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キルレ世界1位の家出少女の傭兵生活 -One of Million Bullets-  作者: 相模原ケイ


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10/21

⑩”領域”を持つもの

 舞台は日本・中国・オーストラリアの思想や文化が混在する未来都市「埠頭」。

金銭と引き換えに、VRMMO・ミリオンバレッツの勝たせ屋、傭兵として生き抜く少女シェン。

 シェンがスカウトされた世界戦とは、何と、国の統治権をミリオンバレッツの四ヶ国トーナメントで決めるという、VRMMOを戦争の平和的代替とするという人類史上初の試みだった。

 この日、ミリオンバレッツのソロモードは異様な様相を呈していた。

二人の抜きんでたプレイヤーが圧倒的キル数を稼ぎ、他のプレイヤーはほとんどの時間をスナイパーから逃げ惑い続けていた。


フィールドに軽い雨が降ってきた。天気雨だ。

途中から天候が変わるのは、ミリオンバレッツではよくある趣向だ。

 しかし変わったのは、フィールドの天候だけでは無かった。

シェンは、自分が今”ゾーン”(領域)に入っていることに気付いた。

シェンは強敵に相対した時、ゾーンに入ることがある。

ゾーンに入ると、全てがゆっくりと動いているように感じる。

戦場に降る雨の一滴一滴が見えるようだ。

そして、自分を頭上から俯瞰して見ているような感覚が発露する。

 ゾーンはオリンピック選手等のトップアスリートの世界では有名な話であり、ゾーンを持つという事はシェンがトップアスリートに序される証明でもあった。


 シェンはワイヤーでスイング移動しながら平地の遮蔽物に隠れたエネミー1人をヘッドショットした。

縦横無尽。どこからでも撃つ。雨のシチュエーションでも精度は鈍らない。


 シェンがキルを取るのと同等の間隔でサティはキルを取る。

一応シーソーゲームの形には成っているが、これでは目的を果たせない。

 シェンの目的は、サティに世界戦の仲間になって貰うことだ。

”自分より強い”と思って貰わないと話を聞いて貰えないだろう。

このままキル数を積み重ねても説得材料にならない。

試合に勝つのは最低条件。

1 on 1でサティを倒す。それが絶対条件だ。

 スナイパーに対するカウンタースナイパー。危険だが、時にそれは必要になる。

ゾーンに入ったシェンにはサティの大まかな射程距離がフィールドの上に円の形で見えている。

恐らくサティにも似た能力がある。

ここまで二人が邂逅しないのは、二人がお互いの射程に入ろうとしない為だ。


 不入虎穴,焉得虎子。虎穴に入らずんば虎児を得ず、と言う。

故にシェンは危険を犯す。

サティの牙が届く範囲、射程の中に足を踏み入れる。

___ドクンッ___

心臓が高鳴る。ここはサティの狩場だ。

その時、仲間がキルを取られたという通知が入る。このプレイヤーはサティの領地でサティを叩こうとしていたはず。

つまり、このプレイヤーが倒れた地点の近くにサティがいるかもしれない。


 ワイヤーでビルの縁から縁に飛び移って移動する。仲間がキルを取られた地点の近くのビルに飛び乗ると、すぐに腹這いになる。

両目でサティを探す。距離1000に標準アバターのスナイパーを発見。

サティだ!見つけた!確定距離!撃つ!

サティはこちらを向いている。立ったままライフルを構えている。

私なら先に撃てる、撃たねば、撃つ、

引き金を引く、

___ターンッ___

ほぼ同時に2丁のライフルが放たれた。

弾がシェンの頬を掠めた。近くのコンクリートの床に着弾する。

全身から汗がぶわっと噴き出す。

サティは!?

サティは視界の中にいない。キルアラートもない。

仕留められなかった。

(久々に狙撃を外した・・・。)

カウンタースナイプは命をかけたにらめっこだ。

先に撃っても命中しなければ意味が無い上に、無防備な状態で相手の狙撃を待つことになる。

お互いが外すというのは珍しいケースで、二人の力が拮抗していなければ起き得なかっただろう。


残り11分

埠頭最強の称号は誰の手に。


副題: -One of Million Bullets-

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