表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

#4

今回は人を殺める場面や死描写、グロ描写(?)といった残酷描写が含まれております。

苦手な方はご注意ください。

 彼女らは駐車場へ向かって歩いている。


「ようやく、終わったな」

「ええ。ほとんど貴方(あなた)は寝ていらしたのですが? しかも、一番前の席で(・・・・・・)

「おまえが「前の席にしましょう」って言ったから付いてったのに……」

「意見を述べたのはほとんど私。これでは組織(BFF)の恥ですわ」


 鳴上(なるかみ)は会合の途中で寝ていた。

 困った由佳(ゆいか)は彼の太ももを指で突いたり、(ヒール)の踵を踏んだりして起こす。

 その繰り返しだったため、発言のほとんどが彼女だった。


 さて、BFFとは鳴上や由佳が属している組織「Blood(ブラッド) Fairy(フェアリー) Family(ファミリー)」の英単語の頭文字から取った略称である。


 裏社会では構成員は女性より男性が圧倒的に多い。

 そこから幹部や首領を務めている女性は少数派。


 中には由佳のように身寄りのない少年少女が拾われ、暗殺のスキルを磨き上げ、昇進していくパターンもあるが、ほとんど男性。


「肩が()る会合は嫌いだが、(めし)だけは(・・・)(うま)かった。元ご令嬢(・・・・)の神永からすると?」

元令嬢(・・・)の私から言わせていただきますが、お食事はとても美味(びみ)でしたわ」

「おまえ、華奢(きゃしゃ)なのに良く食うよな……」

「これでも控えめにしたのですが、何か?」

「いや、なんでもない」

「今の発言はデリカシーに欠けますわね。発言には気を付けた方が(よろ)しいかと?」

「以後、気を付けます……車を動かす前に退勤を押せ」

「はい」


 今回の会合は食事会も兼ねており、車を運転する鳴上は当然のこと。

 由佳は依頼という名の任務が入っているため、飲酒を控えていた。

 しかし、華奢な身体(からだ)つきにもかかわらず、彼よりも食事を()っていたが、これから激しく動くため、彼女が普段食べる量の六割程度で止めていたのだ。


 彼らは車を見つけた後、スマートフォンを取り出す。

 勤怠管理アプリの画面を立ち上げ、退勤を押した。


 車が動き出す。


 現在の時刻は十九時五十分。

 由佳の依頼開始時刻まであと一時間程――


 彼女は運転に集中している間に(あか)い口紅を落とし、車のフェンダーミラーを使用して黒口紅(くろリップ)に塗り替えた。

 Yシャツのボタンを胸元まで外し、黒手袋をはめていく――


鳴上(なるかみ)さん。降ろしていただけますか?」

「ここでいいのか?」

「ええ」

「鞄は?」

明後日(あさって)まで預かってくださらない?」

「明後日まで!?」

「明日は私が非番でこれからですと依頼が入っていますし、重要な書類を血塗(ちまみ)れの手で触れたくないので。では、失礼いたしますわ」


 由佳の口から出てきた物騒な台詞(セリフ)と共にシートベルトを外す。

 鳴上が「おいっ!?」と言ったが、もう遅かった。

 バタンと車のドアが閉まる。


「会合のあとに依頼が入っていたのかよ!? この鞄、どうしよう……なごみんのバー(ところ)で預かってもらうか……」


 鳴上の車の助手席には由佳の鞄だけ残されていた。


 車を出た途端に彼女は光輝く物体を投げている。


 光輝く物体……それは予備として準備していた小型ナイフ――


 今の由佳の()には光などない。

 今にも(わら)いそうな漆黒の眼で様子を(うかが)っている。


「そろそろ、身体(からだ)何処(どこ)かに刃物(ナイフ)が入る頃合いね……」


 少し舌を出して舌舐(したなめず)りをし、静かなる嘲笑(ちょうしょう)――


 彼女は小型ナイフを的外れな方向に投げたわけではない。


 それは敵を的確に()らえていた。


「……」

「……なんだ!?」


 来栖はグサッという音を耳にした。

 小型ナイフが突き刺さり、頭部から血をダラダラと流し、膝から崩れるように倒れていく。


「……刃物(はもの)?」

「あらあら。タイミングが良かったようね……」


 聞き覚えのある女の声がした。

 周囲を見渡すと街灯に照らされ、全身黒ずくめの女が(わら)って立っている。


「ゆ……い、いつの間に!?」


 彼はすぐに気付き、彼女の本当の名前(リアルネーム)を呼ぼうとしたが、敵にその名前を知られてしまうリスクが――

 しかし、残念なことに互いの通り名(コードネーム)は知らない。


「さっきからいたわよ。依頼が入ったから」

「……ほう……奇遇だな」

「貴方のターゲットのうちの一人でしょう? いいえ、ここは私たちの(・・・・)と言った方が妥当(だとう)かもしれないわね。敵は一人だけれど取り逃さなかったわよ」

「感謝するが……まだ敵はいる……」

「知っているわ。今、貴方は私のこと本当の名前(リアルネール)で呼ぼうとしたでしょう?」


 由佳は来栖と視線を合わせず、突き刺した小型ナイフを引き抜き、その場で血液を振り払う。


 引き抜いた反動で地面には飛び散る血痕(けっこん)――


「……何故(なぜ)かしら?」


 彼は彼女の声色(こわいろ)と表情に恐怖を感じていた。

2026/07/03 本投稿・誤字修正等行う。

2026/07/04 前書き欄追記

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ