②世界9位との邂逅
仮想世界で銃撃戦する大人気VRMMO「ミリオンバレッツ」が一世を風靡している世界。金銭と引き換えにチームに加わり、傭兵として生き抜く少女がいた。
舞台は日本・中国・豪州の思想や文化が混在する未来都市「埠頭」。
少女の名はsixenn。シェンは少しずつ世界を動かす潮流に身を投じていく。
今日は久々に埠頭の中心まで地下鉄に乗った。あまり中心部に行くことはないが、今回のクライアントは交通費を持つとのことだった。
普段どおりTwitterでやり取りしたが、英語圏出身のようだ。
Mikeとアカウントに書いてある。
駅前の高層ビル群を抜けてアミューズメントエリアへ。
待ち合わせ場所のモニター前に太った中年男性がニコニコして立っている。
白人系。白髪混じりの黒髪だ。
「Hi!お嬢さん。私がリーダーのマイクです。英語で大丈夫ですね?」
シェンは英語圏のハイスクールに入学できるほどの英語力がある。
「Hello. Mr.Mike. 英語でのやり取りは私にとって快適です。
条件はDMの通りでお願いします。」
「報酬の半分と交通費ですね!交通費は先に払いますよ。」
片道の約束だ。
「どうぞ、約束の10です!」
「謝謝。」
礼を言いながら、いい顧客だと思った。
交通費は払ってもらえないのが平常。片道でも貰えれば上出来だ。
「やぁ、マイク。その人が我々の勝利の女神かい?」
背が190をゆうに超える銀髪の男が現れた。マイクのチームメイトだろう。
「そうとも!彼女はもう3年間も世界ランキング一位なんだぞ!エド」
エドと呼ばれた男はピューッと口笛を吹いた。
最後の一人も遅れなく集まった。
黒髪の中年男性、エド程ではないが、背が高い。
顎ヒゲが黒々としている。アントと名乗った。
マイクが仕切る。
「5から8までの部屋を予約してます。レディファーストでどうぞ。」
8番の部屋に入って、髪を結う。
ヘルメットを被ると、マイクの声が聞こえてきた。
「皆さん、ヘルメットはちゃんと作動していますか?」
3人がそれぞれ応える。
「勝ちましょう!」
シェン達はミリオンバレッツの世界へ没入した。
4人がブリーフィング画面に移る。
ここで武器セレクトなどを行うが、通常は自分用の固定セットを組んでいる。
シェンもその例外ではない。
シェンはいくつかの武器が扱える為、ある程度地形やルール毎に使い分けできる。
だが雇い主がシェンに望むのは、いつもスナイパーライフルでの参加だった。
このゲームではスナイパーライフルが一番、扱う者の力量を反映する。
そして優秀なスナイパーは希少だった。
「おい!見てくれ!」
エドが声を上げる。
「相手に世界9位がいる!」
全員が相手プレイヤーの情報を見る。
参照できる情報は名前とidと世界ランクのみだ。
だが、このゲームで世界10位以内に入るには通常、
レートが3.0を上回っている。
(※3.0=自分が一度倒される迄に3名の敵兵を倒せる、ということ。)
そして、ミリオンバレッツで高いレートを維持しているのは多くの場合、
スナイパーである。
マイクが全体に尋ねる。
「このサリトというプレイヤーを知っている者はいるかい?」
誰も声を上げない。アントがシェンに訊く。
「シェンさん、この人と対戦経験はありませんか?」
「世界9位は以前戦ったことあるけど、この人のIDじゃない。
最近ランク入りしたんだと思う。」
アントは頷いている。
マイクが発言する。
「今日はフラッグ戦だ。リスポーン地点の旗さえ取られなければいい。」
続けて、
「つまり、シェンさんに旗の周辺を守備して貰えば、手堅く勝てるだろう。」
「ってことは旗を取りに突っ込むのが僕らだ。」
「そうだな。三方向から行こう。」
「オールアウトを防ぐために波状攻撃しよう。」とマイクがいった。
(※他に生存者がいない状態でキルを取られるとリスポーンが発生せず全滅、敗北する。
用語でオールアウトという。)
ブリーフィングが終わり、戦場に転送される。
戦場に転送される度にこの世界のどこかに「あの子」もいるのかという思いがふっと頭をよぎる。
転送が完了する。
廃墟のビルが連なる景色が目の前に現出する。
思考はすぐに、速やかに敵兵を排除することに向けられた。
つづく
副題: -One of Million Bullets-
読んで頂きありがとうございます。できれば評価お願い致します。




