⑪狩る者、狩られる者
舞台は日本・中国・オーストラリアの思想や文化が混在する未来都市「埠頭」。
金銭と引き換えに、VRMMO・ミリオンバレッツの勝たせ屋、傭兵として生き抜く少女シェン。
シェンがスカウトされた世界戦とは、何と、国の統治権をミリオンバレッツの四ヶ国トーナメントで決めるという、VRMMOを戦争の平和的代替とするという人類史上初の試みだった。
今日のミリオンバレッツは、まるで難解なパズルを解いているようだった。
不確定事項はサティ以外にも、狙撃位置を予測して強襲してくるエネミーの存在。
ビルの縁に立ち双眼鏡を覗いたその瞬間、背後に着地音。
急いで振り向く。白いアバターに斑な迷彩柄を施したプレイヤー。
こいつだ。狙撃位置を予測し、強襲してくるアサルトライフル使い。
アサルトライフルは中距離までが射程だが、近距離ではさらにキル性能が高い。
※弾切れが早いという弱点がある。
__距離的に確定不利__
ゾーン状態のシェンはすぐに最適解を出した。
シェンはビルから素早く飛び降りた。
追うように迷彩柄エネミーが飛び降りる。
シェンは既に着地している。
迷彩柄は「しまった」と思っているだろう。
ライフルを宙に向かって構える。発砲音が響く。
キルアラートが鳴った。
(今だ。)
とシェンは思う。
サティとの決戦の準備が整った。裏取りしてくる迷彩柄は落とした。
残り時間が3分をきった。
そしてここはサティと私の射程圏が接している場所だ。
距離が2000だろうと2500だろうと、今の私なら決めてみせる。
サティは恐らく、ワイヤーで空中移動せず、
地面を走ることが多いのだろうと思う。
その点ではプレイスタイルがシェンと異なる。
いくつかのビルを飛び移る。
飛び移った瞬間に見敵。
女子用の通常アバター、サティだ!!市街地を走っている。
距離は2200。当てる。
ライフルの照準器を覗くと、サティもこちらを狙っている。
さっきのようなミスショットはしない。確実に当てる。
ここだ!
銃声が響く。
キルアラートが鳴る。
(サティを落とした!)
もう一つ、死亡アラートが鳴った。画面が真っ暗だ。
「!?・・・相打ち?」
リスポーンを待っている間に、ゲーム終了の合図が聞こえた。
心臓がドキドキする。すぐにリザルト画面が出る。
チーム全体のキル数で勝敗がつく。
”Lose 81キル ー 84キル”
負けだ!!ミリオンバレッツで、負けた!!
一体何戦ぶりの敗北だろう。ううう。奥歯を噛みしめる。
続いてプレイヤー毎のキル数での順位が表示される。
”一位 sixenn 63キル
二位 13_520 59キル”
個人のキル数では勝ち。しかしこれでは勝ったとは言えない。
サティとの1on1で相打ちにしか出来なかった。
感覚が現実に戻って来る。筐体部屋でヘルメットを取ると、
負けた事実に今一度奥歯を噛みしめる。涙が出た。
「!」
サティがここにいるか確認しなくては、と気付く。
髪留めを外し、急いで髪を解かす。
部屋のドアをアンロックして外を伺うと、複数の男性の声が聞こえた。
姜子に聞いたが、目撃情報によると、
サティは女性である可能性が高いそうだ。
5部屋の内に一人でも女子がいれば可能性はある。
人の数を数えると、部屋から出てきた4人は全て男性だ。
一番奥の部屋からはまだ人が出てきていない。
この部屋に女性が居る可能性が高い。ミリオンバレッツでは、女性は対戦後に髪の手入れやメイク直しをしてから出てくるプレイヤーが多い為だ。
女性は何かと時間がかかるのだ。
そして最後のプレイヤーは5分程すると部屋から出てきた。
「?」
その姿は、シェンの想像から大きく外れるものだった。
ダブダブの灰色パーカーで顔どころか手も隠れている。
サイズの合ったズボンを履いて、普段使いサイズのリュックを背負っている。
歩き方で女性だとかろうじて分かる。
パーカー姿の女性は報酬の払い出しのために精算機に向かっていった。
(ここで話しかけるしかない!)
シェンは部屋を出ると、精算機の前に立つ女性に自然に近付いていった。
そして、
「あの、あなたがサティさんですか?」
と問うや否や、サティ(?)が弾かれたように走り始めた。
ゲームセンターの出口に向かっている。
あわててシェンが追う。だが、相手は足が速い。振り切られる。
何と言えば話を聞いて貰えるだろう、とシェンは必死に考えていた。
「我是sixenn!请听我说!」
(私はシェンです!話を聞いて下さい!)
と中国語で叫んだ。
すると、パーカー姿の女性が立ち止まった。
警戒しながらこちらを見ている。
「你是那位前狙击手吗?」
(あなた、さっきのスナイパーなの?)
つづく
副題: -One of Million Bullets-
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