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凍結世界の無能力魔術師  作者: 馬村ありん
第三章 無能力魔術師
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35/78

35.『ミリア』との再会

ミリアとの再会を果たした異世界よりきた魔術師ブロード。ミリアたちからもらった飲み物に、ブロードは驚愕する。この極上の味わいのする飲み物はなんだ? コーラである。

 目が覚めると、そこにミリアがいたので、『まだ夢を見ているのだろうか』とブロードは思った。よく目を凝らすと、それはミリアではなく、『ミリアによく似た少女』だった――あの素質持ちの。

「びっくりだ。こんなに人のあふれた街でまた会うとはね。何かの運命かな」

 そう言いながら、ブロードは自分の声がかさかさなのに驚いた。

「ちょっと! あんた大丈夫なの⁉︎ マントも草まみれじゃない……!」

 ミリアに似た少女はかがみ込み、その白い手を伸ばすと、ブロードの額にふれてきた。

「熱はないみたいだけど……それでも、かなり具合悪そうよ」

 ミリアに似た少女が心を痛めているのが、その表情から分かる。この少女、自分を心配してくれているのだ。


「ミリア、知り合いかい?」

「ええっ、大丈夫なのこの人⁉︎」

 大柄な男と細身の女がそばにいた。二人とも眉根をよせてブロードの体を支える。

「えーと、アー・ユー・オーケイ?」

 ミリアは言った。

「ダメ。英語じゃ伝わらないみたい」

「フランス語を試してみよう」

 男はなんらかの言語を使った。次に、女もなんらかの言語を使った。どうやら複数の言語が目の前で話されている。見たところ、凍結世界にも複数の言語があり、そのいずれかで通じるかを試したらしい。当然のことながら、どれも伝わらない。


「フランス語でもエチオピアの言葉でもだめだ」と男。

「トルコ語でもドイツ語でも中国語でもダメね」と女。

「どこが悪いのか分からないけど、とにかく救急車を呼んだ方が――」

 ミリアは言いかけたが、ぐううう……! ブロードの腹の虫が鳴ったおかげで、立ち所に原因と対処法を悟ったらしい。三人は駆け足で茂みから出ていき、また戻ってきた。おいしい匂いのするものを抱えて。


「こう言う時はまず飲み物だ。ゆっくり飲むんだよ」

 背の高い男が、筒形の物体を手渡してきた。手ざわりからすると紙製だ。冷たい。中には液体が入っている。ストローが刺さっていて、そこから飲み物を吸い取るのだと理解した。ブロードはちゅっと吸い上げ飲み込んだ。

「なんだこれは⁉︎」

 ブロードはあらん限りの声で叫んだ。三人はびっくりしてあとずさった。


 天上の味わいだ。さわやかな甘さ。果実のようなほどよい酸味。ほのかに漂うスパイス。そして細やかな炭酸の喉越(のどご)しのよさ。ブロードはストローに思いっきり吸い付き、それでも物足りないのでフタを外して、入れ物の縁に口をつけて直接ガブ飲みした。

「すごい飲みっぷりだ!」と男。

「もう一つ飲む?」と女。

 ブロードはもう一つ飲んだ。

「うますぎる! これは至高の飲み物だ。こんなおいしい飲み物があるとは。僕は、王からありとあらゆる国の美酒を授かってきたが、これ以上においしいものは存在しなかった。神の水に違いない! これは何と言うんだ?」


「なんだか彼、熱弁してるな」と男。

「コーラ飲んだことないの?」

 ミリアは言った。

「コーラ?」

「そう。コーラよ」

「コーラ! コーラというのか! 天上の味わいのする赤黒き霊水(れいすい)、その名もコーラ!」

「コーラでここまでハイになれるなんてうらやましいな」と男は言った。

コーラですっかり渇きと疲れをいやした異世界の魔術師ブロード。次に彼を待ち受けているのは、ハンバーガーとフライドポテトなる食べ物である。

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