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器の変格

付き人さんからのメッセージを読み終えた私は、早速付き人さんの言う通りにしてみた。


地面にこの家においてあったマットを敷き、いわゆる坐禅のポーズを取り息を整えた。


周りからの森の木々の音や、鳥のさえずりなどが聞こえていたが、集中するに連れ自分の呼吸音、心音さえも聞こえなくなってきた。


かれこれ十分が立った頃だろうか。体に流れる血液の感覚がようやくわかってきた。心臓から送り出された血液が、頭の先から爪先まで全身を巡りまた心臓へと戻っていく。


何度も何度もその感覚を体に刻んでいくに連れ、少しずつ体の違和感が明確になっていく。


妙に体が暑いのだ。周囲の気温が上昇しているのではない。この世界での今の気候は春。冬は過ぎたとはいえこの夏中盤のような暑さになるのはおかしい。これは、


「私の体が発熱しているのか?」


そう思い体を確認すると、全身から”湯気”が出ているのだ。おかしい。最初に思ったのはそうだ。


この家にはもともと女性が暮らしていたのだろう。


掃除をしている最中、寝室と思われる場所に体がすっぽりと収まってしまいそうなほど大きな全身鏡がおいてあった。


そうして寝室へとたどり着き、鏡を見るとそこには自分とは思えない人物が写っていた。


黒かったはずの目はいつの間にか青く染まり、髪色も茶髪から黒髪へと変化していた。そうして、体から湯気が止んでもなお、体の変化は戻らなかった。


自分でも誰か見間違うほどの変化に私は驚愕と畏怖を覚えた。そうして体の奥底から沸々と何かが湧き上がってくるのがわかる。


”魔力”なのだろう。私はこの世界の人間ではない。そのため、体が魔力に足りうる器へと変化した結果このような見た目へと成ったのだろう。付き人さんの言う通り見た目は変化したが命には別状がないようだ。


魔力という新たな概念を手に入れたことにより、自分の生物としての格が一段階上がったような気がする。





魔力の操作に凱人の体が慣れ始めた頃、渚沙は翠たちとともに冒険者学校へと繰り出していた。

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