⑦4ヶ国トーナメント
仮想世界で銃撃戦する大人気VRMMO「ミリオンバレッツ」が一世を風靡している世界。金銭と引き換えにチームに加わり、傭兵として生き抜く少女がいた。
舞台は日本・中国・豪州の思想や文化が混在する未来都市「埠頭」。少女の名はsixenn。シェンは少しずつ世界を動かす潮流に身を投じていく。
「あーーーーーーーっつい!!!」
シェンは水風呂に走り寄り、頭をそのまま突っ込んだ。丸裸だ。
サウナから大道寺姜子が続いて出てくる。
「水風呂に潜っちゃいけないのよ。シェン。」
体にバスタオルを巻いている。髪を腰まで下ろしている。
「今は誰も使ってないからいいじゃない。」
「日本の礼儀というのは、いついかなる時もよ。」
「私中国人だから知りません。それに何で日本の礼儀が出てくるのよ。」
「サウナは日本の心でしょ。」
「フィンランド人が聞いたら驚くでしょうね。」
脱衣所で扇風機に当たる。気持ちいい。今日は露天風呂も入れた。
事務所に行く前に「寄ってかない?」と言われてスーパー銭湯に来た。
姜子はサウナが好きなのだそうだ。私は一回入っただけで十分だった。
水風呂は気持ち良かったが。
先に出て姜子を待つ。ゆったりリクライニングした席で横になる。
天井では空調のファンが回っている。ここは経費で落ちるそうだ。
早々と「事務所に入って良かった」と思っている。
この後に明かされる真実を聞けば、これぐらい当たり前だと思うのだが・・・。
姜子と合流して商業区を歩く。事務所まで5分強だそうだ。
「はぁーーー。平日昼のサウナ最高ー。近くに事務所借りて良かったー。」
シェンも久しぶりの湯舟に体がほぐれて気分がいい。姜子の髪はまたアップになっている。
姜子が髪について尋ねて来た。
「その髪、カラーフィックス*よね。」
「そうよ。もう三年ぐらいこのまま。」
(※髪の色を変え、固定する技術。眉毛など全身の毛にできる。)
シェンは自分の髪を手で梳いてみせる。
「似合ってるわよ。それ。」
「!」
「貴方らしい感じがするわ。」
「謝謝。」
「何で急に中国語なのよ。」
シェンはニッと歯を見せて笑った。
「ここの二階よ。」
「思ってたより小さいのね。」
雑居ビルの一角だった。グレーな界隈なら普通なのかもしれない。
姜子が一階のポストで手紙を確認してから階段を登ると、鍵を開けて事務所の中に入った。
入口に面した部屋は、二つのソファーが向き合っており、その間に木製のテーブルがある。
他にも数部屋あるようだった。
「ようこそ!我が城、大道寺事務所へ!」
二人はソファーに座って向き合った。
姜子が書類を広げている。話し合う事はいくらでもある。
「私の親に知らせないのは絶対だからね。顔も実名も出さない。」
「分かってる。約束する。この細則読んでくれない?良ければサイン。」
シェンは幾つか要点に目を通した。
「契約金無しなの?」
「それは申し訳ない、けど当面の住む場所は提供するし、必要な食料も提供するわ。」
世界戦の賞金の取り分は、メンバーが集まった後に決めるとも言った。
「う~ん。そうくるか。」
それと幾つかの確認が行われた後、シェンは事務所に入ることを決めた。書面にサインする。
ここは流石に実名で書いた。
「ふぅー。これで私達、晴れて仲間ね!」
「もう隠してること話して貰うわよ。」
姜子は座り直すと電子キセルを吸った。
「一応確認するけど、埠頭の統治権の奪い合いが起きているの、
知っているわよね?」
「まぁ、そりゃ。」
「ミリオンバレッツで決めるの。」
「?」
「ミリオンバレッツの4ヶ国トーナメントで勝った国が、埠頭の統治権を手に入れるのよ。」
「そんな馬鹿な!?」
「これはもう各国間では決まってること。でもまだ表沙汰になっていない。
でも、もうすぐ公表されるわ。開催は二ヶ月後。」
「そんな、そんな国家レベルのことが・・・!」
これから予期される様々な状況が頭を駆け巡る。
「今からで集まるの!?メンバー!」
「実は1人内定してるのよ。貴方と合わせて二人ね。」
「・・・!」
「集めるの手伝って欲しいの。」
シェンは大きく息を吐いた。
言われなくてもやる。迷い猫だった頃より忙しくなりそうだ。
つづく
副題: -One of Million Bullets-
読んで頂きありがとうございます。できれば評価お願い致します。




