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キルレ世界1位の家出少女の傭兵生活 -One of Million Bullets-  作者: 相模原ケイ


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4/20

④我らの勝利の女神へ

 仮想世界で銃撃戦する大人気VRMMO「ミリオンバレッツ」が一世を風靡している世界。金銭と引き換えにチームに加わり、傭兵として生き抜く少女がいた。

 舞台は日本・中国・豪州の思想や文化が混在する未来都市「埠頭」。少女の名はsixennシェン。シェンは少しずつ世界を動かす潮流に身を投じていく。


「GAME!」



 ゲームが終了し、体の間隔が現実に戻ってくる。

ヘルメットを取っても、まだ高揚感が残っている。世界ランカーとの試合は楽じゃない。

あっちもこっちも必死だ。

終局的に競争こそが生き物の本質なのではないかと思う。

世界ランクを失ったら、私は動物のように飢え死にだ。


 持っているヘアブラシで髪を整える。鏡があるのは有難かった。

部屋から出るとチームの3人が何か話し合っていた。

マイクが私に気付いて声をかけてくれた。

「シェンさん!今日は流石でした!これが約束の半分です!」

「謝謝!気持ちいい勝利でしたね!」

私の仕事はここまで。中心区の仕事は儲かる。

できるなら毎回仕事があればと思う。

エドとアントはずっと何か話し合っている。断片的に聞こえてくるが。

「しかし未成年だろう。」

「本人に訊くくらい、いいんじゃないか?」

シェンはマイクに尋ねる、

「どうしたの?何か揉めてるの。」

「あー。実はこの後、祝勝会があるんですけど。

シェンさんにも出て貰ったらどうか?と。

費用は我々持ちなんですけど、

シェンさんには若い人の都合があるだろうって。」

マイクは少し困り顔だ。

「どこのお店ですか?」

「よく行くアジア料理店です。美味しいところですよ。

シェンさんの口にも合うと思います。」

費用があちら持ち、というのが決め手だった。

「是非行かせて下さい。この夜を終わらせるにはまだ早い。」



店のテラスの大きな中華テーブルに4人は座していた。

マイク、エド、アントはミリオンバレッツではグッドカーディーラーズというチーム名らしい。

3人は

「我らの勝利の女神に!」

シェンは

「グッドカーディーラーズの勝利に!」

全員が

「乾杯ー!」

と言って杯を飲み干した。シェンはウーロン茶を飲んでいる。

全員が喉を潤すと、話題がわッと噴き出した。

シェンに一番最初に声をかけたのは対面に座ったマイクだった。

「シェンさんは中華系ですよね?もしかして埠頭生まれですか?」と尋ねた。

「中国出身です。母は日本人だから半分日本人ですね。」

ご飯を奢ってもらう以上、ある程度は自分の情報を訊かれるのは仕方ないと思っている。

まともにご飯を食べられる機会は希少だ。

そしてシェンは、最初に注文した顔を隠せるぐらい大きな肉まんを食べ始めた。

「ああ、ハーフでしたか。中国からご家族でいらしてるんですね。

私、日本も好きなんですよ!主に日本食が、ですが。」

シェンも日本食は好きだが、ニコリとして会話を一旦終わらせる。


「シェンさん、車に興味は無いですか?中古車販売が我々の主な仕事なんです。」

エドの質問に対し、ウーロン茶をストローで飲みながら答える。

「車は、んー、電車でいっかなって。」

アントがすかさず

「ほら言ったろ!シェンさんは車興味無いって。」そして

「シェンさんは英語と中国語と、あと日本語が話せるんですか?」

「話せます。日本語は中国語よりレベル低いですど。」

「三ヶ国語話せるんですか!凄いな!」

とマイク。二人も関心している。

シェンは「この人達は素直でいい人だな」と思った。

「埠頭は複数言語話す人が多いですけどね。

結局、英語が一番使われてますし。私は中国語もよく話しますけど。」と話をしめた。


 今日の試合の話をしていると、その流れで3人にミリオンバレッツで強くなる秘訣を訊かれた。

シェンは二杯目のウーロン茶をストローで飲みながら、

「私、S級以下の試合には出ないようにしてるんですけど、

チームメンバーのキルレートが低いと結局勝てないからなんです。

1人だけ世界上位でも3人が下手では勝てないように出来てます。

だから4人の地力と連携を鍛えていくのが地道ですけど、王道だと思います。」

3人はなるほど、などと言いながら話を訊いている。 


シェンは逆に質問した。

「皆さんのチームの4人目の方は病気か何かですか?

訊いていけない事だったらごめんなさい。」

マイクが応えた。

「4人目は別の職場の人だったんですけど、金銭トレードされてしまったんです。

シェンさん程ではなかったんですけど、奴も良いスナイパーでした。」

「野球選手みたいだな。」とアントが笑った。

「トレードっていうか単なる鞍替えだよね。」

「レート2.5以上のスナイパーは希少だからな」

「どうです!シェンさん!グッドカーディーラーズの一員になりませんか!

報酬の半分は渡します!今日みたいに祝勝会もやりますし。」

 少し心が揺らいだ。こうしてチームに誘われるのは何度目だろう。

決まったチームメンバーと打ち解けられたらと思わないでもない。

 だが、無理なのだ。一つのチームに入るようにすると、どうしても税金の話が出てくる。

シェンは現住所と銀行口座のどちらも持っていない。

だからシェンは宿無しの迷い猫としてこの埠頭を彷徨っている。

私が捜索中の家出少女と知られたら、通報されて警察に保護されてしまう。

真実は言えない。家には帰りたくない。

私はこれでいいのだ。


「チームには入りたいんですけど、私、

塾とか習い事が多くてほとんど活動できないので・・・。」

毎回こう嘘をついている。マイクは演技でなく残念そうだった。

「シェンさんはまだ十代ですものね。」と納得してくれた。

エドとアントが4人目のメンバーをどうするか話し合っている。


スナイパーライフルが扱える人間は複数チームを渡り歩くプレイヤーが多いように思う。

実際、S級ともなると上手い人同士でやらなくては勝てない。

現実での繋がりだけでチームを組むのは限界がある。


「チーム全員が練習モードでスナイパーライフルを使ってみるといいですよ。

一番筋のいい人をスナイパーにコンバートすると良いと思います。

そうでなくても、スナイパーの位置取りとか検討付くようになるので、

やって損ないですよ。」

3人は頷きながら真剣に聞いている。

「理想は全員がスナイパーをできることですね。

普通はスナイパー毎に得意・不得意があるので。

2名以上スナイパーがいるチームはルール毎にスナイパーの人選変えたりしてますから。」


 久しぶりにお腹いっぱいまで食べることが出来た。

幸せな気分だ。久しぶりに上機嫌。

「皆さんこの度はセンキューソーマッチ!」

「シェンさん!また会いましょう!できればミリオンバレッツ以外で!」

「シェンさんと戦いたくないものな!」

「確かに!」

全員で笑い合った。


電車に乗ると嘘を付いて調べておいたビジネスホテルに向かう。

久しぶりに熟睡できそうだ。

中心部から3ブロックほど歩くと街も寂れてくる。明かりも薄暗い。

・・・ウーロン茶を飲み過ぎた。こんなことなら店のトイレを借りておくべきだった。

話が盛り上がっていたので気付かなかった。

ホテルまではまだ距離がある。

 あたりを見回すと、防災設備を備えた小さい建物が見つかった。

明かりは消えている。裏手に周れそうだ。

裏手には砂利を敷き詰めたスペースがあった。

しゃがみこんで下着を下ろす。これができるからスカートは楽だ。

自分の中の余分な水分と熱が放出されていく。

フーと息を付いて空を見上げると、小さな月が見えた。

横でざりっと音がした。

驚いて見ると、一瞬何なのか分からなかったが、黒い猫だった。

野良猫だろうか。シェンはしばらく猫と見つめ合っていた。



 立ち上がり、下着を戻す。

またホテルに向けて歩き始める。黒猫が自分を追いかけてきていることに影で気付く。

振り返ると、ちまっと立ち止まり、ナァーと鳴いた。

とぼけた顔だ。

猫はシェンがビジネスホテルに入るまで着いてきていた。

ホテルの建物の前で座り、またナァーと鳴いていた。




つづく

副題: -One of Million Bullets-

読んで頂きありがとうございます。できれば評価お願い致します。

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