#8
・今回は前回に引き続き、機械によって加工された音声で話している場面がございます。
「」→肉声
『』→機械によって加工された音声
その頃、和と鳴上は彼の車に乗車し、依頼をこなしている来栖と由佳のところに駆け付けていた。
漆黒のローブに身に纏い、ダッシュボードの上に仮面が置いてある。
彼女はノート型のパーソナルコンピューターを持参し、これまでの動向を見ていた。
「あはは……! 海斗。演技が下手だね」
機械によって加工された音声ではなく、女の肉声の笑い声がする。
『当然だろ!? 芝居の経験なんてねぇし!』
「無言で由佳さんを連れ去れば良かったのに。海斗のマフィア幹部は見せかけなの?」
『見せかけって……鞄だけ預けて速攻で帰れば良かった……』
「今、なんて言った?」
『いや、別に』
男はローブのフードを脱ぎ、仮面は外さず、音声を加工する機械の電源を切った。
その男の正体は……嫌々ながら和の手伝いをしている鳴上。
あれから何度も脅迫してくるため、断ることができず、引き受けることに――
しかし、来栖と由佳は彼女らが裏で動いていることは知らない。
「なごみん、ヤバいんだけど……」
「何?」
「弟くんと神永に脅された。神永は慣れてるから良いんだけどさ……弟くん、別人のように怖いし、普段より口が悪いんだが……返り血塗れでだったから、まるで狼に見えた」
「海斗。さっきから思ってるけど、由佳さんのことを仔犬って……人のことを動物に例えるのが好きなの?」
彼は由佳に仔犬と言い、最低だと言われたところだった。
さらには付き合いが浅い来栖には狼みたいだと言ったところで和は疑問に思い、問いかけた。
「好きでも嫌いでもないが……動物に例えたらちょっとは和むじゃん?」
「もしかしたら、バレてるかも……」
「え!?」
「海斗が何時もそのやり取りをしてると由佳さんには確実にバレてると思うよ?」
「いや。普段は神永がいる前では話したことがない」
「ってことは……セーフっていうこと?」
「その通り。あの二人はガチだぞ。黒幕も連れて来いって言ってたし」
「後輩に脅される先輩も面白いけど……こちら側は私と海斗しかいないし。私が相手になるかは分からないけど……」
彼女はノート型のパーソナルコンピューターを閉じ、ダッシュボードに放置された仮面をつけ、フードを目深に被る。
機械の電源を入れ、『あーあー』と機械によって加工された音声が生み出された。
『行くよ!』
「なごみん。武器は?」
『弟のものをこっそり借りてきたから大丈夫』
「はいはい」
鳴上は呆れたように支度する。
拳銃の銃弾の残量を確認するが、予備を持参していなかった。
『なごみん。銃弾の予備、持ってない?』
『あるよ。合うかどうかは分からないけど』
和は来栖のところから持ってきたものを手渡す。
銃弾は偶然にもサイズがぴったりだった。
『おっ!? ぴったりだ! サンキュー』
『もう大丈夫?』
『ああ』
二人は車から降り、来栖たちの指示があった場所へ向かう。
黒幕とその手下として――
†
「誰かが来る」
「本当ね」
足音に気が付く来栖と由佳。
彼は脱げてしまった彼女の靴を履くために肩を貸している。
「履けたか?」
「ええ」
「あいつらにここに来いと指示を出したのは俺たちだ。来ないのは可笑しいだろう?」
「そうね」
近づいてくる二つの影――
指示を出した男の他にもう一人背丈の低い同じような外見の人物が姿を現した。
「……ようやく黒幕のお出ましか?」
来栖と由佳は彼らに嘲笑した。
2026/07/07 本投稿




