⑨最強には、最強を送れ
舞台は日本・中国・オーストラリアの思想や文化が混在する未来都市「埠頭」。
金銭と引き換えに、VRMMO・ミリオンバレッツの勝たせ屋、傭兵として生き抜く少女シェン。
シェンがスカウトされた世界戦とは、何と、国の統治権をミリオンバレッツの四ヶ国トーナメントで決めるという、VRMMOを戦争の平和的代替とするという人類史上初の試みだった。
シェンは事務所から5駅程の場所にあるゲームセンターに来ていた。
ここに、”そのプレイヤー”がよく顔を出すらしい。
そのプレイヤーはスナイパーライフルの使用頻度が高く、idの「13」という数字の為、
「サーティーン」転じて「サティ」とネットで呼ばれている。
シェンはサティと試合した経験が無い。なぜならサティはソロリーグにしか出ていないからだ。
ミリオンバレッツは4人でチームを組む形を推奨しているが、
ソロプレイしたいという層に向けてソロモードが存在している。
ソロはその時間内に集まった初見のプレイヤー4人で1チームとなって戦う。
通常のチーム戦と分けられるのは、ソロ同士では連携が未熟で勝ち目がないからだ。
その中でサティは群を抜いたウィンレートを誇っており、
ソロリーグ最強のプレイヤーとして知られている。
ミリオンバレッツでソロプレイができるゲームセンターは、
通常のチームプレイを行うゲームセンターより少なく、限られている。
会える可能性はある。
ソロモードの受付終了前にゲームセンターに入る。
5部屋にプレイヤーが待機していた。しめた。
ここに今、サティがいるなら共闘、もしくは対戦できるかもしれない。
組み合わせをローカル優先にすれば埠頭のプレイヤーと優先してプレイできる。
さらに、スナイパーライフルを武器に選べば、
武器被りしないように散らされて対戦する可能性はさらに上がる。
ソロの最強プレイヤーと対戦すると思うと、心に火が入った。
部屋に入るとゲーム開始の鐘が鳴った。ヘルメットを身に着ける。
対戦メンバーが発表される。
「!!」
相手チームに13のidがいる!サティだ!
廃ビルの立ち並ぶ戦場へ転送される。リスポーンありの殲滅戦。
30分以内に取った全体のキル数で競い合うものだ。オールアウトあり。
試合が始まった。
自チームの1人を除く全員が腕からワイヤーを伸ばす。
廃ビルに登る。シェンは狙撃ポイントを探してビルの屋上を走る。次の瞬間
______ターンッ_______
という銃声が鳴り響く。
スナイパーライフルの音だ。
「!?」
同時にチームメンバーの1人が落とされたと通知が入る。
(早い!)
シェンはビルの屋上の縁まで走ると、味方二名と交戦中の敵二名を見つけた。
距離は1200。立ったまま引き金を引く。
_____タンターンッ______
二名をヘッドショット。仲間がすぐに敵地に切り込んでいく。
シェンは二人のバックアップの為にワイヤーでビルを飛び移り前進する。
その時、タンッタンッとスナイパーライフルの銃声が響き、
先ほどの二名がスナイパーに落とされた。
サティは機会を逃さない確実な狙撃をしている。
それも二名連続ヘッドショットとは、まるで自分がもう1人いるようだ。
ドクンッと心臓が鳴る。最強を冠するプレイヤーとの戦い。
自分らしくない程、燃えている。
自分は、ミリオンバレッツにこんなに熱中できたのか、と驚いてさえいる。
シェンは、”このプレイヤーに勝ちたい”と強く思っていた。
仲間が狙撃された地点の近くのビルで腹這いになり、双眼鏡を覗く。
目の端にヒラッと舞う影が見えた。距離は1500。
(約1500mでヘッドショットを二連続で取ったのか・・・。
最強のソロプレイヤーの看板に偽り無し、か。)
久しく見ない好敵手との戦い。ワクワクする心とは裏腹に、頭はキンキンに冷えていく。
残り26分。勝つのは私だ。
つづく
副題: -One of Million Bullets-
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