#4
今回は人を殺める場面や死描写、グロ描写(?)といった残酷描写が含まれております。
苦手な方はご注意ください。
彼女らは駐車場へ向かって歩いている。
「ようやく、終わったな」
「ええ。ほとんど貴方は寝ていらしたのですが? しかも、一番前の席で」
「おまえが「前の席にしましょう」って言ったから付いてったのに……」
「意見を述べたのはほとんど私。これでは組織の恥ですわ」
鳴上は会合の途中で寝ていた。
困った由佳は彼の太ももを指で突いたり、靴の踵を踏んだりして起こす。
その繰り返しだったため、発言のほとんどが彼女だった。
さて、BFFとは鳴上や由佳が属している組織「Blood Fairy Family」の英単語の頭文字から取った略称である。
裏社会では構成員は女性より男性が圧倒的に多い。
そこから幹部や首領を務めている女性は少数派。
中には由佳のように身寄りのない少年少女が拾われ、暗殺のスキルを磨き上げ、昇進していくパターンもあるが、ほとんど男性。
「肩が凝る会合は嫌いだが、飯だけは旨かった。元ご令嬢の神永からすると?」
「元令嬢の私から言わせていただきますが、お食事はとても美味でしたわ」
「おまえ、華奢なのに良く食うよな……」
「これでも控えめにしたのですが、何か?」
「いや、なんでもない」
「今の発言はデリカシーに欠けますわね。発言には気を付けた方が宜しいかと?」
「以後、気を付けます……車を動かす前に退勤を押せ」
「はい」
今回の会合は食事会も兼ねており、車を運転する鳴上は当然のこと。
由佳は依頼という名の任務が入っているため、飲酒を控えていた。
しかし、華奢な身体つきにもかかわらず、彼よりも食事を摂っていたが、これから激しく動くため、彼女が普段食べる量の六割程度で止めていたのだ。
彼らは車を見つけた後、スマートフォンを取り出す。
勤怠管理アプリの画面を立ち上げ、退勤を押した。
車が動き出す。
現在の時刻は十九時五十分。
由佳の依頼開始時刻まであと一時間程――
彼女は運転に集中している間に紅い口紅を落とし、車のフェンダーミラーを使用して黒口紅に塗り替えた。
Yシャツのボタンを胸元まで外し、黒手袋をはめていく――
「鳴上さん。降ろしていただけますか?」
「ここでいいのか?」
「ええ」
「鞄は?」
「明後日まで預かってくださらない?」
「明後日まで!?」
「明日は私が非番でこれからですと依頼が入っていますし、重要な書類を血塗れの手で触れたくないので。では、失礼いたしますわ」
由佳の口から出てきた物騒な台詞と共にシートベルトを外す。
鳴上が「おいっ!?」と言ったが、もう遅かった。
バタンと車のドアが閉まる。
「会合のあとに依頼が入っていたのかよ!? この鞄、どうしよう……なごみんのバーで預かってもらうか……」
鳴上の車の助手席には由佳の鞄だけ残されていた。
車を出た途端に彼女は光輝く物体を投げている。
光輝く物体……それは予備として準備していた小型ナイフ――
今の由佳の眼には光などない。
今にも嗤いそうな漆黒の眼で様子を窺っている。
「そろそろ、身体の何処かに刃物が入る頃合いね……」
少し舌を出して舌舐りをし、静かなる嘲笑――
彼女は小型ナイフを的外れな方向に投げたわけではない。
それは敵を的確に捕らえていた。
「……」
「……なんだ!?」
来栖はグサッという音を耳にした。
小型ナイフが突き刺さり、頭部から血をダラダラと流し、膝から崩れるように倒れていく。
「……刃物?」
「あらあら。タイミングが良かったようね……」
聞き覚えのある女の声がした。
周囲を見渡すと街灯に照らされ、全身黒ずくめの女が嗤って立っている。
「ゆ……い、いつの間に!?」
彼はすぐに気付き、彼女の本当の名前を呼ぼうとしたが、敵にその名前を知られてしまうリスクが――
しかし、残念なことに互いの通り名は知らない。
「さっきからいたわよ。依頼が入ったから」
「……ほう……奇遇だな」
「貴方のターゲットのうちの一人でしょう? いいえ、ここは私たちのと言った方が妥当かもしれないわね。敵は一人だけれど取り逃さなかったわよ」
「感謝するが……まだ敵はいる……」
「知っているわ。今、貴方は私のこと本当の名前で呼ぼうとしたでしょう?」
由佳は来栖と視線を合わせず、突き刺した小型ナイフを引き抜き、その場で血液を振り払う。
引き抜いた反動で地面には飛び散る血痕――
「……何故かしら?」
彼は彼女の声色と表情に恐怖を感じていた。
2026/07/03 本投稿・誤字修正等行う。
2026/07/04 前書き欄追記




