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おぉ、ちょうどいいアルバイト。
そういうことならと廻琉も参加希望だと伝える。
「で、どこでなにをやるでござるか?」
「それはな···」
「うん、それは?」
「実はな···」
「だからなに?
もったいぶらずに早く言っておくれ」
「場所は高円寺。
そこに美術大学がある。
そこでの仕事」
「美術大学···
美術ってあんた、まさか?」
「まさかとは?」
「モデルかね?」
「そうだとすると?」
「ヌードモデルかね?
キャア〜本当に?
やるの?」
伶蕗は身長が170センチ。
スラッとしたスリム体型。
モデルとしても充分に通用するだろう。
「あんたもね」
伶蕗は面白がっている。
廻琉は自分より少し身長が低いくらい。
166センチくらいか?
モデルとしていけるかもねと笑っている。
その廻琉はギャアギャア言ってうるさい。
「違うよ。
モデルじゃないよ。
ヘルプデスクの仕事や」
そういうことになった。
3月末までの派遣の仕事になる。
伶蕗と一緒に、翌日には吉祥寺にある派遣会社へ行くことになった。
電話してみると午後1時で来てもらいたいと言われた。
急募だったらしくて登録をすませてトントン拍子に話が進んだ。
時間は午前9時から17時半までの7時間半の勤務。
月曜から金曜まで。
卒業式の日だけは休ませてもらって勤務日数は19日になる予定。
時給が1,650円。
それで計算すると235,125円もの大金になる。
数字を見たら俄然ヤル気が出てきた。
せっしゃも新しい楽器が買えるね。
ただ交通費が出ないというのはイタい。
時給の中に含まれてるということになる。
初日は派遣会社の担当の人も一緒だった。
簡単な挨拶を終えてさっそく仕事だ。
大学事務の吉沢さんという女の人から大まかな仕事の流れを教えてもらうことから始まった。
仕事は新入生に対する準備がメインになる。
3月は年度末と新年度の準備が重なってしまうのでとにかく多忙な時期。
廻琉たちは入学手続きなんかの書類対応やら郵便物の対応などを任せられることになる。
大変な仕事だ。
廻琉にとっては大変なことがもうひとつあった。
それが朝の通勤ラッシュ。
今は春休み期間なので学生は減ってるとは思うがこれまでに経験したことがない朝の電車。
三鷹駅から荻窪駅までは総武線や東西線を利用した。
中央線はあまりの人の多さで乗るのが怖かった。
荻窪駅で地下鉄丸ノ内線に乗り換えるんだけど、これも人がとにかく多い。
東高円寺駅で降りなきゃだったのに降りられずに次の新中野駅まで行ってしまった。
小学生から高校までは徒歩だったんで朝の電車がこんな怖ろしいことになってるとは知らなかった。
東京で生まれ育ったのにこんな日常があったとは。
噂には聞いてたが驚いたでござる。
バイト仲間は他に2人で計4名での仕事になる。
全員が女子学生。
適度に忙しい。
最年長の人から、一定のペースで途切れることなくやることがあるのでそのペースに乗ってしまえば思ったより楽だと教えてくれた。
とは言われてもこんな形で働くのは初めて。
かなりギクシャクしながらの労働になっている。




