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「あたしは岡山田伶蕗。
法政大学の1年生。
あなたは?」
まぁ、そういうことになります。
自分だけ名乗らないなんてとちょっとだけイラッとする。
「ぼくはね···絶対に笑うなよ。
変なリアクションも絶対禁止だからな」
「えっ、なんで?」
「ぼくは東京農工大学農学部3年生。
ダイコンを作ってはポリポリ食べてる。
野々のののだ」
廻琉と伶蕗は固まった。
いくばくかの時が流れて廻琉はハッと我に返った。
まてまて、いまサラッと言ったよね。
サラッと。
情報量が多すぎないか。
子供みたいな顔だったんで高校生くらいだとばかり思ってた。
大学3年生ってことはせっしゃより年上じゃないかでござる。
農学部って、ダイコン作って食べてる?
それは良いと思う。
たくあんならせっしゃもよくポリポリやっておるぞ。
で、名前?
「あの〜お名前をもう一度···」
廻琉がビックリ顔になったまま恐る恐るといった感じで催促。
「野々のののだ」とちょっと怒ったようでもある言い方で返された。
伶蕗がフッと息を漏らした。
廻琉は目がパッチリで不思議な表情を作っている。
人によっては笑い顔ととられるかもしれない。
大神田百絵さんが困った顔をしている。
「ごらぁ、てめえらよぉ、笑ってるな?
笑うなっち言ったぜよな」
あまりにも豹変した野々のののさん。
その低い唸るような声で伶蕗さんと廻琉さんは飛び上がらんばかりにビックリしました。
「えっ、笑ってないですよ。
あの、名前を訊いただけなんですが···」
「その名前で笑わんかったか?
ボケがぁ」
「あの、たしか野々さんと···」
「おぅ、それから?」
「せっしゃの聞き間違いでなければ、たしか···の···の···のとか?」
「本名じゃ」
「えっ、本名···
全部『の』ですか?」
「それがどした?
土佐の荒波で揉まれたぼくは無敵だ。
無敵の『の』だ」
廻琉はこの時思った。
危ない人やった。
危ない人に声をかけてしまった。
「でも『の』っていっても『野良犬』とか『脳足りん』とかもあるけど」と余計なことをボソッと言ってしまう伶蕗。
それを聞き逃すはずもないのののさん。
「そこ、聞こえたよ。
罰として往復ビンタ10発や。
懲らしめちゃる」
「ちょ、待っておくんなせぇ。
この相棒も決して悪気があってのことじゃないんでごさる。
往復ビンタは止めて、せめて鼻ピンかカンチョウくらいで勘弁しておくんなせぇ」




