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凍結世界の無能力魔術師  作者: 馬村ありん
第二章 凍結世界
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33/78

33.鋼鉄の騎馬隊

魔術師ブロードが目的したのは、鉄の馬にのる若い騎兵隊の人間たちだった。こちらに危害をくわえる様子はなかったので、ブロードは安心する。

 道路の上にひしめきあっているのは若い――それも皆ブロードくらい若い――男たちであった。彼らはならず者の雰囲気があったが、同時に戦士的でもあった。みな一様に黒革の防具を身につけている。剣や鎧こそなかったが、それらがいかにも似つかわしく見える。

 ブルルル……。

 彼らは、馬のようなものにまたがっていた。さっきの音はこの馬のいななきのようだった。

 不思議な馬だった。車輪が付いていて、車のようにも見える。馬が車を(はら)ませ、生まれ落ちた子どものようだった。


「よっしゃー! ノーザン・エンペラー特攻する(ぶっこむ)ぞー!」

 リーダー格と思われる男が叫び、周りを囲む男たちが気勢を上げた。

 その男は、なにか動物の脂でも使ったのか、頭を逆立てていて、闘志をアピールしているようだった。

亜寒帯連合(あかんたいれいんごう)が、四尼我弥(しにがみ)がなんぼのもんじゃー!」

 二番格らしき太った男が言った。また(たけ)り声が上がった。

 若き騎兵団は夜中に声をひびかせると、鉄の馬にまたがった。主人の熱意に呼応するがごとく、鉄馬(てつま)はいななきを上げた。それから順に騎士を乗せた馬は灰色の道を滑走(かっそう)していった。静かな夜が戻ってきた。

 物取りや食人鬼ではなくホッとしたブロードは、ギリアンが待つ寝床に戻っていった。


 夢の中でブロードは、「輪っかの揚げパン」を食べていた。

 店員が次から次へと運んでくるのだ。

 ――たんと食べるといいよ、ブロード。無限にある。

 店員はバーリントンの顔をしていた。バーリントン、きみも凍結世界に来ていたのか。魔術が使えずさぞやお困りだろう。


 ――そんなことより、テレビを見なよ。バーリントンの指差す方にテレビが置かれていた。テレビの中にはアラバード国のミリアとギリアンがいて、口づけを交わしていた。悲しいかい? バーリントンは尋ねた。

 悲しいよ。

 ――やっぱりそうか。

 悲しいけどさ、同時にうれしいんだよ。

 ――どうしてうれしいの? 憎んでいる男と最愛の女だろう?


 なぜかはわからない。

 ――そうかな?

 ブロードは鉄板を手に持っていた。その上にあるのは、クズ肉の小麦粉あえだ。じゅうじゅうと音を立て、香ばしい匂いがしていた。

 ――食え、ブロード。どうやら君の最後の晩餐になるようだ。

 ――君は今日死ぬんだよ。

 ならば心して食う。

 苦い苦い雑草の味がした。


「腹減った」

 最悪の目覚めを迎えた。

「ギリアン? どこにいる?」

 となりで眠っていた猫は姿を消していた。

 どうやら狩りにでも出たか?

 空腹で目眩(めまい)がひどい。ブロードは再び(まぶた)をとじた。


夢を見た。ミリアとブロードがキスする夢。だが、悪い感じはしなかった。気がつくと、ギリアンは姿を消していた。どこに行ったのか……?

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