25.詰問
ブロードの消失に絡み、レッドマイア家にお招きいただいたバーリントン。そこには王に魔術顧問にとお歴々がそろっており、バーリントンは恐縮する。
バーリントンにとって、今日という日はどうしても忘れられない一日になった――まさかこんな状況になってしまうとは。
ブロードが姿を消した夜、学園をはじめとした場所では、アンディエ山地の巨大蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。
レッドマイア家の当主レイダリアンの雇った犬妖精が、ブロードのにおいをたどっていった先は、当然のことながら、異世界の門のあるレンガ造りの小屋であった。
バーリントンは、レイダリアンに家まで御足労を願われる身の上となった。もちろん、ここまでは予測できたことだ。
だが、そこに国王アラバディア・アラバード十六世と、学院最高権威のランドリアルがいることまでは予測できなかった――いや、レッドマイア家の外に四頭立ての豪奢な馬車があった時点でうすうす気づいてはいたのかもしれない。
「なぜ、ブロード・レッドマイアは異世界に行ってしまったのだ」
燃えるような強い瞳で王は問うた。
「彼は、優秀な魔術師ではあるが、異世界遊行の旅に出るにはまだ年齢も若く、経験も浅いはずだ。バーリントンと言ったな。君はなぜそれを許した」
バーリントンは言葉に窮する。
なんと答えたものか。
「おそれながら、王よ」ランドリアルが口をはさんだ。「そのように勇んでいては、この者も萎縮してしまいましょう。ここは、この私めに任せてくれませぬか」
「私としたことが」王はオールバックの頭をなでつけた。「ブロードは私の大切な友人のひとりでもあるのだ。許せ、バーリントンよ」
「そんな、もったいない」
バーリントンは言った。
「彼は自らの意思で行ったのだね、バーリントン」
ランドリアルはたずねた。
「そうです。あの夜、彼が来ました。もちろん、私は止めたのですが、彼にどうしてもと押し切られてしまいました」
「異世界遊行に定められたルールはない。押し切られたら門番は通すしかない。君が、異世界行きを請願してきたブロードに対し、断る権限がなかったこともやむを得ぬことと言えような」
ランドリアルは、綿雲のような口ひげをなでつけた。
「なんだってブロードは、そんな自殺行為に出たのだ」
当主レイダリアンは言った。以前目にしたときよりやつれており、宮廷魔術師団長の輝きもいろあせ、二十歳も多く年老いて見えた。聞いた話によると、その奥方も寝込んでしまったらしい。
(これだけ愛してくれる人がいるというのに、君というやつは、ブロード)
やりきれない気持ちで、バーリントンはうなだれた。
「私のせいなんです……」
その場にいた女性が言った。名前はたしか、ミリアと言ったか。
「彼の気持ちを知っていたのに。私……」
そう言って泣いてしまった。
なるほど。
バーリントンは事情を察した。
きっと、ブロードは彼女にフラレたのだ。ブロードの兄・ギリアンがミリアの肩を抱きしめている様子からもそれが読み取れる。
「何においても君のせいではない……決して」
レイダリアンはうつむいたまま言った。
「バーリントン。アンカーとなる指輪は渡してあるということだな。指輪から反応はあったか」
ランドリアルは言った。
「いえ。それが音沙汰がなく……」
「何にせよ、われわれにできることは、ただ待つことだけというわけだな」
王が立ち上がった。
「苦労をかけた、バーリントンよ。ここで私は去ることにしよう。なんせあのブロードだ。異世界でも生きのびるに決まっている。友であれば、そのように信じるのが正しい道というものだ。そうではないか?」
「ぼ、私もそのように思います」
バーリントンは言った。
王はほほえみかけた。
王とランドリアルが立ち去った後、自分も学園へ戻ろうとしたバーリントンを、引き止める手があった。
「あなたは……」
「私はミリアと言います。あなたに聞きたいことがあって」
ブロードが大勢の人から心配されていることを目の当たりにして、胸打たれるバーリントン。そこへ、ミリアという女性が声をかけてきた。




