3-24 探せ! 七不思議の謎
小学六年四組の仲良しグループは、ある日、現代の七不思議を探索しようと決める。
そうして日程などを話し合っているうちに、徐々に不思議な出来事に巻き込まれていき……
「なあ、学校の七不思議って知ってるか?」
蝉の声が街を包む真夏のある日、帰りの会が終わるや否やいきなり城見壮太がそんなことを言い出した。
「トイレの花子さんとかベートーヴェンの絵画が動くってやつだよね! 最近アニメで見たよ」
「でたよ、輝の高速詠唱。アニメの話になるとこれだもんなー。普段の授業では一切しゃべらないくせに」
クラス一のアニメオタク高梨輝がいち早く反応し、霧島昌也が茶々を入れる。幼馴染の二人は、性格は真逆であるからこそ常に仲良く一緒にいる。
「べ、べつにしゃべらないわけじゃないよ……。ただ先生が宇宙語話しててぽかんとしてるだけで……」
「宇宙語って……」
「もー! 脱線しないでよ」
昌也があきれていると、話の腰を折られた壮太が少しむすーっとしながら話題を戻そうとした。
「わりいわりい。で、何の話だっけ?」
「だーかーらー学校の七不思議についてだって!」
「あ、そうだった。で、それがどうした?」
「いや、最近じゃ聞かなくなったなーってさ……」
「俺、壮ちゃんが言いたいこと分かったよ」
輝がまるで名探偵が推理を披露する風を装って眼鏡をくいっとさせた。
「え、なになに?」
「つまり、俺たちでその学校の七不思議を確かめてみようってことさ!」
「正解! さっすが輝!」
「やったね! で、何をどう確かめるの?」
「てか、そもそも学校の七不思議、俺一つも知らねーぞ」
「私知ってるよ」
堀野夏姫が唐突に会話に混ざってきた。
「え? マジかよ! 教えてくれよ」
「いいけど、その楽しそうな話私たちも混ぜてよ!」
「そうよ、男子だけで楽しいことを独占するなんてズルい」
夏姫に続いて、及川陽菜乃と田中夕陽までもが話を聞きつけてやってきた。
壮太は数秒天を仰ぎながら考えた後、
「よし、じゃあ、この六人で学校の七不思議を確かめてくぞ!」
とみんなの顔を見回しながら女子陣の参加を承諾した。
よく見ると壮太は頬の緩みを必死に隠し、いつもと同じ風を装っていた。
六年生に上がって可愛さが増した夕陽ちゃんに声をかけられて有頂天になっているのだろう。
「で、七不思議全部知ってるってのは本当なんだろうな!」
少し声が上ずりつつ壮太が話を続けた。
「うん、もちろん!」
「そもそもなんで知ってるんだ?」
「私のお姉ちゃんがね、オカルト好きなの。学校の七不思議についてはもう耳にタコができるほど聞いたよ」
「なるほど、なんにせよ助かるぜ」
「えっとね、さっき壮太が話してた『トイレの花子さん』と『音楽室のベートーヴェン』の他に、『動く二宮金次郎像』でしょ。」
「ちょっと待って。二宮金次郎の像なんてそもそもこの学校にないよ?」
「知らないよ。あくまでお姉ちゃんが言ってただけなんだから」
「そうだよ陽菜乃。一回最後まできこーぜ」
「う、うん。わかったよ輝」
「じゃあ続けるね。『理科室の動く人体模型』に『増える教室』、『泣きながら鉄棒をする男の子』」
「逆上がりのやり方教えたら仲良くなれるかな?」
良いところで昌也が茶々を入れる。男子ってなんでこうも茶々を入れないと話ができないんだろうかという目線で、夏姫が昌也をにらみつつけた。
「もう、最後まで聞いてってば」
「ごめんごめん、で、最後の一個は?」
「最後の一個はね……わからないの」
「は? わからない?」
みんなキョトンとした顔で夏姫の顔を見る。
「そりゃないぜ~」
「いや、正しくは『わからない』って不思議なの」
一同の頭の上にハテナが浮かんでいる中、夏姫が話を続ける。
「どこかの教室で、何かが起こるんだけど、学校を出たら忘れてしまうの。だから『わからない』って不思議」
「なる……ほど?」
「ま、まあこれで七つ全部でたね」
夕陽が自分もわからないけど早く話を進めようと促した。
「そ、そうだな。じゃあ、この七不思議を全部確かめよう!」
「全部って言ったってどうやって?」
「そうよ、さっきひなっちが言ってた通り二宮なんとかの像なんて学校にないし」
陽菜乃と夕陽が口々に壮太に詰め寄る。
「それも含めて今からみんなで考えようぜ」
「なんだノープランなのかよ」
話が白熱し始めたその時、教室のドアがガラガラと音を立てて開いた。
「おーい。まだ残ってたのか。早く帰りなさい」
担任の河野がタイムリミットを告げに来た。
「ちぇ。しゃーない。続きはあとでグループ作って連絡するわ」
「わかった。だけど除け者にしたら許さないからね!」
夏姫は抜け目なく壮太に念押しをしたあと、女子三人で教室を後にした。
輝が荷物をランドセルに詰めるのを待って男子陣も帰路についた。
――【ロクヨン不思議探検隊】に招待されましたーー
昌也が家に到着したとき、スマホにグループの招待が届いた。
ロクヨンはたぶん六年四組の略だろう。壮太らしいネーミングだなと思いつつ、招待されるままにグループに参加した。
壮太〈全員集まったな〉
夏姫〈ちゃんと私たちも招待してえらいじゃん〉
壮太〈あたりまえだろ〉
〈除け者にしたら明日が怖いもん〉
夏姫〈ん?〉
壮太〈いえ、なんでも〉
輝〈で、何からきめる?〉
夕陽〈そりゃ、二宮なんとかの話からじゃない?〉
陽菜乃〈うん、さっきも言ったけど学校にないよ〉
壮太〈けど中庭になんか変な像あるじゃん〉
輝〈あーあるね〉
昌也〈あれが代理?〉
壮太〈うん、そうしようかなって〉
夕陽〈えーそれって調べたってことになるの?〉
陽菜乃〈あ、今思い出したんだけど、確かコバセンが机に飾ってなかったっけ〉
コバセンとは、国語の先生で大の二宮金次郎ファンである。
職員室の机の上に木彫りの二宮金次郎像をいつも飾ってある。
輝〈あー確かに。あのへんてこりんなやつ!〉
壮太〈その案いただき!〉
夕陽〈ひなっちやる~〉
昌也〈コバセンの像なんかでいいのかな……〉
夕陽〈じゃあ、昌也が代案出してよ!〉
昌也〈そういわれても……〉
壮太〈じゃあ、昌也が代案だしたらそっちで。なければコバセンの像で〉
昌也〈わかった。いい案考えてみせるぜ〉
壮太〈オッケー期待してる。じゃあ次は〉
そこからワイワイと計画を練っていった。意外とみんな乗り気で、「トイレの花子さんを探すのにあたって三階にトイレがない問題」など色々な話で盛り上がり、気が付いたら一時間が過ぎていた。
壮太〈あとはどう回るかだな〉
輝〈あと、実行日も!〉
壮太〈やっぱ夏休みかな〉
夕陽〈てか、夜にやるんだよね〉
壮太〈そりゃ、夜中にやらないと意味ないだろ〉
夕陽〈そうだよね……〉
輝〈みんな家抜け出せんの?〉
壮太〈あ、そうか〉
陽菜乃〈私はいけるよ~〉
昌也〈いけるんだ!〉
壮太〈夕陽は?〉
夕陽〈んー厳しいかも……〉
壮太〈やっぱそうだよな……〉
〈夏姫はどうだ?〉
そんな壮太の問いかけに沈黙が流れる。既読の数も四から五に増える気配がない。
壮太〈おーい〉
〈おーい〉
壮太がなおも呼びかけるが、返事がない。
夕陽〈きっと忙しいんだよ〉
陽菜乃〈そのうち連絡あるよ~〉
輝〈とりあえず日にち先に決めよ〉
壮太〈んーそうだな〉
陽菜乃〈お盆休みはどう?〉
〈いかにもお化けいっぱいいそうじゃない?〉
昌也〈え、そういう問題か?〉
壮太〈あり……かも?〉
輝〈わりい、お盆休みは家族で新潟のじいちゃんのところに行かなきゃなんだ……〉
壮太〈マジか〉
輝〈うん、すまん〉
陽菜乃〈じゃあ、七月二十四日は?〉
壮太〈なんか中途半端だな〉
〈何の日?〉
陽菜乃〈七二四ぎってね〉
昌也〈だじゃれかよ〉
陽菜乃〈わるい?〉
昌也〈いえ、滅相もありません〉
壮太〈他の人はどう?〉
皆が賛成の声をあげる中、なおも夏姫からは返信がなかった。
壮太〈夏姫が問題なかったらこの日で!〉
〈OKかどうかだけ暇なときに送っといてー〉
なおも夏姫からの連絡がないことに全員が少し不自然に感じつつも、とりあえず日程が決まったことと、夏姫がいないと話が進まないということでこの日はお開きになった。
しかし、この日を境に夏姫と連絡が取れなくなるのだった――





