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「おっ、きたか。
ごはんだ、ごはんだよぉ」
廻琉がやってくることが合図で夕ごはんタイムになる。
声を上げるのが祖父の十条鉄間で74歳になる。
祖父と祖母は2人暮らし。
孫がやってきて母親の明日美も夕ごはんにやってくるのが常だ。
実の長男である文史は帰り道のどこかで適当に夕ごはんをすませている。
鉄間は元々は三鷹駅前で不動産の会社を経営していた。
従業員が4人の地域密着型の街の不動産屋さんだ。
その不動産屋も何年も前に廃業してしまっている。
廃業する前から個人としてテナントビルを所持していた。
それが今は3棟になっている。
家賃収入と厚生年金が生活費になっていてわりと裕福な暮らしができている。
「今日はなんでござる?」
廻琉はばあちゃんの手元をのぞき見る。
オムレツ、カリカリ豚のスプラウトのせサラダなんかが目に入った。
おしゃれ晩ごはんやね。
出来上がったものをどんどんテーブルに運んで夕食の時間。
老夫婦にとっては楽しい時間。
特に、口にこそ出さないがばあちゃんのほうがじいちゃんと2人きりの食事には、嫌気というと大袈裟だけどあまり好きではないようだ。
せっかく作った料理の感想もなにもないからだ。
その点、廻琉や明日美なんかはベタ褒めに言ってくれるわけだから作り甲斐があるってもんらしい。
食後はじいちゃんとテレビの前に移動。
その際には飲みものも忘れない。
じいちゃんはコーヒー、廻琉はコーヒーが苦手なのでアップルとかオレンジとかのジュースになる。
バラエティ番組を見てる時に明日美がやってきた。
ばあちゃんとしては実の息子よりも嫁の明日美のほうを気に入ってる様に見うけられる。
たしかに弟の碧色と比べると面白味に欠ける。
明日美もどちらかといえば思いつきで行動することもあったりするので夫婦としてはバランスがとれてるのかもしれない。
明日美のちょっとした暴走を止める係としては適任者だ。
そんな文史は、こんな日だからこそ自由な夕食を楽しむことにしている。
それは大好きなラーメンを食すること。
お金はかかるが仕方ない。
帰り際に三鷹駅の周囲にある行きつけのラーメン屋たちのどこかに入ることになる。
だから自分の親の家で食事なんてことは絶対にしない。
ラーメン最優先だ。
食後はコーヒーなどを頂いて少しのんびりしてから親子で帰宅。
廻琉は入浴後に受験勉強。
2時間は確保できる。
12時前には就寝。
これが今の廻琉の平日の生活。
忙しいちゃ忙しい。




