#5
今回も前回に引き続き、人を殺める場面や死描写、グロ描写(?)といった残酷描写が含まれております。
苦手な方はご注意ください。
「素直に答えなさい?」
由佳の手には血の付いた小型ナイフを片手に氷のような冷たい声が耳元で囁かれる。
「君には申し訳ないが、通り名は存在しているのか教えてほしい」
「私? 黒薔薇」
「随分、洒落た通り名だな」
「何か問題でも?」
「いえ。何も……」
来栖は彼女に視線を合わせたいが、彼が由佳を見下ろすになるため、非常に目のやり場がない。
胸元の刺青はもちろん、威圧感を感じさせられる黒を基調とした化粧。
その容姿は死神か――
それとも悪魔か――
「貴方の通り名は事前にお姉様から伺っているわ」
「チッ……姉さんめ……」
舌打ちをする来栖。
彼の通り名は「月下の殺戮者」と呼ばれているのだ。
来栖の右手には安全装置を外した拳銃を構え、スコープを覗き込む。
彼らがいる位置からは少し離れているが、敵がいることは間違いない。
「そうかしら? 殺戮者さん」
「好きに呼べ」
「そうさせていただくわ」
「今から撃つから耳でも塞いでいろ」
「貴方にも冷酷な面があるのね。口が悪くなってきているわ」
「君もな。良い意味で声が怖い。その見下した感じの黒い瞳もな」
「それは褒めていらっしゃるの?」
「さぁな。どう捉えるかは君次第だ……」
パンッ!!
ターゲットを捉え、静かになったタイミングで拳銃を発砲する。
「兄貴!? おい!」
銃弾は男の心臓を射抜き、その場で倒れた。
二人目の男が彼の元へ駆けつけ、身体を揺すり、起こそうとする。
心臓音がしない。
ドクドクと流れ出る血液――
「テメエ! よくも、兄貴を!!」
「そっちはすでに屍だ。あんたも同様の手段で死ぬか?」
二人目の男の額に銃口を当て、ニタリと口角を上げつつ、脅迫する来栖。
銃声に聞き慣れている由佳が背後から回り込み、「あら」と声が鳴る。
「貴方はさっきの方のお連れ様だったのね……」
「げっ、まだいたんかよ!?」
「殺戮者。私もお相手致しますわ」
「ご自由に」
男を挟むようにして会話をしている二人。
彼女はその男の正面に移動し、ずっと持っていた小型ナイフをちらつかせる。
「遠慮容赦なく殺らせていただくわ!」
「女なのに物騒なものを……」
「何処かの誰かさんが言っていた台詞と同じよ」
「その誰かさんと同類か?」
「ええ」
嘲笑しながらナイフを心臓に目掛けて突き刺す由佳。
来栖はじたばたしている男の背後に回って逃がさぬよう取り押さえていた。
「動くな!」
「……ぐっ……」
「残念。外れてしまったわ」
「や、めて、くれ……」
彼は「もう一度、刺せ」と口を動かし、指示を出す。
彼女の懐から医療用メスを出し、三回程度突き刺した。
由佳の頬に返り血を浴びる。
彼らはドサッと崩れ落ちた男の亡骸を放置した。
†
二人はしばらくの間、戦闘を重ねていた。
敵の人数は減っているにもかかわらず、彼らの感覚では変わらないような感覚。
「今、彷徨いている奴らは全員敵なんだろう?」
「おそらくそうだと思うけれど……」
「さっさと殺ってしまえば良い」
「「利益のためなら手段を選ばない」ということかしら?」
「ああ」
「貴方は冷酷非道ね」
「君も同士ではないか?」
「私もそうかもしれないわ。良くわからないけれど、裏で何かあったり……」
由佳が話した通り、その裏では彼らを操る者がいた――
2026/07/04 本投稿




