③スナイパー対スナイパー
仮想世界で銃撃戦する大人気VRMMO「ミリオンバレッツ」が一世を風靡している世界。金銭と引き換えにチームに加わり、傭兵として生き抜く少女がいた。
舞台は日本・中国・豪州の思想や文化が混在する未来都市「埠頭」。少女の名はsixenn。シェンは少しずつ世界を動かす潮流に身を投じていく。
ゲーム内の戦場は、廃ビルが立ち並ぶ古戦場といった様相だ。
お互いのリスポーン地点はゲームの度に変動する。
まずは相手のリスポーン地点=フラッグの場所を確定させなければならない。
マイクが全員に支持を出す。
「三人で相手の巣箱を探すぞ。
シェンさんは近くのビルで近付くエネミーの排除をお願いします。」
マイクが話し始めるより早く、シェンは目立たない狙撃ポイントを探していた。
仲間のリスポーン地点の少し奥に条件に合うビルが見つかった。
見晴らしが良く、守り易い。
ビルには大小の穴が空いている。その穴から内部に入れる。
手から伸びる「ワイヤー」を引っかけて外面からビルへ侵入した。
屋上への階段を登る。屋上に出るとシェンは腹這いになりスコープを覗いた。
本来、2kmのような超長距離射撃は、狙う価値が高い時以外は避けるべきだと思っている。
確実な距離、1km程度が望ましい。
それでも、ミリオンバレッツの世界で1kmで確実な死を与えるシェンは凄腕としか言いようが無かった。
シェンは「待ち」に入った。スナイパーが最も時間をかける作業は、この「待ち」である。
集中力を常に保ち続け、引き金に指をかけ続け、いつでも死を与える覚悟をし続ける。
それらが優れたスナイパーが持つべき素質だ。
今回のゲームの展開は妙だった。
エネミーのリスポーン地点は既に判明しているのに、
こちらのリスポーン地点付近には敵兵1人現れない。
妙だと思った矢先、マイクから全体へ無線が入った。
「シェンさん!敵兵をどれくらい仕留めましたか!?」
「まだ0なの!エネミーは影も形も無い!」
「やはりだ!これが奴らの作戦なんだ!」
「相手はまるで攻める気がないぞ。守備ばかりしている。」
エドが会話に参加して来た。
「あちらさんのチームはフラッグを獲る気が無いんだ!
チーム四人でキル数を稼いで最後の判定で勝とうとしてるんだ!」
「私もそう思う!私が守備に付くのが見透かされたんだわ。」
アントがリスポーン地点に出現した。
「待機時間に無線を聞いていたよ。あと13分しかない。
勝つには時間内に相手のフラッグを取るしかないな。」
(※リスポーン中は無線を聞けるが、会話には混ざれない。)
「ごめん!私がもっと早く気付いてれば・・・!」
「シェンさんのせいじゃありません。ただ、ここから一働きして貰います!」
全員が無言でマイクの無線に聞き入った。
「相手のスナイパーを仕留めて下さい!
そうすれば数的に互角になるのでまだ勝ちの目があります。」
「分かった!」
シェンはビルのへりにワイヤーを引っかけ、ビルを降りると直ぐにエネミーの方角へ走り始めた。
マイクからの無線はまだ続いていた。
「シェンさん!相手のスナイパーは場所を変えながら狙撃しているようです。
我々3人が狙撃された地点をマップに記しましたのでそれを参考にして下さい。」
「ラジャー!」
エネミー側フィールドの見通しのいいビルの屋上にワイヤーで登る。
フィールドを素早く一望する。ここで撃たれるならもう仕方ない。
マイク達三人はフラッグを守るエネミーと戦っていると無線をくれた。
位置データも送ってくれたが、ここからは見えない位置だ。遠くは無い位置ではある。
スナイパーは、狙撃地点を幾つかに絞り出せる。
シェンは自身を囮にあるものを探していた。
1.5km程離れた立体駐車場の高い階層でキラリと光るそれを見つけた。
スナイパーライフルのスコープだ。
腹這い姿勢になる時間はない。立ったままライフルを構える。
1.5km。私の方が速い。
タンッ、タンッ
二発の銃弾がシェンのライフルから放たれた。
スコープの反射が消えた。
キルアラートが無いが経験上、致命傷を負わせたと分かった。
「皆!スナイパーを行動不能にしたわ!」
「シェンさん!流石です!」
ゲームはあと数分。
最後の後押しをする為にワイヤーで素早くビルから降りる。
街道を走り、角を曲がる。
最初に目に入ったのは、敵のフラッグを手にニコニコするマイクの姿だった。
エドとアントはハイタッチをした。同時に、
「GAME!」
試合終了が告げられた。
つづく
副題: -One of Million Bullets-
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