⑯最後のピース(前編)
登場人物紹介/用語解説
・ミリオンバレッツ
仮想世界で銃撃戦する大人気のVRMMO。4対4形式。
・シェン(15)
キルレート世界一位のスナイパー。実名は伏せている。
日本と中国のハーフ。髪を青く染めた少女。
・大道寺姜子(?)
シェン達の選手事務所の所長。日本人。
黒髪を腰まで伸ばしている。キセルとチャイナドレスがトレードマーク。
・サティ(15)
ソロリーグで最強のスナイパー。シェンと引き分ける程の腕を持つ。
本名:杉浦美鈴。日本と中国のハーフ。体質で体全体の色素が薄い。
朝だ。日の光が窓から差し込んでいる。今日はフッと目覚めた。
はっとしてデバイスを見る。・・・連絡は入っていない。
着替えると事務室の机でカップ麺と乾パンを食べた。
姜子はなにやらPCでメールか何かしているようだった。
シェンが食べ終わると、姜子が話しかけてきた。
「シェン。スタメンの練習を始めたいと思っているのだけど、
サティちゃんは入ってくれそう?いつ入ってくれるかが分からないなら、
補欠のプレイヤーを四人目にして練習した方がいいと思うの。
サティちゃんが加入したら入れ替えたらいいわ。」
「そうですね・・・。」
サティについてはシェンに一任されている。それは有難かった。
サティをチームメンバーにするには時間がかかりそうだと思っている。
サティとシェンは少しづつ心を開いていっているからだ。
他人の干渉は受けたくない。
「今からサティちゃんに連絡してみます。」
と嘘をついた。サティがチームに入り辛い嘘の理由を考えるための時間稼ぎだ。
サティの体質に触れるわけにはいかない。
昨日は結局、世界戦の事は切り出せなかった。
だが、自分とサティの距離は確実に縮まっていると思う。
サティ抜きで練習をするのは気が引ける。
空になったカップ麺の容器をゴミ箱に捨てに行く。
スペースを取るゴミは物置の部屋の大きなゴミ箱に捨てる。
物置に入ると、事務所の扉のベルが鳴った。
姜子さんが「どちらさま?」と尋ねているのが聞こえる。
「あの、こちらにシェンちゃんが住んでると聞いて来たんですが・・・。」
この声!!サティちゃんだ!慌ててゴミを捨てて事務室に戻る。
「サティちゃん!」
「シェンちゃん!住んでるって本当だったんだ!」
「あ!この子がサティ!?」と姜子。
事務室のソファーに姜子、シェン、そしてサティが腰かけている。
サティはいつも通り灰色のフードを深く被っている。
サティが口を開く。
「大道寺姜子さんですよね。今日は急にすいません。
やっと勇気が出たので。」
「構わないわよ。勇気というのは?」
「チームには入りたいと思ってます。その前に姜子さんと直でお話ししてからだと思いました。」
シェンが席を外そうとすると、サティに手を掴まれた。
「シェンちゃんには居て欲しい・・・。」
シェンは無言で手を握り返した。
「姜子さん。私は特殊な体質なんです。私の顔を見てください。」
サティはフードを脱いだ。
色素の無い白い肌、紅い眼、プラチナブロンドの髪。
サティの手は震えている。シェンは両手でサティの手を握った。
姜子は無言で頷くと、
「よく分かったわ。サティちゃん、大変だったわね。」
と言った。サティはまたフードを被った。姜子は続けて、
「私は貴方を体質で差別をすることはないわ。それは信じて。」
と述べた。そして、
「サティちゃんが心配してるのは残りの二人のメンバーと、
メディア露出よね?」
「そうですね。世界戦ともなると。」
「メディア露出に関しては顔を出すことは無いから大丈夫。
今回の世界戦って、スポンサーが特殊だから。
むしろ選手の個人情報は秘匿する方針なの。
ミリオンバレッツのIDが唯一出ると思うわ。」
「なるほど・・・。」
姜子は事務所に入って貰えるなら詳しく話せる、と付け加えた。
「他の二人のメンバーだけど、体質については伝えるつもり?」
「そこは話し合おうと思ってたんですけど。
私は伝えずにどうにかならないかと思ってます。」
「大きな隠し事はチーム全体によくないし、隠し切れる事ではないから、
チームメンバーには知らせておくべきだと思うの。
ただ、顔を見せずフードをつけたままでいるのはありだと思うわ。
言うなれば折衷案ね。」
「なるほど・・・。そうですね。」
「実は今日、残り二人のメンバーが昼過ぎに来るのだけど、
二人に会ってからチームに入るかどうか決めて貰うのはどうかしら?」
「・・・!!」
シェンはずっとサティの手を握っている。サティが緊張しているのが分かった。
「シェンちゃんが・・・一緒に居てくれるなら・・・。」
「大丈夫。一緒にいるよ!それに、二人とも良い人だよ!」
姜子はキセルを吹かした。(電子タバコだが)
「二人は今日バラバラに来るから、一人ずつ挨拶すると思えば、
心が少し楽になるんじゃない?」
「それは、助かります。」
シェンは今頃になってサティが事務所にいる事実に興奮していた。
(サティちゃんがチームに入るかもしれない!サティちゃんが!)
シェンとサティは、固く手を取り合っていた。
つづく
副題: -One of Million Bullets-
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