常識を変える家との出会い。
魔の森を進みながら、渚沙くんとの会話を思い出していた。
「先輩。これからどうするんですか?私は翠ちゃんたちの通ってる冒険者学校に一緒にいかせてもらおうと思ってるんですけど。」
「その冒険者学校?と言うやつは私達でも通えるのかい?」
「はい!戦う意欲がある人はだれでも大歓迎らしいです。」
渚沙くんはすでにこの世界でやることを決めているみたいだ。私もこの世界でやりたいことは決まっている。前の世界から思っていたことを実行するにはいい機会だと思った。
「そうか。渚沙くん頑張っておいで。私は雷華くんたちに教えてもらった、魔の森?という場所にある一軒家に向かうことにしたよ。ゆっくりとスローライフをする。前の世界からの夢だったからね。
連絡があったらメッセージアプリで伝えてくれ。もしなにか危険な状況になったら電話をしてね。助けに行くから。」
渚沙くんは前の世界から私のことを慕ってくれていたユ唯一の後輩で、亡くなった私の子供にも似ているから悲しい顔をしてほしくないんだ。
「わかりました。先輩!先輩もがんばってください。」
そうして、渚沙くんとの会話を思い出していると少し先に角が二本生えた兎が草を食べていた。
あれは、ホーンラビットだっただろうか。ランクFの魔獣らしい。街から離れる前に雷華くんたちが教えてくれた情報に酷似している。
一見癒やしのような存在みたいだが侮ってはいけないらしい。よく、離れた村から人が来ることがあるらしいが、ホーンラビットは近くに気配がするとどんな敵だろうと猪突猛進で向かってくるため、街に入る前に慣れていない村人や子どもたちだと怪我を負ってしまうらしい。
ホーンラビットを観察しながら雷華くんとの会話を思い出していた。
「ホーンラビットに出会ったら、極力離れた場所を歩くか、今さっき買ったそのカバンに入っている刺激粉を投げれば、簡単に逃げれると思うぜ。」
私はこの街を出る前に、雷華くんと水樹くんとともに街でいくつか買い物をしていた。刺激粉やコンパス、食料に薬草など魔の森を歩くうえで必要なものを買い揃えてくれた。彼らには感謝しなければ。
そう感謝の言葉を思いながらホーンラビットに刺激粉を投げ、離れた場所を走ることにした。
◇
そうして、ホーンラビットから逃れたあとコンパスを見て方角を確認しながら二時間ほど森を歩き続けた。
もう足が棒になりそうだと思い、休もうとしたとき遠くに灰色の煙突が見えた。
あれが雷華くんの言っていた一軒家だろうか。そう思いながら更に三十分歩くと、イタリアなどの外国でよく見る西洋風の一軒家と草木に囲まれる幻想的な池が私を出迎えてくれた。
「これは…。どうして、この家に住む人はいないんだろうか。では、お邪魔します。」
ドアを開け、家に入ると大量のホコリとクモの巣が二度目の出迎えをしてくれた。
「これは、家の大掃除からかなぁ。」
街から持ってきた箒と雑巾を担ぎ、まだ見ぬ家へと足を踏み出していった。




