35.『ミリア』との再会
ミリアとの再会を果たした異世界よりきた魔術師ブロード。ミリアたちからもらった飲み物に、ブロードは驚愕する。この極上の味わいのする飲み物はなんだ? コーラである。
目が覚めると、そこにミリアがいたので、『まだ夢を見ているのだろうか』とブロードは思った。よく目を凝らすと、それはミリアではなく、『ミリアによく似た少女』だった――あの素質持ちの。
「びっくりだ。こんなに人のあふれた街でまた会うとはね。何かの運命かな」
そう言いながら、ブロードは自分の声がかさかさなのに驚いた。
「ちょっと! あんた大丈夫なの⁉︎ マントも草まみれじゃない……!」
ミリアに似た少女はかがみ込み、その白い手を伸ばすと、ブロードの額にふれてきた。
「熱はないみたいだけど……それでも、かなり具合悪そうよ」
ミリアに似た少女が心を痛めているのが、その表情から分かる。この少女、自分を心配してくれているのだ。
「ミリア、知り合いかい?」
「ええっ、大丈夫なのこの人⁉︎」
大柄な男と細身の女がそばにいた。二人とも眉根をよせてブロードの体を支える。
「えーと、アー・ユー・オーケイ?」
ミリアは言った。
「ダメ。英語じゃ伝わらないみたい」
「フランス語を試してみよう」
男はなんらかの言語を使った。次に、女もなんらかの言語を使った。どうやら複数の言語が目の前で話されている。見たところ、凍結世界にも複数の言語があり、そのいずれかで通じるかを試したらしい。当然のことながら、どれも伝わらない。
「フランス語でもエチオピアの言葉でもだめだ」と男。
「トルコ語でもドイツ語でも中国語でもダメね」と女。
「どこが悪いのか分からないけど、とにかく救急車を呼んだ方が――」
ミリアは言いかけたが、ぐううう……! ブロードの腹の虫が鳴ったおかげで、立ち所に原因と対処法を悟ったらしい。三人は駆け足で茂みから出ていき、また戻ってきた。おいしい匂いのするものを抱えて。
「こう言う時はまず飲み物だ。ゆっくり飲むんだよ」
背の高い男が、筒形の物体を手渡してきた。手ざわりからすると紙製だ。冷たい。中には液体が入っている。ストローが刺さっていて、そこから飲み物を吸い取るのだと理解した。ブロードはちゅっと吸い上げ飲み込んだ。
「なんだこれは⁉︎」
ブロードはあらん限りの声で叫んだ。三人はびっくりしてあとずさった。
天上の味わいだ。さわやかな甘さ。果実のようなほどよい酸味。ほのかに漂うスパイス。そして細やかな炭酸の喉越しのよさ。ブロードはストローに思いっきり吸い付き、それでも物足りないのでフタを外して、入れ物の縁に口をつけて直接ガブ飲みした。
「すごい飲みっぷりだ!」と男。
「もう一つ飲む?」と女。
ブロードはもう一つ飲んだ。
「うますぎる! これは至高の飲み物だ。こんなおいしい飲み物があるとは。僕は、王からありとあらゆる国の美酒を授かってきたが、これ以上においしいものは存在しなかった。神の水に違いない! これは何と言うんだ?」
「なんだか彼、熱弁してるな」と男。
「コーラ飲んだことないの?」
ミリアは言った。
「コーラ?」
「そう。コーラよ」
「コーラ! コーラというのか! 天上の味わいのする赤黒き霊水、その名もコーラ!」
「コーラでここまでハイになれるなんてうらやましいな」と男は言った。
コーラですっかり渇きと疲れをいやした異世界の魔術師ブロード。次に彼を待ち受けているのは、ハンバーガーとフライドポテトなる食べ物である。




