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 ランドルフもクリフォードも各家の馬車にてダンフォード侯爵家に訪れたのだが、それぞれの馬車にて令嬢たちを伴うとなると誤解を生むかもしれないと言うことで、四人は侯爵の言葉通り侯爵家の馬車で王宮へ向かうことにした。

 各公爵家の馬車は侯爵家に留め置いている。


 四人が馬車に乗り込むと、恭しく扉が閉められる。

 馬車はゆっくりと王宮へと向かい始めた。



 動き始めて暫くすると、エメラインが「先日は誠に申し訳ありませんでした」とランドルフとクリフォードに軽く頭を下げる。

 深く下げようと試みたようだが、馬車の揺れに贖えなかったようだ。


「いや、こちらこそ突然の訪問ですまなかった」

「いきなり行った方が会えそうだと思ったんだよね」

「もう、お二人とも無謀ですわ」

「いいえ、でも、仰る通り先触れなど頂いてもお会いできたかどうかは難しいところですわ」


 エメラインは消沈したように膝へ視線を落とす。


「幼い頃から、人との交流を極力避けられているのです。小さい頃は敢えてそうされているとは気づいていなかったのですが」

「確かに、年齢が近いのにお見かけするようになったのは妹君が社交の場に出てくるようになってからのようですわね」

「ええ、妹――キャスリンの付き添いという形でしたら許されるのです。後は、父の仕事関連でしょうか」

「母君はどうしているのか」

「母は、夜会の出席を厭うことが多くて」

「先日見かけた時は、夜会を好みそうな女性だと感じたのだがな」


 ランドルフとクリフォードは、先日のスタンスフィールド家への訪問時の夫人の様子を思い出す。

 あまり上品とは言えない胸元が開きすぎたドレスと媚びた瞳は、夜会にて若すぎる自分達にさえ秋波を送る婦人を思い起こさせた。いるのだ。若い男を好む年嵩の女性が。


 その時、レベッカがふと口を開きかけ、結局言葉を発せずに終わったのだが、それに気付いた者はいなかった。



「子爵も同行されないのか?」

「ええ、周囲と会話が合わないなどとよく話しておりましたわ。わたくしにも、社交の必要はなく妹の付き添いの役割のみで良いと――わたくしは、できる事なら友人が出来たら嬉しいと思っていたのですが、場違いなわたくしと懇意にしてくださる方がいる訳もなく」


 確かに着飾った令嬢達からしたら、前日の夜会のような装いのエメラインでは近寄りがたいと思われるだろう。或いは非常識だと敬遠されてしまうのは想像に難くない。

 あのような状態で華やかな夜会へ放り込むなど、スタンスフィールド家はやはりどこか歪んだ印象を受ける。


 「それに」とエメラインは付け加える。


「わたくしが妹に辛くあたっているなどと言う噂があるようなのです。直接問いただされる事がありまして。それを聞いた時は流石に、悲しかったですわ……」


 思い出すことでもあったのか、エメラインは悲しげに視線を落とす。

 だがすぐに、自らの話題で空気が沈んだのを気にしたのか、エメラインは明るい声で話題を変えた。


「ところで、今日成人におなりになる王太子殿下はどんな方なのですか? わたくし、お見かけしたことがないのです」

「あー」

「まあ、彼もあまり人前に出ないというか、夜会みたいな社交の場を好まないんだよね」

「そうだ。だから、エメライン嬢が存じ上げなくてもそれ程気にしなくても大丈夫だ」

「そうなのですね……緊張しますわ。無作法がないと良いのですが」


 エメラインが不安げな様子を見せると、レベッカが話しかける。


「ご安心なさって。殿下はお優しい方ですもの。多少のことなら目を瞑ってくださいますわ」

「俺たちには厳し目だがな……」

「それは、それこそお二人が殿下に無作法なことをされるからですわ」

「いや、一応女性には優しいんじゃないかなぁ。見た目強面だけど」


 クリフォードがニヤリとしながら言うと、レベッカは少々憤った様子を見せる。


「情に厚い方だと思いますわ。いつも気にかけてくださいますし……それに以前陛下が、殿下の婚約者がなかなか決まらないことに業を煮やして『レベッカ嬢でも良いではないか』とうっかり仰った事がありますの。殿下はそれを耳にして大変お怒りになりましたのよ」

「え、陛下に?」

「ええ」

「まさか正座させ」

「流石にそれはありませんわ」

「だよねー」

「ですが、陛下がしょんぼりされる程度には」

「強いな」

「ええ、『レベッカ嬢()()とはどう言う意味なのか』と大変な怒りようでしたわ」


 「ああ、それは言いそうだ」とランドルフとクリフォードは天を仰いだ。


「一度信頼して頂ければ守ってくださる方ですわ。恐ろしい方ではないので、案ずるには及びませんわ」

「とりあえず皆で挨拶はしに行くけど、それさえ終わればスイーツも食べ放題だからさ」

「まあ。目的はスイーツですの?」

「え、エメライン嬢はそうだよな?」


 エメラインは恥ずかしそうに笑っているが、“スイーツ”と言う言葉に目の輝きが増したことで、ランドルフの言葉が正しいことの証明となった。




 たわいない話をしているうちに、馬車は王宮が小さく眺められる位置にまで辿り着く。


 既に普段の夜会よりも長く入宮待ちの馬車の列が続いており、到着まではあと少し時間を要するようだった。


お陰様で風邪からは回復しています。

更新時間はどうしようかなと思いましたが、もう揃って無いから時間は固定せず1日1話を死守できるようにがんばります!

いつも見に来てくれてありがとうございます。

特にいつもいいねをくださる方、本当にありがとう(感涙)。かなり、励みになっております!


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