1-2
いま廻琉たちは高円寺の南口にある商店街を歩いている。
廻琉には馴染みのない商店街。
中央線だと三鷹と吉祥寺は最低でも週に1回は利用している。
その隣の西荻窪、荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺は電車に乗っていても素通りだ。
だって用がないもの。
廻琉は小学校から大学まで通学は徒歩。
だから電車やバスに乗る機会が少ない。
行動範囲も思ったより狭かった。
「あの店からスタートね」
商店街の中にある古着屋さん。
伶蕗が高円寺に来た時に顔を出していく古着屋の順番があるらしい。
廻琉は、とりあえずは必要なものは揃えたので積極的になにか買おうとは思ってない。
もしものことがあるかもだから3万円は持ってきてる。
この店を皮切りに午前中は4店舗を回った。
伶蕗がハーフパンツとショートパンツを買いあさっている。
そういえば伶蕗はこの手のパンツが好きだ。
プライベートになるとスカートなどは着ない。
そこは廻琉も一緒だ。
「むっ、そろそろお昼にせんかね?
せっしゃ、ここらへんのことはよ〜わからん。
どこぞのお店がよかやろか?」
「あんた、だんだんしゃべり方がおかしくなってきてるね。
で、なにがいい?
和食、パスタ、中華といろいろあるけど···
あっ、今日は祭日になるのか。
だとするとランチメニューがないかも」
「がっつりいくかオシャレにいくかもあるでござる。
迷うところでござる」
「では、今日は和食ということで」
「なんでやねん?」
「おばんざい。
京都みたいな」
「えっ、高円寺にあるの?」
「ある。
駅のすぐ側に」
「では、そこで···」
「高円寺は古着だけの街ではない。
グルメの街でもある。
そして音楽の街でもある。
芸人の街でもあり、芸術の街でもある。
さらに文学の街でもある」
「おぉ、なんでもアリや。
あっ、それなら有名な人が住んでる?」
「あら、どうかしら?
住んでるかもしれないけど···」
知らないってことね。
お昼ごはんのために2人は駅まで戻っている。
伶蕗が案内してくれたのが北口にある食堂でべこ。
迷うことなくスタスタと連れていってくれるので「美味しかった?」と訊いてみると「うん、知らない」と返答があった。
ど〜ゆ〜ことかねと尋ねてみるとまだ入ったことがないんだと平然と言われた。
つまり入るのは今日が初めてってこと。
店の存在は知ってたみたい。
機会があれば一度入ってみたかった店なんだって。
なんかやけに自信満々でここだって言うからてっきり入ったことがある店だと思ってた。
もう、て〜って感じ。




