36.広告モデル
サフィーは、ブロードをモデルにすることを提案する。初めてのカメラ撮影に応じることになったブロードは……。
ミリアの視線が、ブロードに向けられているのに気づいた。その視線がマントのあちこちに向けられているのにブロードは気がついた。マントには、寝っ転がったときにくっついたと思われる落ち葉や土くれがこびりついていた。ブロードは顔を赤らめ、この汚れを落とそうと努めた。
「ねえ、彼でいいじゃない」
サフィーは、なにやらはずんだ声で言った。
「何がだい、ハニー?」
フィリックスがたずねた。
「撮影のモデルよ。かわいいルックスしてるしピッタリだわ。彼ったら、モデルとして生計が立てられそうなくらいじゃない」
ブロードは、キョトンとサフィーを見返した。何か自分の話をしていることは確かなようだ。二人の顔に浮かぶ笑顔を見れば、悪いことを考えているようには思われなかった。
「どう思う、ミリア?」
「ブロードくんさえよければ……」
ミリアはこちらを見た。
「お願いできる? ブロード?」
サフィーは言った。
「これに着替えてもらえるかな? さわやかなコーデだよ」
フィリックスがワンボックスカーから取り出したのは、シンプルな色合いの異世界装束。牛乳のように白い色合いの半袖の上衣、それから藍色に染色された厚い布地で作られたズボンだった。
このように、衣服を提示されれば、大体のことは察するものだ。
「この異世界風の装束に着替えろということなんだな? いいだろう。なんでもすると言ったばかりだ」
ブロードはマントを脱ぎ、続いてブラウスのボタンを外しはじめた。
「ちょ、ちょっとブロードくん!」
「はい、ご婦人方は後ろを向いてください」
フィリックスが言った。
おっと。僕としたことが。
緊張していたためか、女性たちの目の前で少しはしたなかっただろうかと反省する。
サフィーとミリアが後ろを向いてからすぐ、ブロードは着替え終わった。
「へえー、似合うじゃない。かなりイケてるわよあなた」とサフィー。
「君が着ると、中古ショップの掘り出し品も、名のあるブランド物に変容するようだよ」とフィリックス。
二人は、きがえたブロードを見つめながらなにやらしゃべっている。察するに自分を称賛しているようだ。
――ミリアはどう思うだろうか。
ふと視線を送ると、
「うん、ブロードくんとっても素敵だよ」
そう言ってミリアがほほえんでくれると、ブロードはなぜか安心するのだった。
異世界装束の着心地はとてもよいものだった。正直なところ、日中火鼠のマントは暑すぎるし、絹織物のズボンも、公園の水道の水で洗っているうちにヨレヨレになっていた。
この装束は、通気性と着心地がよく、この凍結世界の気候に合っているように思われた。なるほど、世界に合わせて衣服も進化していくものなのだ。
異世界の服装に着替えたブロード。いよいよ撮影に入る。




