポーズを取った。

 背中あわせでのショットを取るとき、肘と肘がふれあった。ミリアはどきりとした。気持ちが表情に出ていないか、隠すのに必死になった。

 こうして並ぶと、彼って背が高いな……。


 写真撮影はあっという間に終わった。

「ほら、カメラをみて」

 フィリックスは言った。

「なんだこれは? 僕が額縁の中に収まっている⁉︎ これはテレビか!?」

 カメラの小画面をみて、ブロードは目を見開き、大声を上げた。

「そんなによく撮れてるかい?」

 フィリックスはブロードの反応に上機嫌だった。

「なるほど、これは現実の風景を絵画のように映しとる道具なのか! 何の魔力反応もないことを(かんが)みるに、これはマジックアイテムではないのだな!」

「ブロードは元気な人ねえ」

 サフィーになでられたギリアンは、ごろごろと喉を鳴らした。


「んじゃ、引き上げようか。早く帰って『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の続きを見なきゃ」

 サフィーとフィリックスは、カメラからレフ板からキャンピングテーブルまで、すべての荷物を車の中にしまいはじめた。ミリアも手伝った。

 ブロードはというと、その熱心な視線を車にも注いでいた。

「車好きなの?」

「クルマ?」

「そう。日本語でクルマ」

「クルマ」

 なんだか調子が狂う。車の日本語を初めて知ったというよりは、車そのものを初めて知ったという感じがする。サフィーの言う通とおり、中世時代から時を超えてまぎれこんできたと言われても、おかしくない。


 荷物はしまい終わり、あとは出発するばかりになった。

「ブロード、君はどうする? 君の住んでいるところまで送るよ」

 フィリックスにそう声をかけられたとき、ブロードはギリアンを抱き抱えてキョトンとしていた。


ブロードに住む家がないことをミリアは確信する。そして……。

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