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「しかし、我々もけっこう無謀なことをやってるね」
「と言いますと?」と言ってストローでチュ〜ってやるのがたまらなく好きな廻琉。
「だって野々さんの演奏も聴いてない。
こっちの演奏も聴いてない。
そんな状態で練習って無茶だよね」
「えっ、そんなもんじゃないの。
だってラーテルの時だってそうだったじゃない。
演奏なんか聴かずに即メンバーだったじゃない」
「あの時は時間もなかったし、楽器ができるって人もいなかったから、ちょっとでもできるって人がいたらメンバー決定状態。
あの時はあれがベストだった。
でも今回は違う」
「考えすぎだよ。
合わなかったら1回で終わりにすればよいのでござるよ。
気楽にやりましょ。
それにいろんな人と音出ししていくっていうのも面白いじゃない。
今しかできないんだから」
みょ〜なところで伶蕗の心配性が現れる。
普段はアバウトなんだけど急にポ〜ンって飛び出してくる。
これって女子特有のもんかね?
せっしゃもそういった面があるかね?
店を出ると目の前に信号がある。
その信号を渡ると高円寺駅がある。
北口の前にちょっとした広場がある。
その場所から音楽が流れている。
「この曲ってなんだっけ?」
廻琉は耳にしたことがあるんだが詳しいことは知らなかった。
伶蕗は知ってた。
アース、ウインド&ファイアーのセフテンバーという曲。
CMなんかでも流れてたりして耳にすることも多い古い曲。
その曲に合わせてノリノリで踊ってるおじちゃんがいる。
顔中ヒゲだらけで年齢不詳。
音は、おそらくラジカセで流してるみたい。
それほど大きな音じゃない。
駅の北口には交番があるがおまわりさんが特に注意するようなこともない。
たぶん常連のおじちゃんなんだろう。
廻琉たちは近づいていった。
踊っているのはおじちゃんが独り。
その周りには何人かのおじちゃんがいる。
みなが手にしているのはアルコール。
踊ってるおじちゃんも缶チュ〜ハイなどを飲んでいる。
「なんか自由だね」
伶蕗さんの感想です。
この広場で宴会状態なのは年齢がよくわからない男たちばかり。
時間は午後2時6分。
みんな働いてないのかな?
次の曲が始まった。
「この曲は?」
廻琉はダンスミュージックとかソウルとかには疎い。
曲は聴いたことがあるんだけど誰のなんていう曲とかまでは知らない。
「クール&ギャングのセレブレーション」
このことからもわかってしまう。
廻琉と伶蕗の音楽性の違い。
伶蕗のほうが音楽に対しての幅が広い。
今はこんな感じなんだけどこの先どうなるのやら?
「おじちゃん、すご···」
廻琉と伶蕗が呆れるくらいおじちゃんのダンシングはキレッキレ。
いったい何者?
素人じゃないねって素人の廻琉の目から見てもわかってしまう。
「高円寺ってこんな人がチラッといるんだよ。
それが面白いんだよ。
中央線の中でもちょっと特殊な街だよ」
それはなんとなくわかった。
だってカフェの名前だけでも変わりすぎている。
夜になるともっと奇想天外な人がいたりするらしい。
ふ〜ん、わりと近い場所なのにち〜とも知らんかった場所だよ。
帰りは三鷹駅まで一緒。
伶蕗はバスに乗って、廻琉は歩いて帰ることになる。




